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脱出 ①

ダングレン達は生きていた。

アーデをコカトリスから救ったのは彼らだったのだ。

なんとか教会から這い出した俺達を待っていたのは、巨漢の男ダングレンと彼の部下の剣士1人に魔導士2人だった。

生き残ったのはこれだけらしい。

教会の目の前にはコカトリスの巨大な体がおびただしい血の池の中に倒れている。

首が根元からバッサリと切り落とされ、今も血が流れ出している。

この首を切り落としたのはダングレンの背負う斧だろう。

コカトリスの太い首を骨ごと断ち切るとは相当な腕の持ち主なのは明白だ。


「ダングレン隊長!」


イシャルティがもつれる足で駆け寄る。


「イシャルティ!」


ダングレンは、目を見開くとイシャルティの両肩を掴んだ。


「生きていらっしゃった!ああ、隊長。私は、教会の地下を見ました。私は―。」


涙を堪え切れず言葉に詰まるイシャルティ。

その背中をダングレンの大きな手が力強く叩く。

息がつまり驚くイシャルティを見詰め、ダングレンは微笑んだ。


「馬鹿者が。隊は任せると伝言しただろうに。こんなところまで来よって。」


ダングレンは妻子の事は触れなかった。

ただ涙が静かに零れ落ちた。


「ところで、この者達は?」


涙を手の平で拭ったダングレンが俺達を見回す。


「この方達は、勇者御一行様です。」


イシャルティはそう言って一人ずつ紹介していくと、ダングレンはその都度、手を取り力強く握ると深々頭を下げた。

そして、最後に俺の名を紹介されると、ダングレンは目を丸くして驚いた。


「これはこれは、噂に名高いメイアス・ヴァンドゥース殿か。」


ダングレンは俺の手を取ると思い切り上下に振った。


「有名ね。」


グリムが楽しそうに言う。


「悪名だな。」


バッガスが魔導士にコカトリスから受けた傷を治療してもらいながら言う。


「悪名ですか?」


リテルが純粋な目で俺を見詰める。


「・・・否定はしない。」


俺はそう答えた。


「ガッハッハ!確かに良い噂よりも、だな!」


ダングレンが豪快に笑う。


「どんな噂なんですか?」


アーデが興味深々で俺を見る。


「後で教えてやるよ。今はそんな状況じゃないだろう。」


俺は的を射た答えで難を逃れた。

それからダングレンに俺達を救った経緯を訊いてみた。

ダングレン達は教会を出て移動しているところで、ゾンビの一団と出くわし交戦。

おそらくは俺達を追っていたゾンビの一団だろう。

ゾンビを殲滅したところでコカトリスが教会の扉に体当たりをしているのを目撃して、教会内に誰かいると確信した。

コカトリスが首を教会へ突っ込んでいる内に、無防備な首の根元を切り落としたとの事だ。


「ここまで来るのに部下のほとんどを失ってしまった。俺なんぞの為に・・・。」


そう言ってダングレンは生き残った部下を愛おしそうに見詰める。


「しかし、イシャルティよ。お前、良くシャロの魔法を許したな。」


ダングレンにそう言われるとイシャルティは少し目を逸らした。


「その様子では、シャロを信用しての事ではないな。」


イシャルティはダングレンの目を見詰め直し首を力なく横に振る。


「この魔法は素晴らしいです。シャロへの憎しみが薄れるほどに。今は、弟が無駄死にでは無かったと、少し・・・思えます。」

「許せよイシャルティ。シャロにもこの魔法を完成させたいという強い意志があったのだ。お前は知らんかっただろうが、最初の人体実験の失敗の夜、あいつは相当荒れていたよ。実験の失敗では無い。同志を失った事を心から悔やんでいた。だからこそ、あいつはどうしてもこの魔法を完成させたかったのだ。お前の弟の、同志の為にな。」


ダングレンの話をじっと聞いていたイシャルティは小さくゆっくりと息を吐いた。


「わかっていました。それでも、私は弟の無念を誰かにぶつけたかったのだと、思います。」


俯くイシャルティの頭をダングレンの大きな手がグイと撫でる。


「もう良いな。」


ダングレンがそう言うとイシャルティは頷いた。

ダングレンは振り向くとタブレ地区の出口を剣で指し大声で言う。


「さぁこうしてはおれんな!皆で力を合わせ、脱出するぞ!」


この男の言葉は真っ直ぐで重みがある。

俺も部隊長を務めていたから分かるが、ダングレンは良い指揮官だろう。

疲労しているはずの部下達も、アーデ達も、ダングレンの力強い言葉とその表情に、力を振り絞り背筋を伸ばした。

俺達は歩き出した。

イシャルティの戻ったダングレン隊が先導し、アーデ達を挟むと俺とグリムとバッガスがしんがりと務める。

荒廃した街の中を歩きながら俺は考えていた。

明らかにこの事態の裏には人がいる。

人ではないか・・・魔族、それとも魔人か。

狙いは定かではないが、アーデ達ではない気がする。

いや、アーデ達の存在も狙いに加えられた可能性があるな。


「あ、そうだ。」


俺は大事な事を思い出し、思わず声に出してしまった。


「なに?」


グリムが俺の目を見詰める。


「あ、ああ。ダングレンはこの事態の何かを掴んでいるはずだよな。」

「そうだぁ!だねぇ!」


グリムが目を丸くして俺を見詰める。


「よし・・・聞いてこよう。」


俺は速度を速め、アーデ達の横を追い抜きそうになったところで、グリムの張り詰めた声が響く。


「止まって。」


囁く様だがしっかりした声が全員の耳に届く。

どうやらグリムとバッガスが何かの匂いを嗅ぎ取ったのだ。

振り向けばまたあの頭が屋根の上から見える。

俺達にはまだ気付いていない様だ。


「またかよ。」


俺は大きく溜息をつくと大剣の柄を握る。

すると、俺の背中に何かがブツかる。


「うお。ミシェルなんだ?」


ブツかって来たのはミシェルの背中だ。


「メ、メイアスさん・・・。」


震える声でミシェルが指差す。

その光景に、俺達一行は凍りついた。

反対の屋根の上から覗く後頭部が2つ。

あの頭が、コカトリスのあのトサカが、ゆらゆら揺れていた。

読んでいただき有難うございます。はたしてメイアス達は、この地獄から無事に脱出出来るのか。乞うご期待。次話も読んでいただけたら幸いです。

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