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7話 飛んで飛んで

落ちる、まずは落ちていく感覚だった。

それが、次に背中に括りつけた棍を掴んでいる神鳥の羽が受ける空気の抵抗で

前方へと押し出されるように変わっていき、

さらには数回の軽い羽ばたきで、ふわりとした浮遊感に取って代わり

数十m下に森を見ながらの水平飛行状態へと移行して安定した。


うおおおおおっ 足元に何もないって恐しいな。

某アニメ主人公は天空の城で下に何もない崩れそうな石垣っぽい処で

気にもせずに、ひょいっとジャンプして渡り歩いてたけど

俺には無理だわー。下っぱ腹がぎゅーっと縮み上がるというか、ゾワゾワする。


とは言ってもしばらくはこのまま飛んでいくしかないよなぁ。

降りて森の中を行くのは速度的にも危険度的にも選択外だと思う。

最初の対象(生物、無生物)全表示よりは絞り込んでからの表示にして

格段に少なくなったとは言っても

アクティブな敵対行動をとる対象ってのはそれなりの数が表示されている。

感知範囲にもよるけどアレが群がってこられたらと思うと

森の中に入るのは遠慮したい。

せめて逃げ回るスペースのある処じゃないと降りれないなぁ。

森の中にいる敵性動物って、・・・・・・虎とか?

いきなりそんなの無理ゲーやんか、まずは街の近くでウサギかミミズくらいが

序盤戦闘の定番だろーに。

それだってできれば遠距離攻撃したいくらいだわ。

あー、でも食料は探さないといかんのか、MAPの検索って出来るのかな?

おっ、出来る出来る、えーっと対象をアイテム(食料品)にしてっと・・・・・・

んーっと、なんだこりゃ表示が果実とか山菜とか、名前がわかんないものは

こういうくくりで表示されるのか?

見たところそれなりに食えるものはありそうだし

まずは安全地帯に使える場所が出てくるまでこのまま飛んでるのが良さそうだなー。


しかし、TVの鳥人コンテストの滑空機ってこんな感じなのかな?

あんまり羽ばたいてないのに

荷物抱えてて高度が落ちないのは神鳥の能力なんだろうか?


うーむ、風で目が痛いな、なんかなかったっけ?

アイテムリストをチェックしてると彫金用の色付眼鏡があった、のでかける。

ちょっと楽になったな、しかしコレってメインキャラの持ち物じゃなくて

同アカウントの2ndキャラの持ち物だったはずだけど、そっちの持ち物とか

倉庫キャラの持ち物まで一つにまとめられてるのか・・・・・・。

どおりで素材やら低LV装備とか倉庫キャラに預けといたものまで

アイテムリストに入ってる訳だ、その割に(アイテムリスト)に余裕があるのは

・・・・・・・・同アカウントのキャラの鞄分もまとめて使用出来る様になってるせいか。

1キャラで鞄が最大拡張して80アイテム、金庫その他合わせて、えーっと

確か500くらいだっけか、2ndと倉庫キャラの拡張してないのが数キャラで

・・・・・おそらく 3000アイテムくらいは持てるのか。

荒野にいるうちに、投擲用に小石とか拾って貯めとけば良かったかな?


そんな事を考えながらの飛行だったが

そろそろ昼前くらいから数時間以上は飛んでるんじゃないかな。

カラスの巡航速度ってどのくらいだっけ?

結構な距離を進んでると思うんだが・・・・・。


「おーい、そろそろ疲れてんじゃないか? どっか休めるとこ探して休憩しよーか。」

「カァッ♪」ふむ、なんか平気そうな返事だなぁ、大丈夫ならいいんだが・・・・・・。

眼下はどこを見ても深い森で地面が見えてるとこがまるでない。

これじゃあ木の上くらいでしか休む場所が見当たらない・・・・・と、

キョロキョロ周りを見ていて、進行方向のやや右手側にうっすらとしたシルエットで

森林ではない、山の様な地形が見えてきていた。


ふむむ、山があるってことは あのあたりで植生が変わってる可能性もあるか。

尾根をこえれば裾野で降りれるところもあるかもしれないし


「よしっ、神鳥さんや、ちょっと右の方に方向ずらして

 あの山の方へ向かって・・・・・・」


神鳥に指示を出していると視界の右上に赤い点が出てきた。

半透明にして出しっぱなしのMAP上に今までなかった表示が出てる?

赤い点での表示は・・・・・・・・こちらに敵対して行動している対象!?

進もうとしている方向から ギャワッギャギャッギィーャッなんて声が聞こえてくる。

背の高いいくつかの木が揺れてるように見える、猿っぽいのでもいるのか?

と、思ったが甘かった、木々を揺らして姿を見せたのは羽を持つモノ。

こちらでなんて言うのかは分かんないけども、あれは前世のファンタジーでは

定番の魔物の一種、ハーピーと呼ばれてたやつじゃないだろうか。

人間の女性の上半身で腕の部分が羽、下半身はまんま鳥のソレってやつだ。

大きさは神鳥よりちょっと大きいな、2mくらいありそう。

そいつらが、ワッサワッサと木から飛び立ちこちらに向かってくる。

一緒に遊びましょうって感じじゃないよなぁ、MAPで赤く表示て事はまず間違いなく敵。


ソロで移動中に敵、それも複数相手で

「絡まれ(アクティブな敵に知覚され攻撃される事をいうゲームスラング)」かよ、

敵の強さがわかんないのに戦闘とか冗談にもならねぇぞっと。

やってたMMOでだったら即逃げ決定の状況だな。

しかしここではエリアチェンジはできるわけもなく、

HP(ホームポイント)帰還(リターン)の呪文も使えない。

ひたすら障害物を利用して距離が開くように逃げるしかないな。


・・・・・相手の強さがわかんないままだったらだけど。

こういう時のために荒野から用意しておいたマクロを起動する。

一番手前のハーピーらしきものをタゲって [調べる]コマンドを使う。


「 グレイハーピー LV68-- 」


ふむ、LV68か、俺のLVと判断基準が同じでその値って事だよな。

て事はゲームでなら経験値すら入らないような雑魚のはず。

全部が同LVとは思わないけど群れである以上極端な差はない可能性が高い、かも。

それなら試してみるにはちょうど良いのかもしれない。


一応俺だって、もしも敵がいたら、襲われたらってのは荒野でも考えていた。

色々と、そう盗賊に襲われたら? 獣が、魔物が、いきなり現れたら?

騎士団的な人に不審者と思われて捕まりそうになったら?


多様な状況に対して、自分の安全を確保できるソレは

俺のお得意のやり方だった。


この世界でソレが通用するかどうか。

この世界での始めての戦闘開始だ、気合を入れ。

近づいてくるハーピーのうちの中心付近にいる奴にターゲットして、

自分の能力を試す機会が来た訳だ、焦らず準備しておいたマクロを起動させる。



詠唱短縮スキルを最大限までブーストしてある俺の詠唱は早い、この魔法で約2秒弱。

魔法の射程がほぼ視認範囲という事を考えると相当の速さで近づいてこないと

こちらに攻撃をする前に魔法の方が先に発動する。


範囲睡眠(スリープス)II !!」


ポワワワ~ンッ と気の抜けた効果音がしてエフェクトが対象に降りかかる。


そして補助魔法スキルとMND、INTを一番に強化していた俺の範囲睡眠に

奴らがレジストできようはずもなく、

ハーピーの群れは空中で動きを止め、ボタボタと眠ったまま森へと落ちていった。


とはいうものの、初の戦闘に心臓はバクバクいってる。

実際には相手の魔法抵抗値がどのくらいなのか、やってみなけりゃ解らない訳で。

種族として睡眠に耐性があったりしたらレジストされてたかもしれない。

レジストした個体がいた場合は重ねがけか、

別の行動阻害系魔法で間を取る必要があったはず。

今回はこのまま知覚範囲外に離れるのが一番安全だろうと思ったので

神鳥に急いで山の方へと向かってもらった。

どうやら睡眠の深度はかなり深く入ったようで

落ちた後にも起きて追いかけてくるハーピーはいなかった。


えっ? ちゃんと倒して素材の剥ぎ取りとか?

無理無理、森の中に降りるって選択肢がまずないし、剥ぎ取りなんて

やった事ないのにいきなり出来るとも思えない。

血抜きとかうろ覚えの知識で出来るもんじゃないだろうからいまの処はパス。

やるとしたら安全な場所で試行錯誤できる余裕がないとなー。


ゲームでは倒した時点で素材になって(アイテムリスト)に勝手に入ってたんだけど

俺自身のステータスやスキル、所持してた装備品と違って 

対象がこっちの世界のモノとなると

こっちの世界の法則に縛られるみたいだからなぁ。


荒野で小水球で出した水が、出した後は地面にゆっくりと染み込んでいった様に。

ルピスがこっちの世界に現れてからは自分の意思があるように見える様に。

おそらくこっちの世界のものを対象にして使った魔法も効果が違ってくるはず。

余裕があれば睡眠の効果時間とかも見ておきたかったけどね~。


そうして俺はひたすら神鳥に運ばれて山の見える方へと向かうのであった。





 





初戦闘でしたWやってたMMOでは弱っちい雑魚でも多数に「絡まれ」ると

簡単に死ねたので、そういう時の対処が出来る様になるのが初心者卒業のラインだったような気がします。

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