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63話「勇者と言われた存在」

「こ……こんな……」

 今まさに二人に振り降ろされようとしているストーンゴーレムの拳を、ミーナは睨みつけた。


「こんなところで……こんなところで、このミーナちゃんが……」

 ストーンゴーレムの拳が振り降ろされる。今からでは詠唱も間に合いそうにない。ミーナは今度こそ、覚悟を決めた。しかし、アークスだけは守りたい。ミーナは目を閉じ、体は自然とアークスに覆い被さっていた。


 ――ドゥォォォォン……。


 鈍い爆発音が、辺りに響き渡る。

「な、なんだぴょん……?」

 ストーンゴーレムの手前で起きた爆発に、ミーナは呆気に取られた。別世界のようなものなのだから、何が起こるかも分からない所だが、目の前でいきなり起きた爆発には、咄嗟に対応できないでいる。


「フルキャストのダークボルトで怯むだけ!?」

 後ろで誰かの声がする。

「ひ……人かぴょん……?」

 この近くに人が居る。そのことにミーナは一瞬安堵したが……前には手負いとはいえ三体のストーンゴーレムが控えている。別世界の事も何も分からない。声の内容から察するに魔法使いのようだが、ストーンゴーレムを三体も相手に出来るとは思えない。状況は未だ、予断を許さない状態にあるだろう。


「重いから、一気に強力なのをぶつけないとだよ……天から降るは純麗(じゅんれい)なる|碧_あお_|_き刃……ブリザードストーム!」

 別の人の声が聞こえる。どうやら水属性の魔法、ブリザードストームをフルキャスト詠唱しているようだ。

「二人……両方とも魔法使い……でも……」

 魔法使いが二人居たところで、相手はリーゼでも手こずるストーンゴーレムだ。並の魔法使いでは返り討ちにされてしまうか、危険を感じて逃げてしまうかするだろう。


「ブリザード……ストーム……」

 ミーナの前に、無数の青い筋が舞い降りる。ミーナはその魔法を知っている。青い筋の一つ一つは、細く鋭利な氷の刃だ。そして、それは上空からストーンゴーレムに向かって落ちている。


 ストーンゴーレムに当たったブリザードストームは、あるものは弾かれてストーンゴーレムの表面に傷を作り、あるものはそのままストーンゴーレムを突き抜けてゆく。

「綺麗だぴょんね……でも、これなら……」

 ストーンゴーレムは、容赦なく降り注ぐブリザードストームによって全身を急速に削られていく。ストーンゴーレムは、ダークボルトの衝撃から立ち直り、ブリザードストームの範囲から抜け出そうと踵を返したが、その行動は遅きに失した。体のあらゆる所から魔力を放出しているストーンゴーレムは、ブリザードストームの範囲から逃れることなく倒れ、ただの石と化した。


「やった……?」

 魔法使いは中々の手練れのようだ。これならアークスは助かるかもしれない。ミーナの心の内には、僅かだが希望が見えてきている。


 ミーナがストーンゴーレムに唖然として、ブリザードストームに見とれ、そして、僅かに芽生えた希望に安堵していたうちに、目の前でストーンゴーレムが倒れた。それは僅か数秒の間の出来事であった。


 リーゼでも手間取るストーンゴーレムを、ほんの数秒で倒す魔法使い。ミーナはふと、マッドサモナーのことを思い浮かべた。しかし、このストーンゴーレムも、マッドサモナーが召喚したかもしれないものだ。勿論、それも定かではないのだが、少なくとも敵ではないと思いたいが、それを判断するには、ミーナはあまりにも、相手の情報を知らな過ぎる。二人の魔法使いの姿を見ても居ないのだ。


「あ……」

 ミーナは、はっとして、周りを見たが、誰も居ない。……いや、さっき魔法を撃ったと思しき二人の声、そして音が、徐々に近付いてきた。


 ――カンカン。

 リーゼの表面を叩く音がする。


「なんだろこれ、凄いね、巨大ロボットみたい」

「ロボット?」

「ああ、いや……説明すると長くなるから。でも、こいつは襲ってこなそうだよね」

「うん。一応気を付けながら、前のもう一体を!」


 ――タタタタタ……。

 どうやら、このリーゼについて一通り会話した後で、標的を前のストーンゴーレムに定めて走りだしたらしい。

 会話の声、そして、その後の走る音は、後ろから段々と前にずれているようだ。距離的にもミーナに近付いている。


「エミナさん、あれ!」

 走る音が前方に来た辺りで、二人のうちの一人が叫んだ。

「ん……」

 ミーナは、アークスの体がずり落ちないように注意しながら、リーゼの上から身を乗り出して下を見てみた。

 下には二人の人が居た。二人共煌びやかな、ダンサーのような恰好をしている。ミーナはそれを、バトルドレスだと推察した。

 そのうちの一人、薄いピンク色の髪の人物が、リーゼの側面を走りながら、ミーナの方を指さしている。


「危なかったわ、やっぱり人が居たのね」

 栗色で髪の長い少女が言った。


「どういうことなのエミナさん、こんなに大きなモンスター、この辺りには居ないはず……」

 少女二人は走るのをやめ、ストーンゴーレムと対峙する。

「あれはストーンゴーレムじゃないかしら。恐らく、誰かの手で召喚されたものだと思う。でも、今は考えてる暇は無いわ。倒そう、ミズキちゃん!」

「うん! ……母なる光の力よ、我が前に集い敵を燃やし尽くせ……ホーリーフレア!」

 一人の少女の手から、眩く光る白い炎が発射される。少女の薄ピンクの長い髪が、その影響でたなびく。

 ホーリーフレアは、リーゼに迫っていた片腕の無いストーンゴーレムに向かっていく。命中したホーリーフレアは爆発を発生させ、ストーンゴーレムをバラバラに砕いた。

一作目「内気な僕は異世界でチートな存在になれるか?」を見た方は分かるかもしれませんが、過去キャラです。なので、ちょっと説明を省く場所もありますが、そのまま読んでも支障をきたさない程度の説明はしますので、そのまま読み続けても問題ありません。もっと知りたくなった方は、「内気な僕は異世界でチートな存在になれるか?」をどうぞ。

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