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大捕物 ③

その時のアーデの喜び様はすごかった。

疲労困憊のリテルの手を取ると「ノン国は砂漠の国なんだって!」とか、「また冒険が出来るね!」とか。

当然、俺とグリムとバッガスは猛反対した。

だが、シユウは全く聞く耳を持たない。

「依頼件数を捌ききるには、出来る依頼をこなしながら実戦で力をつけてもらうしかありません。」との事だ。

それからシユウは帰り際に分厚い資料を俺に手渡し「よく目を通しておいて下さい。」と言い残し去っていった。これ全部見ろと・・・。


勇者一行を見送った俺達はいつもの酒場に集まっていた。


「・・・。」


俺は無言でシユウの作った資料に目を通している。


実に良く出来ている。


「ねぇ。あたしにも見せてよ。」


あまりに夢中で読んでいるのが気になったのかグリムが横から覗き込んできた。


「ちょ、お、おい。ほら、こっち見ろよ。」


俺は資料の前半部分を破り取るとグリムに渡した。


隣にピッタリくっつかれては集中出来る訳無いだろう。


「あー破いた!良いじゃん一緒に見れば~。」

ブツブツと文句を言いながらグリムは離れた。


またしばらく無言で資料に目を通していると、グリムが感嘆の声を上げた。


「はぁー。こりゃすごいねぇー。あのシユウって人、大したもんだよ。」


そう言いながら、持っていた資料をバッガスへ渡した。

無言で腕組みしていたバッガスも早く見たかった様で、勢い良く資料を取ると食い入るように見始めた。

その俺達を唸らせた資料の内容と言うのは、依頼相手であるノン国の人口や情勢から地図に至るまでの細かい情報に、ゴズ砂漠の地図にはモンスターの生息図や安全な場所、さらに現地調達可能な水や食料まで記入されている。


「ゴズ砂漠にこんな場所があったんだな。」


討伐で何度も訪れた事がある俺達でも知らない事が沢山書かれている。


「え・・・ムハムハ草って食べられたの!?」


グリムの言うムハムハ草とは、常に蒸気を出す蒸れた靴の様な匂いの草だ。

食べれたとしても食べたくは無い。


「おい。これを見てくれ。」

バッガスが机に資料を置いて指差す。


そこには、バジリスクについての生態や退治方法が書かれていた。

バジリスク。見ただけで相手に死をもたらす毒を持っている。

大きさは20センチ~1メートルで頭にトサカの様な突起物があるのが特徴。

群れを成す事は無いが、常に密集して生息している為、1匹見つけた場合近くには十数匹いると思った方が良い。

注意すべきは視覚毒だが、常に体から分泌する毒液も触れただけで相手を死に至らしめる。

唯一解毒出来るのはヘンルーダと言う花から作る解毒薬のみであり、退治には必要不可欠。

退治方法は、バジリスクの巣穴へ生きたイタチを投げ込むのが一般的。

投げ入れた際に、バジリスクがイタチの匂いでもがき苦しみ、毒液を撒き散らしながら巣穴から飛び出す場合があるので、投げ入れたらすぐに離れる事。

ちなみに、毒を浴びたイタチが飛び出す場合もあるので注意。

さらに、もっとも注意すべきはバジリスクの繁殖期である。

バジリスクは雄のみで、繁殖期になるとその内の数匹が雌に変化する。

その雌をコカトリスと呼び、ニワトリの様なくちばしと足と羽を持つ。

バジリスク同様に視覚毒や猛毒の体液を持ち、凶暴な性質で、人や他の動物を見ると襲い食す。

自らに危険が及ぶと甲高い声で鳴きバジリスクを呼び集めるので、絶対に手を出さない事。


「・・・コカトリス。会いたくない奴だな。」

俺が言うとバッガスが暗い顔で頷いた。


俺とバッガスは一度こいつに会ったことがある。

今回と同じバジリスク退治の時だ。運悪く繁殖期が遅れていたのか、向かった先で2匹のコカトリスと遭遇してしまったのだ。

当時は、俺もバッガスも新米で隊長の命令を鵜呑みにしてコカトリスに立ち向かったが、先行した先輩達が一瞬で絶命するのを見て、一目散に逃げ出した。

隊は俺とバッガス以外全滅。

逃げ出すなんて情けないと上層部から言われたが、命を第一に考えれば俺達が正解だったと思う。

それに、ひよっ子だった俺達に他の隊員を救う力なんて無かったさ。


「ねぇねぇ。これ見てよ。」

辛い思い出に浸る俺達にグリムが資料を指差す。


「次の依頼内容・・・?」

そう大きく書かれたページを俺は覗き込んだ。


「フィザリ王国トンカン祭りパレード参加依頼・・・。」

バッガスが読み上げる。


「参加すんのかよ!」

思わず仰け反る俺。


「でも、楽しそうよ?」

祭り好きのグリムは嬉しそうだ。


「我も興味あるぞ。」


バッガスまで・・・。

緊張感ねぇな・・・。

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