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竜殺し ④

無残に焼けた別荘地。

そのほぼ中心で俺達はワイズランド騎士団を名乗る一団と対峙している。

生存者の捜索もせずに俺達に微笑みかけてくるそいつらからは、嫌な気配を感じる。

迂闊だった。

てっきりワイズランド騎士団が救助に来たと思ったが、おそらく騎士団では無いな。

よく見れば持っている武器もバラバラで統制も取れていない。

寄せ集め感が漂っている。

すると、不穏な空気を感じ取ったアーデが、下手な芝居を打つ。


「えっと、そ、そうだ。メイアスさ、隊長補佐の言う通り、生存者がいるかも知れない。」


そう言いながらアーデは泳ぐ目で俺を見詰める。

そして、肩を掴む男の手を取り、そっと外そうと試みる。


「俺達も、救出作業、手伝い―。」

「だから、必要ないんだよ!」


言いかけたアーデの手を男は逆に掴み背中に捻り上げた。


「痛ッ!」


アーデが声を上げる。


「アーデ!」


咄嗟に飛び出そうとするリテルをシユウ♀が押さえる。

俺は二人を隠すように一歩前へ出た。


「お前ら何者だ?ワイズランドの騎士じゃないな?」


俺の問い掛けに男達はニヤニヤした顔で返してくる。

リーダー格の男は、掴んでいた手を離すとアーデの背中を蹴り、跪かせた。


「このっ!」


俺が動くより先にリーダー格の男は剣を抜き、アーデの首筋に剣先を触れさせる。

アーデは恐怖で固まり、瞬きもせずに俺達を見詰める。


「我々が何者か?貴様らが知る必要なんてない。まったく・・・ガキ共のせいでいい迷惑なんだよ。」


どういう意味だ。


「目的はなんだ?」


俺はさらに尋ねる。

答えは期待していない。


「何度も言わせるな。貴様らに知る必要はない!」


男が声を荒げると剣先が震え、アーデの首筋に血が滲む。

ちっ・・・これ以上は無理だな。


「だったら・・・。」


俺は、一歩前に出ると顎を少し上げ、そいつらを見下すように言い放つ。


「もう答えなくて良い。」


突然強気の俺に一瞬男が怯む。

俺達がその瞬間を逃すはずも無い。


「マリウス。」


言うと同時に突風がニセ騎士団を吹っ飛ばした。

ニセ騎士団は声を上げながら数メートル程飛ばされ、その半数以上が焼けた建物や木々にぶつかり気絶。

残りは飛ばされながらも態勢を整え無傷で立ち上がった。

どうやら、一筋縄ではいかない様だ。


「おいマリウス。なんで手加減すんだよ。」

「人殺しは良くないでしょ?」


マリウスは肩をすくめて見せる。

この食わせ者め。


「アーデ。立てるか?」


俺が声を掛けるとアーデは無言で頷く。

なんとか立ち上がろうとするがまたすぐに膝をつく。

恐怖で足腰がいう事を利かない様だ。

堪え切れなくなったリテルがシユウ♀を振り切りアーデに駆け寄る。


「アーデ!」

「・・・ごめん。ありがと。」


アーデはリテルの肩を借りなんとか立ち上がった。

だが、二人が戻ろうとこちらへ振り返ったその時。

ニセ騎士団の一人が腕を大きく振ると、二人に向かって土の塊が飛び出した。

土の精霊術か!

俺は咄嗟に二人に手を伸ばし引き寄せると覆いかぶさる。

衝撃に耐える為に全身に力を入れた。


パァン


ぶつかる音は聞こえたが衝撃も痛みも無い。


「気を付けて、精霊術師がいる。」


顔を上げると、マリウスが横を通り過ぎる。

攻撃を防いでくれた様だ。

マリウスは、横目で俺をちらりと見て小さく頷く。

それから、先頭に立ち、腰に付けたランタンを手に取ると高くかざした。


「さて、面白いものを見せてあげよう。」


そう言うとランタンをゆっくり振る。

何故か日中でもハッキリ見えるランタンの炎が尾を引きながら揺らめく。


「そう・・・わかったよ。君の心、僕が伝えよう。」


目を瞑りマリウスはそう呟く。

すると突然、ランタンの小窓が開き、灯っていた火が飛び出した。


「さぁおいで。」


マリウスは飛び出した火へ向け、息を吹きかける。

火は風を受け、激しく揺らめきながら大きな炎へ変わっていく。

そして、炎はさらに変化し、地面を四本の脚で踏み締め、鋭い爪を突き立てる。

凶悪な牙を剥いた顔をゆっくりともたげると、その牙の間から炎が漏れ出した。


「ま、魔物だ!」


ニセ騎士団の誰かが叫ぶ。

叫ぶ気持ちも良く解る。

マリウスのランタンから飛び出した火は、炎を纏う大きな狼へと変わったのだ。

見たことのない魔物を呼び出したマリウスの顔を、炎狼の光が下から照らす。


「遊んでおいで。」


マリウスが囁く様に言う。

炎狼は答える様に吼え、一瞬で空中に飛び上がる。

土煙と炎だけをその場に残し、一番遠くにいたニセ騎士団の一人に襲いかかった。


「ギャぁぁぁぁ!」


突然目の前に飛んで来た炎狼に頭からかぶりつかれた男が叫ぶ。

そして、そのまま放り投げられ小川へ落ちた。

プカリと浮かぶその男には、外傷は無い。

だが、白目を剥き完全に気絶している。


「なんだあれ!マリウス、あれは一体なんだ!?」


俺は、アーデとリテルを抱き締めたままマリウスに訊く。

マリウスは振り向かずに答えた。


「詳しくは後で。あの子は遊びたい盛りなんだ。」


そう言うマリウスが微笑んでいるのは後ろ姿からでも解る。


「それよりメイ。ボーッとしてると、出遅れるよ。」


マリウスが頭を傾け指し示す。

向くとそこには爆走するシユウ♂の後ろ姿。

土煙とあげ、あっと言う間に端にいたニセ騎士に後ろ飛び回し蹴りを食らわす。

早っ!

しかも、その蹴りの一撃は鎧が陥没する程の威力。

シユウ♂は蹴りを入れた奴を踏み台にして、空中で回転。

隣りにいた別の敵の頭部に回し蹴りを食らわした。

出遅れた!


「アーデ!リテルを守れ、リテル!えっと・・・そのドラゴン娘を頼む!」


そう言って駆け出そうとして一歩戻る。


「それから、マリウスから離れるなよ!いいな!」


俺はアーデの鼻先に人差し指を近づけ念を押した。

そして、改めて駆け出す。

俺だってスピードには自信があるんだ。

真っ直ぐにニセ騎士団のリーダー格へ向かって走る。

そこへ土の塊が飛んできた。


「邪魔だぁぁ!んなもん効かねぇんだっよ!」


俺は真正面から飛んでくる土の塊を、思い切り踏み込むと拳で殴り返した。

土の塊がはじけ飛ぶ。

土の精霊術は最近散々見たから飽きたわ!

飛び散る土の中、俺は不敵な笑みでニセ騎士団を見返す。

明らかに動揺するニセ騎士団。

だが、実は正直、すげぇ痛い。

拳・・・砕けてないよな。


「お前らが何者か知らんが、俺達が勇者一行と解ってのこの狼藉。その無知と無謀・・・身を持って味わえ!」


ジンジンと熱を持つ右手を突き出して、いきがるが・・・やべぇ・・・武器持ってねぇ。

ニセ騎士団は、炎狼とシユウ♂の活躍で残り5人程度。

このまま黙っていてもなんとかなりそうな気もするが、それじゃ格好が悪い。

何か無いかと泳ぐ目がある物に止まる。

それは、マリウスに吹き飛ばされたニセ騎士が装備していたであろう小型の丸盾。

これだっ!

そう思った矢先、リーダー格の男が剣を振り上げ俺に突進してきた。


「ぜぇあ!」


振り下ろされた剣を、俺は右足を軸に左足を引き、ギリギリで避ける。

男は、振り下ろした剣を両手から片手に持ち替え斬り上げようとしてきた。

だが、俺はそれよりも早く一歩踏み込み、男の手首を掴むと引き倒した。

男はバランスを崩し、膝を付く。


「くそがぁ!」


悪態をつくそいつに、トドメを刺してやろうと拳を力強く握り締める。

ところが、精霊術師がリーダーに加勢しようと、今度は火の塊を飛ばして来た。


「くっ!」


俺は横に飛び、転がると辛うじて避ける。

その先には、さっき目をつけていた小型の丸盾。

そこへ追い打ちを掛けるようにまた火の塊が飛んで来る。


「んなろ!」


俺はさらに転がると同時に落ちていた丸盾に腕を通す。

俺はガッチリと丸盾を握り締め、転がった勢いのまま飛んで来た火の塊を叩き落とした。


「あっちぃ!」


飛び散る火の粉を慌てて払う。


「この・・・髪の毛がチリチリになんだろうが!」


俺は精霊術師に向かって走り出す。

飛んでくる火の塊を次々に弾き飛ばしながら突進してくる俺に、精霊術師は悲鳴をあげる。


「ひぃぃぃ!くるなぁ!」


取り乱すなよ、情けない。

俺は、走りながら体を丸めるように両手を引き寄せ力を込める。

そして、精霊術師の目前で力一杯踏み込み、その勢いに解放される腕の筋肉と引き締まる背筋の力を加え、丸盾を叩き込んだ。


「!!」


あまりの衝撃の強さに、精霊術師は息が詰まり、声も出せないまま、崩れた建物の壁を突き破って瓦礫の中に消えた。


「いえしっ!」


俺のテンションが変に上がり、丸盾を装備した腕を振り上げる。

そこへ別のニセ騎士が剣を振り下ろしてきた。

と、同時にアーデ達の背後に忍び寄る一人が視界に入る。

俺は振り下ろしてきた剣に対して、丸盾を振り上げる。

この角度が重要だ。

剣は力の方向は変えられ、力一杯地面へ振り下ろされる。

俺は勢いを殺さずに体を回転させると、丸盾をニセ騎士の顔面に叩き込む。


「もういっちょ!」


俺はもう一度回転を加えると丸盾を思い切り投げた。

丸盾は横回転しながら空を裂き、大きく迂回してアーデの後ろに迫るニセ騎士の側頭部にめり込む。

二人のニセ騎士の兜は砕け、同時にゆっくりと空を仰ぐと白目を剥いたまま膝を付き動かなくなった。

アーデとリテルが真後ろで白目を剥いている男に顔を引き攣らせたその時。


「死ねぇぇ!」


放置していたリーダー格の男が、俺に向かって剣を振り上げ飛び掛ってきた。

俺は咄嗟にその剣筋を見切るため意識を集中させる。

だが、飛び上がったリーダーの剣は俺に届くことなく、目の前で炎に包まれ消えた。

俺の横にマリウスの炎狼が音も無く降り立つ。

その口から見える牙の間から炎とリーダー格の足が見えた。


「う、おお・・・おお!?た、助かったぜ!」


間近で見る炎狼に一瞬怯んだが、助けてくれるとは・・・味方で良かった。

炎狼は、ジッと俺を見詰めると、突然、ぺっとリーダー格を吐き出す。

やはり外傷は無いが気絶している。

あれだけの炎なら大火傷しそうだが。


「ワンっ」


炎狼が突然吠える。

いきなり犬っぽいな!

さらに俺を見詰めながら前足を屈め、尻尾を振り始めた。

おい、まさか・・・まて。


「ま―。」


言う前に炎狼は俺に飛び付き大きな舌で顔を舐めた。


「ぎゃぁぁぁ!か、顔がぁぁ・・・あれ?」


ベタベタするが熱くは無い。

触れる毛も炎にしか見えないが、手触りが高級毛皮くらいに心地良い。


「お前、いい子だな!」


俺は炎狼の顔を両手で挟みグリグリと撫で回してやる。

炎狼は尻尾を振り、嬉しそうに吠えると、光の粒となって散った。


「あれ・・・消えた。」


俺が寂しそうに触れていた手を見詰めていると、マリウスが横に来て俺の肩に触れる。


「ずいぶん気に入られてたね。」


マリウスが微笑む。


「もう出せないのか?」

「あの姿は僕が与えたものなんだ。このランプは、入れた精霊に僕の魔力と心を与えて実体化させる魔導機でね。その時の精霊の意思と僕の意思で姿が決まる。あの子はとても従順な性格でさ。なんか、昔を思い出したんだ。」


そうか。

なんか懐かしいと思ったら、子供の頃、俺達がこっそり世話していた犬に似ているんだ。

マリウスは俺の肩を軽く2回叩くと、アーデ達の元へ戻っていった。

マリウスも覚えていたんだな。

少しばかり昔を懐かしんでいると、突然、少し離れた2回建ての別荘の屋根を突き破り何かが飛び出す。

それは空高く上がり、一瞬フワリと浮いたかと思うと、地面へ向かって落ちてくる。

ニセ騎士の最後の一人だ。

そいつが地面へぶつかる寸前、今度は別荘の壁を突き破りシユウ♂飛び出してくると、そのまま落ちてきたニセ騎士を蹴り飛ばした。

ニセ騎士は有り得ないくらいに転がりながら森へ消えていった。

容赦ねぇな!

読んでいただき有難うございます。

次回、ニセ騎士団の正体とは・・・そしてドラゴン娘が・・・

体調不良のため更新が遅れてしまいました。

風邪に気を付けたいと思います。

次話も読んでいただけたら幸いです。

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