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60話「アークス機VSストーンゴーレム」

 ストーンゴーレムと一対一になるようにリーゼを大きく回り込ませたアークスは、そのままの速度で方向転換し、一番近くに居るストーンゴーレムへとリーゼを移動させる。

「うおお……!」

 ストーンゴーレムとの距離が、剣のレンジ内に入るやいなや、アークスのリーゼは剣でストーンゴーレムの肩を斬りつけた。

「……」

 見事に肩から腕を切り落とされたストーンゴーレムは、当然のごとく無言だ。それは決して効果が薄いという事実ではない。魔法生物としてのゴーレムの特徴だからだ。

 ゴーレムに感情があるかは、未だにはっきりとは分かっていない。しかし、ゴーレムは狼狽えた様子でたじろぎ、動きも鈍っている。


「これなら胴体が狙える……!」

 ストーンゴーレムが、切り離されていない、もう一方の手で殴ってきたところで、動きの鈍ったストーンゴーレムの攻撃ならば容易にかわせる。

 もっとストーンゴーレムの間近に迫って、胴体を切り離すことが、今なら出来る。そう思ったアークスは、リーゼのブースター出力を最大にして、一気にストーンゴーレムとの間合いを詰めた。


「はぁっ!」

 アークスのリーゼが剣を振るう。

 ストーンゴーレムの胴体を、リーゼの横一閃が捕らえた。アークスはそう思ったのだが、リーゼのコックピットの中に伝わった衝撃は、違う性質のものだった。


「っ!?」

 リーゼの一撃は、手負いのストーンゴーレムとは別のストーンゴーレムの強靭な胴体に弾かれていた。

 手負いのストーンゴーレムの背後には、既に別のストーンゴーレムが近付いていたのだ。後ろのストーンゴーレムは、手負いのストーンゴーレムの後ろに、丁度、隠れるようにしながら突進して、手負いのストーンゴーレムを横へと弾いた。そして、その勢いのまま、アークスのリーゼに突進をした。


「うわぁぁぁ!」

 ストーンゴーレムの突進が、完全にアークスのリーゼを捉える。


 突進をまともに受けてしまったアークスのリーゼは大きく弾き飛ばされた。その衝撃は凄まじく、コックピットのアークスも、縦に激しく揺さぶられた。


「あぁぁぁぁっ!」

 アークスの視界が激しく揺れる。体のあちこちはコックピットの壁に当たり、アークスの生身の体をも傷付けていく。


「う……うぐっ……!」

 機体が急速に動いた衝撃により吐き気と頭痛が襲い、壁に打ち付けられた体のあちこちには、浅からぬ打ち傷が出来た。どこで切ってしまったのかは分からないが、額からは血が滴っている。


「そ、そんな……ストーンゴーレムが……」

 アークスは咄嗟に機体を後ろに跳躍させ、ストーンゴーレムとの距離を取る。


「く……はぁ……はぁ……」

 アークスの視界は、まだぼやけている。体全体の痛みによる眩暈によるものだろう。


「こんな……」

 もしかすると、他のストーンゴーレムに追いつかれる。それはアークスの想定するところだった。しかし、アークスにとって意外だったのは、思わぬストーンゴーレムの連携だった。先ほどのストーンゴーレムの攻撃は偶然かもしれないが、結果的には後ろのストーンゴーレムが前のストーンゴーレムを庇い、更にアークスのリーゼに多大なダメージを与えることとなった。

 これによって、アークスの消耗は加速度的に進み、リーゼの装甲も打撃によって歪んだ。それだけで、アークスは不利になってしまったが、アークスはそれ以外の可能性を考えずにはいられなかった。


「もしかして……偶然じゃないのか……」

 そこそこはっきりしたが、まだ意識が混濁している頭で、アークスは必死に考える。マッドサモナーの力がどれほどのものかは分からない。が、仮にストーンゴーレム三体を召還してもなお余力を残しているなら、それを使って、より詳細な命令をストーンゴーレムに送る事も可能だ。

 そうなれば非常にまずいことになる。ただでさえさっきの攻撃で消耗して、リーゼもアークス自身も動きが鈍っているのだから、、三対一では殆ど勝ち目が無くなってしまう。


「ミーナ……!」

 ミーナはちゃんと逃げただろうか。少なくとも、ミーナが逃げ通すための時間だけは稼ぎたい。


「く……まだ……やられるわけには……っ!」

 アークスがリーゼの剣を構え直し、まず、既に片腕を失い、魔力の漏洩が始まっている、手負いのストーンゴーレムを見る。手負いのストーンゴーレムは、攻撃手段を制限されて、動きも鈍くなっている。殆ど取るに足らない存在だろう。勿論、さっきの例もあるので油断はできないが、放っておいても魔力は放出され続けるので、出来る限り相手にしない方がいいだろう。


「二体なら、接近はされない……」

 意識が朦朧とすることと、痛みと嗚咽からくる猛烈な不快感をこらえて、アークスがストーンゴーレムを見据える。


「これなら、これを……」

 アークスのリーゼは、一旦剣を鞘に納めた。そして、背中に背負ったランスを手に持って、構えた。

 ランスは純白で、細長い三角錐のような形をしている。先はとても鋭く、ストーンゴーレムを一突きすれば、ストーンゴーレムの強靭な胴体でさえ貫けるだろう。

 ストーンゴーレムの体に風穴を開けさえすれば、ストーンゴーレムの魔力を漏洩させることができる。関節などの、細い部分、または脆い部分に命中させれば、体を切断することも可能だ。

 ランスで体を貫いたところで、魔法生物のストーンゴーレムには致命傷は与えられないが、多かれ少なかれ、少しでも魔力を外に逃がすのには、ランスは有効だ。


「不用意に接近しないようにだけ注意して……!」

 アークスは、リーゼをじりじりとストーンゴーレムに近寄らせる。


「……今! はぁっ!」

 リーゼがランスを突き出す。ランスはストーンゴーレムの胸の部分に命中する。勿論、ストーンゴーレムに心臓があるわけもないので致命傷にはならないが、風穴を開けることは出来た。僅かだが、これで魔力の放出が始まったのだ。


「はぁ……はぁ……」

 アークスは、リーゼを後ろに跳躍させ、再び間合いを大きく開ける。

 リーゼの動きは、思ったよりも鈍っていない。しかし、少し機動力は下がっているように感じる。今、ストーンゴーレムに接近を許したら、勝ち目は薄そうだ。

 アークスは、それがリーゼではなく、自分による影響が大きいことを分かっている。どうやら、さっきの一撃でのダメージは、自分の体の方が上らしい。


「く……でも……!」

 ナイトウォーカーよりも接近戦が得意とはいえ、ナイトストライカーは、武装の手厚さと機動力を得る代わりに頑丈さを犠牲にしている機体だ。ストーンゴーレムからの攻撃は、もう一撃も受けたくない。


「燃料はたっぷりあるんだから、欲張らなければ……」

 ヒットアンドウェイ。ぎりぎりまで近付いては槍で突き、後ろに跳躍して距離を取り、またじりじりと近付いて槍を突く。致命傷ではないにしても、ストーンゴーレムに出来る限り大きな傷を与えて、魔力の流出を促す。この場合、一番有効な手段だ。アークスは地道に、ヒットアンドウェイを繰り返していく。

思わぬ激戦が始まってしまいました。

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