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化物と作家  作者: 靭帯が痛い人(Allen)
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遭遇

膝の靭帯を痛めてしまいました。

痛いです。

でもなんか書いちゃいました。

はい。

どうか最後まで読んで頂ければ幸いです。

楽しんでいただければもっと良いです。スゴく...イイッ!


*一話には、残酷な描写は無いです。

 18歳で初めて出した本が大流行し、私、こと山城やましろ 日向ひゅうが が超新星だの天才作家だのと呼ばれたのは、今はもう昔の話。

 5年程前、それまで書いていた人気作が完結し、新しい小説を書いたが、売れなかった。それからも何作か書いたが、やっぱりどれも売れなかった。

 最初こそ、「次は売れるぞ」と、気合を入れて書いていた。しかし、次第にその気力も尽き、いつの間にか、小説が書けなくなっていた。

 そして、世間は私を忘れ去り、私の作家としての居場所は無くなっていた。

 卵が産めなくなった養鶏場の鶏は、殺処分されるそうだ。いっその事、私も同じように処分されてしまいたかった。作品を作れない作家に存在価値は無い。

 だが、様々な思いがあって、自分で命を絶つ気にもなれなかった。

 そんなある日、こんな噂を耳にした。


『西の廃村の山に、人を喰う化物が出るらしい。』


 これ聞いて、自暴自棄になっていた私は、もうこの化物に喰われてやろうと考えた。

 そして財布だけを手に、ふらふらと家を出て、汽車と馬車を乗り継ぎ、山奥へと向かった。



 *



 例の村に着くと、「なるほど、化物が出る訳だ。」と、思わず呟いてしまうほど、荒れた廃村だった。

 村の入り口に建つ『華湯村』の看板は傾いていて、汚れている。まだまともに形がある空き家もあったが、いつ崩れてもおかしくないような廃墟も並んでいて。

 しかし、そんな村でも、いや、そんな村だからこそだろうか。自然は全く人の手が入っていなく、緑が美しかった。

 私はそんな緑に目を細めながら、山に入っていった。

 それから、3時間ぶらぶらと歩いた。

 日が暮れ始めたが、肝心な化物の気配は無かった。

「噂は、嘘だったのか。」

 流石にくたびれ、私は、近くにあった倒木に腰掛けた。その時だった。

 前の茂みから飛び出してきた影が、私を押し倒し、上にのしかかった。

 驚きのあまり、声が出せなかった。

(化物か!)

 あぁ、私の生涯はこれで幕を閉じるのか。

 ゆっくりと、頭の中で、今までの人生が再生される。

 走馬灯と言うやつか。

 目を瞑って、私はその走馬灯に意識を集中させようとしたが、それを遮るように、化物が喋った。

「人間がこんな山に来るとは、珍しいな。しばらく振りのご馳走じゃ。」

 私はその声に、違和感を感じた。

 化物にありがちな低い声ではなく、妙に高い調子の声だったからだ。

 なんだろうか、まるで女性の声だ。

 私は、こんな声の化物の顔が気になって、再び目を開けた。

 化物の顔が、目の前にあった。

 化物は女のような顔をしていた。

 明らかに人間とは違う、白過ぎる肌の色。白い絹と、藍で染められたような絹が混ざった髪。整った顔立ち。

 化物の紅い瞳と目が合った私の口から、こんな言葉が漏れた。


「・・・美しい。」


 私は、ただ見惚れた。

 その吸い込まれるような紅い瞳に、陽炎の羽のように透き通る肌に。

 髪が垂れて、私の頬に当たっていた。柔らかく、実に良い感触だった。


「・・・。」


「・・・。」


 言い様のない奇妙な沈黙が流れた後に、化物が笑い声を上げて立ち上がった。

「お、お前!今なんて言った?!ッハハハ!!!」

 化物が、腹を抱えて笑う。

「くくく....ッ、儂を見て美しいなんぞ抜かしたのは、お前が初めてだッ!面白いな!気に入った!!!喰うのはよしてやろう!!」

 化物はそんな事を言うが、それは困る。私は喰われに来たのだ。

「どうした?不満か?」

 私の、『解せぬ』と言わんばかりの表情を、きょとんとした顔で化物が私を見る。

「私は食われに来たんだ。喰って貰えなきゃ困る。」

「妙な事を言う奴だ!命乞いをする人間は再三見てきたが、喰ってくれとは!」

 やはり面白い、と、化物がまた笑った。

 これが私と、化物の出会いであった。



 *



 あの化物と出会ってから、2週間ほどが経った。

 あの後、私は一旦家に戻り、寝泊まりするのに必要な物などを持ってきた。

 私はそれを、もう使われていない村の空き家に入れて、そこで寝泊まりしていた。

 そして、朝になると山に入り、化物に会っていた。

 何をしているかって?

 観察だ。

 どうも、私はこの化物に興味を抱いてしまったらしい。

 しかし、この化物は変わっている。

「あなたを暫く観察してみたいのだが、良いだろうか?」と提案したら、「良いぞ、好きにしろ。」と軽く言い、自分の寝どころまで教えて、「朝はここにいるからな、今日はもう暗いからの、明日また来い。」と言って承諾してくれた。

 人間に対する不信感というモノが無いのだろうか?

 そして、2週間観察を続け、奴の生活パターンも分かったのだが、これもどうも化物らしくない。

 まず朝は、野生に生きる化物らしく、夜明けと共に目覚める。かと思いきや、昼過ぎまで寝る。そして、日があと少しで真上に来るような頃に起きて、遅い朝食を取る。ちなみに献立は、山菜や木の実を炙ったモノだ。(料理なのか?これ。)

 その後は食料の調達。

 化物らしく、獣を狩りに行くのかと見せかけ、おもむろに寝どころから釣竿とカゴを取り出し、ゆっくりと川に行って釣りをする。

 なんでも、肉は実際そんなに必要ないそうだ。(しかし、美味いから偶に熊とかを狩って喰うらしい。)

 では、なぜ人間がいたら喰うのか?と問うと、「美味いから」と、化物は実に清々しい笑顔で答えてくれた。

 そして、2、3匹ほど魚を釣ると、釣りを止めて、山菜や木の実を採りに行く。(しばしば、とった木の実をそのまま口に入れていた。....昼食?)

 日が傾き始めると、化物は山の中腹に自然に湧く温泉の泉に浸かりに行く。

 薦められ、私もその温泉に入ったが、なかなか心地良かった。

 そうそう、温泉に入る時は化物も服を脱ぐ。

 見るな、と言われ、私は裸の化物を見ぬようにしていたが、つい見てしまった。

 湯気で肝心なところは見え無かったが、すらっとした、それでいて豊満であるところは適度に豊満な良い体つきをしていた。(ちなみに、私の視線に気付いた化物に、私は軽く折檻を受けるのだが、特に語る必要はなかろう。それよりも、化物にも恥じらいがある事に少し驚いた。)

 そして日が暮れると、寝どころに戻り、昼に釣った魚を焼いて喰って、寝る。


 なんだろうか。


「化物って言うより、隠居した老人のような暮らしだな。」

 私は、今まで書いてきた記録を見て呟いた。

「老人とは酷いな。儂はまだ化物しては若いぞ?」

 隣で釣り糸を川の水面に垂らしながら、化物が文句を言う。

「何年生きてるんだい?」

「そうじゃなぁ....。400年とちょっとかのぉ...?」

 そりゃ老人じゃなかろうか。

「あ、そうだ。」

 ふと、ある事が思い浮かんだ。

「なんじゃ?」

「いや、そういえば、名前はあるの?」

「無いぞ。好きなように呼べ。」

 記録をつける時も、喋る時も、名前が無いと不便だ。

 私は、少しの間考え込む。


「・・・絹影(きぬかげ)。なんてどうだろう?」


 ぽん、と、思い浮かんだ名を口にしてみた。

「良いな」と、化物、いや、絹影が言った。

「妙な気分だな。生まれて400余年で、名が付くというのは...。」

 絹影は、空を見上げながら、そう呟いた。

「気に入ったか?」

「あぁ、良い名じゃ。ありがとうな、日向。」

 ふっと笑って、絹影が私を見た。

 私にはその顔が、人喰いの化物にはとても見えなかった。

靭帯痛いです。

続きはそのうち...ね?

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