3話 人形遊ばれ
はぁ~‥‥‥、だだっ広い荒野におっさんが一人、さみしいねぇ。
最初の興奮がひいて少しばかり冷静になったのか、
これまで感じてなかった一人きりってのが
地味にのしかかってくるなー、じわじわと。早いとこ会話できる相手を見つけないと
煮詰まっておかしくなっちまうな、いつまでも独り言ってのも悲しすぎるわ。
‥‥‥‥‥‥っと、そうだ、覚えてた魔法やらスキルが一通り使えるんなら。
敵がいない今のとこ、テイマー職の魅了してペットにするスキルは無理でも、
サモナーの召喚とか、人形使いの自動操演とか
竜騎士の飛龍呼び出しとか使えるんじゃないか?
ネクロマンサーは‥‥‥‥保留だな、アンデッドやデーモン系を呼び出しても
会話が上手くできる気がしないしな、うん 実物出てきたら泣く自信あるし。
と、とりあえず大人しいので試してみよっと、えーと まずは‥‥‥‥‥‥
アイテムから自動人形を出してっと、60cmくらいか意外と重いし、大きいな。
んで‥‥‥‥‥‥、スキル自動操演、発動、従者ノ型 守護ノ神官っと。
おおーっ光のエフェクトに包まれて魔力が通ったな、
見た目が人形から生きてる子供に変わっていって‥‥‥。
そこにいるのは金髪ロングのぽってり腹体型の幼女人形。
装備はモーニングスターに金属盾、青いローブか。
ぼーっとしてるな、「おーい、ルピス 聞こえてるか?」
ぴくんっ と反応した、こいつの名前はルピス、
職業人形使いの時の俺が使役する自動人形。
ゆっくりと瞳の焦点が合ってくる、見た目はそのまま小さな女の子だな。
設定ではホビットに似せて作った人形だったんだけど、普通に人の子供だな。
耳がちょっと尖ってたりはするけど。
「‥‥‥‥ますた ?」
こてっと首をかしげて聞いてくる、可愛いな、おい。
「おお、わかるか 俺だよ」
「‥‥‥‥‥‥」
ん、なんか 表情が訝しげだな、ジト目ってやつか、なんだよその反応は。
「ますた、みみ ない むね ない しっぽ ない へん」
ああー、そっかこいつの知ってるマスターは♀猫人なんだよな。
「でも まりょく いろ おなじ ますた ?」
ふーむ起動時にMP使うけどそれが判定材料にもなってるのかな?
「そう、見た目は変わったけどお前のマスターだよ、ルピス」
「んー ‥‥‥‥‥‥」
微妙に距離をとったまま、なんか考え込んでるルピス。
「んー、んー、うごく ない いい?」
よくわからんが頷いてじっとしていると、じりじり近づいてきてから
体重を後ろに残していつでも逃げれる体勢でそーっと足先で俺のブーツの先の方を
ちょんちょんっとつついてくる、何がしたいんだ、こいつ。
むふー となんか鼻息荒く、腕組みして満足そうにしてる、ああ それでいいの?
こっちが攻撃しないって確かめたかったのかな?
「ん、ますた。」
服のすそ握ってドヤ顔ですか 和むわ こいつ。
ゲームの時は決まったセリフしか喋れないし、融通の効かないバカAIだったけど
こっちでは全然印象が違うな、いや、印象じゃなくてほんとに違うんだ、きっと。
グニッ 「ますた しっぽ ちっちゃい♪」
ルピスさんソレはしっぽではありません、お願いします 放して下さい。
痛いです、お前のSTRってマスター基準にしてんだから 痛いんだって本気でぇっ!!!
「ぎゃあああああああああっ、ちっちぎれるううううううっ」
とりあえず、しっぽや耳、胸などを捜さない様に強く強く命令しましたよ。
やっぱバカなのは変わってないんじゃ‥‥‥、し、信用してるよ、ルピス。
‥‥‥‥飛竜とか呼び出したら、かじられるんじゃないだろーな、なんか恐ろしい。
頭の良いやつっていうと呼び出せるのは‥‥‥、リッチとかデーモン?
戦闘時ならともかくお供にして一緒に歩くって、はたから見たら悪役っぽ過ぎる。
それなら、むしろ多少派手でも召喚ガールズの
鳥女とか雪女王(S)とか雷娘(束縛系)とか巨人姫(ドジっ娘)とか
炎后とか水巫女‥‥‥
多少じゃないな、派手すぎるし、
こっちでの性格も読めない‥‥‥、というか絶対地雷だろ、こいつら。
ま、まぁ まずは一人づつゆっくり信頼を深めるべきだな。
と、いう訳で俺は自動人形のルピスと二人で再び荒野を歩きだしたのであった。