消えていくけれど
キミの大きな瞳から、キレイな透き通った雫が一粒、また一粒。
「うっ…ぁ…」
小さく嗚咽を漏らしながらキミは泣いていた。そんなキミにむけて小さく微笑んでボクはその雫を拭った。
「泣かないで」
それでもまだ、次から次へと雫は溢れてくる。
お願い、泣かないで…。
キミを引き寄せて包み込む。
「ゔぅ…ぇ」
すこしずつ大きくなっていく泣き声。
「大丈夫、ボクがいるから」
キミの顔を自分の胸に押し付けて言う。
身を任せて。
キミの後頭部を軽くなでてキミの肩を持ってそっと身を離す。
「ほら、大丈夫」
いままでなんどもなんどもキミに言った言葉を繰り返す。
大丈夫、大丈夫…。
「もう時間だ」
最後は笑っていてほしい。記憶にキミの泣き顔だけが残らないように。なんども泣かせてしまったけれど、悪くはない思い出たちとともにキミの笑顔を焼き付けていたい。
「絶対に忘れないから」
そう、絶対。忘れないし忘れたくない。そして、忘れられない。キミと過ごした日々はもう戻りはしないけれど、それでも大切だから。
もし、もしも赦されるなら。
「ボクのこと、忘れないで」
願うだけ、それだけだから。叶えてくれとは言わない、叶えて欲しいとは思わない。ただ、望むだけ。
「笑顔が見たい。笑っていて、ずっと」
もう時間がない…。
キミの頬に手を当てて包み込む。親指で優しく涙を拭う。キミは少しだけ目を瞑りそしてボクの手に頬を擦り寄せた。柔らかいキミの頬の感触を確かめていると不意にキミが俯いた。顔を上げたキミの顔は笑顔。
「さようなら」
キミが言葉を発した。ボクのために笑ってボクのために別れを告げてくれた。あんなに泣いていたのが嘘のように。無理をしていることすら感じさせないような自然な笑み。ボクも、返さなきゃ。
「…さようなら」
キミの言葉を復唱する。ボクは消えていくけれどキミがそれを許すならボクはキミのなかで生き続けていくから。
キミに、永遠を誓おう。
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