魔王討伐 ①
初作品。初投稿です。更新は不定期です。頑張って書きますのでよろしくお願いします。
平成27年3月1日:話を分割しました。
王都ルースは今、ラング大通にて勇者御一行による魔王討伐記念パレードの真っ最中だ。
見渡す限りの人だかり。誰もが歓喜の声を上げている。
涙を流しながら拝む人までいる。
大通を挟むように立ち並ぶ建物から、たくさんの紙吹雪が降り注ぎ、眩しいほどの太陽の光でキラキラ輝いている。
「勇者様!巫女様!ありがとうございます!」
沿道のエルフの少女が声の限り叫ぶ。
巫女様が手を振り返すと、少女はこれ以上無いほど眩しい笑顔を返した。
「勇者御一行に盛大は拍手を!」
パレードを先行するドワーフの男が、大声で人々をあおると、歓声と拍手が一斉に巻き起こり、空気がビリビリと震えた。
(なんて素晴しい日だろう。)
俺は心の底からそう思った。
魔王がこの世界に突然現れたのは、17年前だった。それまで、種族間のいざこざは多数あったものの大規模な戦争なんて起きたことがなかった。そんな平和な世界に、いきなり黒雲が空を覆いつくすと、どこからともなく現れた魔物や魔族が、次々と村や町を、国さえも襲い始めた。
この時俺は、不謹慎だと思うが、正直チャンスなんだと思った。
俺は、誰からも認められる剣士になりたかった。小さい頃からの夢・・・。
俺には、2つ違いの兄貴と双子の弟がいる。兄貴は親父と同じく近衛兵として働いていた。
今は功績を認められ、引退した親父の後を継いで近衛兵団長だ。
弟は、体が弱くて家に閉じこもって本ばかり読んでいる。
将来は、学者になりたいんだと言っていた弟は、今や母国でもトップクラスの魔術師となり、学校の教授を務めている。
俺は、世界を救うべく、近衛兵の道を捨て魔王討伐軍へ志願した。19歳の時だ。
昼夜問わず、毎日の様に繰り返される魔物や魔族との死闘で、俺の剣術はメキメキと上達していった。それに、仲間達が無残に死んでいく日々は、精神的にも強くならざるを得なかった。
数年が過ぎ、30歳の俺は討伐軍の部隊長までなった。
それから5年・・・激動の時を過ごしていたある日、世界中に吉報が届いた。
勇者御一行が魔王を討伐。
そして、俺は今、パレードの最前列で警備をしている。
(なんて素晴しい日だろう・・・・。)
俺は思った。
パレードの警備長を務める俺は、共に死線をくぐり抜けて来た仲間達を見回した後、久しぶりに見えた青い空と白い雲、眩しい太陽を見上げた。
(なんて・・・面白くない日だろう。)
言葉に出せば周りから袋叩きにされるだろう。
俺自身、浮かんだこの言葉をすぐに振り払おうと何度も首を振ったくらいだ。
世界が救われた事は当たり前に嬉しくて素晴しいと思う。
弁解じゃない、それが本心だ。でも、仲間の死を乗り越えながら毎日死に物狂いで戦ってきた俺達を、勇者御一行はあっさり追い抜き魔王を討伐してしまった。
「俺達の手で世界を救うんだ!」
折れかけた仲間達の心をそう言って勇気付けた。
「・・・俺達が必ず魔王を倒す。約束だ。」
死にゆく仲間達の体を抱き締め、手を握り、そう約束した。
魔王は倒され、きっと、彼らの努力と無念はこれで晴れたのだろう。
それでも俺は、俺自身で魔王を倒したかった。
動機が不純と言われたら仕方ないけど、俺は、このパレードの中心に立ちたかった。
仲間達と、両手を大きく振りながら、死んでいった友の名前を叫びたかったんだ。
そして、世界を救った勇者として胸を張って国に帰りたかった。
まぁ・・・なんだかんだで、先を越された事にイラッとしているだけなんだけど。
鍛え抜かれた俺達兵士ではなく、ぽっと出の少年少女に手柄をあっさり取られた事が納得できないだけだ。
聞いた話じゃ勇者御一行は、運命に導かれて集ったとかで、その冒険談はあまりに良く出来上がっていて、すでに本として出版される事が決まっているらしい。
一応、簡単に説明しとけば、その良く出来た勇者様の名前は、アーデ・クーン。種族は人間。見た目は普通の少年にしか見えないが、巫女が予言していた選ばれし存在らしい。
そして、その巫女というのは精霊族で、名前はリテル。苗字やミドルネーム等は無く、ただのリテルらしいが詳しくは知らない。
光の精霊アカリの巫女で、数百年に一度産まれると言われているアカリの化身だそうだ。
見た感じは勇者よりも年下の様に見えるが、精霊族の平均寿命からするとかなりの年上という可能性もあるのだろう。
そんな二人は、パレードの中心でお互い目を合わせる度に憂いを帯びた視線で見詰め合う。
ああ・・・こいつら、確実にデキていやがる。
それから勇者御一行その他は、エルフの魔剣士ミシェル・マイン、俺と同種族で同郷らしいが名前は聴いた事ないし、顔を見るのも今日が初めてだ。
まさか、エルフでこんなやつがいるとは・・・正直こいつが一番いけ好かない。
それから、賢者リリ・ワインド。創世神話に出てくる賢者ロークス・ワインドの子孫だと言う。
小さい頃に学校で聴かされたお話が実話だとは思いもよらなかった。
最後に義賊クリア・セディン。魔王出現によって訪れた大不況で大飢饉の中、一部の権力者が食糧や金を独り占めにするって事が各地で起こっていた。
そんな時現れたのが、義賊アイリアス・セディン率いる「切り裂く光」団だ。
クリア・セディンは、その娘。弱きを助けるこいつらは、金持ち権力者達を自らの正義の基に襲撃し、金品食糧を強奪。それを貧しい民衆にばら撒くのだから当然人気があり、中でも頭領のアイリアスはイケメンで女性人気も高かった。
この男とは、何度となくぶつかり、一対一で決闘なんてこともした。
力量は常に僅差でいまだにハッキリとした勝敗がついた事はない。
そんな、犬猿の仲であるアイリアスの娘が、世界を救った勇者御一行の一人だなんて・・・ますますテンションが下がる。
読んで頂き有難う御座いました。続きも頑張りますのでよろしくお願いします。




