黒は嫌い
ミルフェは門の前で立ち止まった。
(2日連続…)
確実に寝不足の頭で考えた。
人外の体格。
(なんだ!その手足の長さは!!)
人外の美貌。
(周りから熱い視線を感じていないのか!
何だその無表情は!!)
闇色の瞳に同色の髪。
何事にも動じず、味方であったなら心強い。
だが、その瞳に映る世界は彼の心を動かすことはない。
人の世など一瞬で滅ぼす力をもつ、まさしく人外。
天人
(相変わらず、注目されているのに無頓着だなぁ)
この闇色の髪の天人はトラムの相棒である。
三人で旅をした仲ではあるが、ミルフェはこの天人が苦手だった。
しかし、いつまでもこのままでいるわけにもいかない。
意識しないようにその横を通り抜けようとした。
「あれ?ミルフェ?」
上から声が降ってくる。聞き逃すことなど有り得ない深い声がミルフェの耳をくすぐる。
記憶にあるよりも近くからする美声はその破壊力でミルフェの足を止めた。
「大丈夫?」
耳を押さえてうずくまるミルフェに抑揚のない声が落ちる。
(久しぶりに聞くと凄まじい!攻撃?!何で攻撃されてるの?!)
涙目になってそろりと見上げると、何の感情も読み取れない闇色の瞳が見下ろしていた。
「お、お久しぶり…です。…」
トラムの前では決して見せない愛想笑いが悲しい。
(こ、怖い!トラムがいないとメチャクチャ怖い!)
暫し無言で見つめ合う2人。
美貌の主は形の良い唇を開いた。
「老けたね。」