手放せない温もり
「何してるの?」
ミルフェの視界を茶色が覆った。
頭の中をかき混ぜられたような倦怠感が広がる。目の前の日向の匂いに縋る。ゆっくりと息を吐いた。
「ギル。何でいるんだ。」
聞いたことのない声音がミルフェの頬に響いた。最近馴染んできた声より更に低く、相手を威嚇する。
(それは不味いんじゃ…)
働かない頭で考える。
震える指を相手の胴体に巻きつけた。これ以上動かないように力を入れる。
低く響く声は止まり、なだめるようにミルフェの手を撫でた。
振り向いた茶色の瞳に安堵する。
「ミルフェ……」
目を細めて様子をうかがうようだ。
「大丈夫。久しぶりでびっくりしただけ」
笑顔を貼り付け、できるだけ茶色の瞳を見つめる。実際は焦点を合わせるのに苦労したのだ。少し瞳が潤んでいるかもしれない。
ごくっと喉が鳴る音がした。
「ミルフェ…」
日だまりの匂いに包まれて、ミルフェは意識を手放した。
木の香りがした。
湿った匂いに雨が降ってきたと思った。
ミルフェはゆっくりと瞳を開ける。
知らない天井。
所々が染みついている古ぼけた木の色。
(昔はよくこういう場所に泊まっていたなあ…。)
懐かしさに少し呆けた。
「気がついた?」
横を向くとトラムが寝ていた。
(昔みたい…)
ミルフェの唇が笑みを形づくる。
指を伸ばしてそっとトラムの顔を撫でる。
「…私、なんで寝てるの?」
お話しが切れ切れ…ですね…~(T^T)