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大魔導士 ①

俺達の窮地を救ったのは、俺の双子の弟マリウス・ヴァンドゥースだった。

数日前、勇者一行の魔法訓練を依頼していたが、まさかこんなところで・・・。


「マリウス!なんで―。」

「君が呼んだんじゃないか。」


笑顔を崩さず、マリウスはゆっくりと、まるで階段でもあるかのように降りてくる。

風になびく白いローブは羽根の様にも見える。

女性陣は目を輝かせ、その様子をうっとりと見詰めている。


「呼んだけど、よくここが分かったな。」


俺がそう言うとマリウスはクスクスと笑い、俺の隣に降り立った。


「王都に行ったらシユウさんって人がここだって。王都でも大騒ぎになってたよ。」

「そうか・・・それにしてもお前!今の・・・お前がやったのか?」


あまりに絶大な力をにわかに信じられなかった。

あの量のゾンビ共をあの一瞬で・・・。


「いいや。あれは風の精霊がやったのさ。僕はお願いしただけだよ。」


そう言い微笑む。


「お、お願いって、あんな・・・すげぇな・・・。」


マリウスはわざとらしく首をかしげる。


「ね、ねぇ・・・もしかして・・・もしかすると・・・・。」


突然会話に入り込んできたのはグリムだった。


そうか、こいつマリウスが来るの楽しみにしてたな。


「ああ。俺の弟のマリウスだ。」


魔導車の扉が勢い良く開くと、勇者一行が飛び出して来た。

ジッとマリウスを見詰め、俺の顔をチラリと見る。


「・・・全然違う。」


リリが言う。


「でも、ちょっと似てる?」


リテルが言う。


「ホントに双子?」


クリアが言う。


「ぜっんぜん似てないね!」


グリムが腹を抱えて笑い出した。

女性陣の酷評が突き刺さる。

するとマリウスがフワリと魔導車の屋根から降りリリの前に立つ。

いきなりの事にリリが顔を赤らめ後ろへ下がる。

俺に対する態度とここまで違うのか・・・。

不満げな顔をしているのは俺ともう一人。

ミシェルの顔は喜怒哀楽から喜楽を取った表情をしていた。

そんな視線をガン無視で、マリウスはさらにリリの近付くと、腰を折り、リリの顔を覗き込むように見詰める。


「君・・・。」


何かを言おうとしたが、そこで初めてミシェルの視線に気付き、マリウスは言葉を呑み込んだ。

そして、俺の方へ優雅に振り返える。


「それより、メイ、そろそろ出た方が良さそうだよ。」


そう言って指を指す。

その方向を見ると、また別のゾンビの一団が黒いうねりとなって迫ってくるのが見える。


「やべぇ!早く乗れ!」


俺が大声で指示する。

だが、皆困惑した表情を見せる。


「メイアス!魔導車動かないんだって!」


グリムの悲痛な声。

そうだった!


「クソ!走るしか―。」


言い掛けた俺に向かってマリウスが、スッと手を上げ静止を求める。

そのまま魔導車に触れると何かを呟いた。

すると、いとも容易く魔導車は息を吹き返した。


「おおお・・・。」


その場の全員が小さく感嘆の声を上げる。


「よぉし!乗れぇ!」


俺の指示で勇者一行は一斉に魔導車へ乗り込む。

続いて、マリウスが優雅に乗り込んだ。

バッガスは乗れないので走ってもらう。

グリムはすでに魔導車の屋根に乗り周囲を警戒している。

俺は運転席でタミンの隣に座った。


「旦那ぁ!行きますぜぇ!」


タミンは、一気にスピードを上げると門へ向かった。

これでやっとこの地獄から脱出出来る。

そう思うと、また何かが起こる・・・。

案の定、門まであと数十メートル手前まで来たところで、ノン国軍と交戦中のゾンビ共に遮られ、さらに、一気に後方から迫る奴らに追


いつかれ、周囲を囲まれてしまった。


「クソ・・・もうちょいだってのに・・・。」


運転席から見える門は手が届きそうな気がした。

突然、魔導車の扉が開き、誰かが降りた。


「おい!誰が―。」


後ろを見ようと運転席の窓を開けると、その目の前をマリウスが通り過ぎる。


「お、おい!マリウス!」


俺の声に軽く手をあげ答え、そのまま魔導車の前に立った。

そうか!

あの魔法で一気に!

俺は期待で身を乗り出す。

すると、マリウスは手を上げると誰かに合図するように振った。

その合図と共に門の上にいたノン国軍の兵士がラッパを吹き鳴らす。


「な、なに?」


屋根に乗るグリムが辺りを警戒する。

マリウスがまた大きく手を振る。

その手はゆっくり滑らかに幾度も振られる。

それは、まるで音楽を楽しむ指揮者の様にも見える。

次の瞬間、門の上から一斉に木箱が投げ落とされた。

木箱は空中で開き、中から大量の矢を振り撒く。

見える限りの門の上から木箱は落とされ、尋常じゃない量の矢が目の前を覆い尽くす。

すると、マリウスは、スッと右手を振り上げる。

目を疑う光景が目の前で起こった。

振り上げたマリウスの右手に同調するかのように矢は落下を止め、空中で静止する。

そして、指先を滑らかに裏返すと、一斉に矢尻がバジリスクゾンビ達へ向いた。

皆が固唾を飲み、静まり返る街にマリウスの指を弾く音色が響いた。


パチンッ


こんな壮絶な戦いや混乱の中、不謹慎だが、その光景に目を奪われてしまった。

何千、いや、何万本だろうか、矢が空を埋め尽くし、次々に流星の様な光る尾を引きながら飛んで行く。

いくつもの光の線が薄暗くなった空を彩っていく。


「キレイ・・・。」


グリムが思わず呟く。

空を自由に飛び回る矢は、俺達やノン国軍兵士達の横を通り抜け、次々にゾンビ共を貫いていった。

門に群がる奴らも、俺達を取り囲む奴らも、押し寄せてくる奴らも、あっと言う間に静かになった。

一瞬の静寂。

ドカンと言っても過言ではない歓喜の声が街を揺らした。


「やったぞ!我らの勝利だ!」


誰かが叫ぶ。


「勇者一行様!万歳!」


その掛け声を皮切りに勇者一行を称える声が俺達に降り注いだ。

俺は、何事も無かったかのように歩いて門をくぐろうとしているマリウスの後を追い横に並ぶ。


「マリウス!お前、すげぇな!いつの間にそんな魔法覚えたんだ?」


マリウスは足を止めると悪戯っこの様な笑みを浮かべる。


「メイは、ホント脳筋だね。」


そう言い残し、また何事も無かったかの様に歩き出す。


「どういう意味だよ。素直に褒めてやってんのによ。」


俺はまたマリウスに並ぶと不満を口にした。


「ありがと。僕も褒めているんだよ。素直にね。」

「なんだそりゃ。」


マリウスめ。揚げ足を取りやがって。

俺の心を見透かすようにマリウスは微笑む。

だが、また足を止めると真顔で振り返る。


「メイ。この事態、まだ終わりじゃないよね?」


マリウスに言われ、俺の心に緊張感が戻る。


「ああ。すぐに向かわなくちゃならないとこがある。お前も付き合え。」


マリウスは小さく頷いた。


「それとメイ。」

「ん?」


マリウスは口元に手を当て少し考え込む。


「なんだよ?」


俺の問い掛けに、目だけを俺に向ける。


「あのゾンビ達。ちょっと気になる事があったんだ。」

「気になる事?」


問いに答える前に、グリムやアーデ達が追い付いてきた。

マリウスは「あとで」と言い残し、先を歩いて行った。

読んでいただき有難うございます。

次回、ノン国バジリスク戦、最終ステージへ!

次話も読んでいただけたら幸いです。

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