14話 もうどうにでもな~れ~
走る、MAPに表示されている黄色の点に向かって。
普通に走ってもかなり速い、イリーやシング達からは間にある木々のおかげで
もう見えなくなったはず、なので[移動速度倍化]を発動する。
バキバキッと身体に当たる枝が折れて、ブチッと絡んだ蔓が千切れる音がするが
今は構っていられない、急げ、急げ、急げっ。
こっちに向かって逃げてくる白点表示のエルフがいるけど
速度がバラバラでこっちから見て奥にいるのは黄色表示の点とまだそんなに離れていない。
ホーンドベアもゆっくりとだけど移動していてその場で食事している訳じゃなさそうだ。
喰われていなければなんとか出来る可能性もある、・・・・・と思いたい。
正面からこちらに逃げてくるエルフがいるが、説明する余裕もないし、
遠い間合いから足に力を入れて三角飛びの要領でもって、
エルフの上の空間を移動できないかと考えてて[アレ]を思い出す。
戦闘技能の[ジャンプ]。
竜騎士の戦闘技能のあれを使えば・・・・・・。
発動した途端に体が勝手に反応して動いていた、スピードに乗ってた所為なのか
ゲームの時は純粋に上方向に飛んでたはずなのに斜め前方エルフの頭の上30cm位の所を
とんでもない速さで通過した、エルフは吃驚して腰を抜かしたのかへたりこんでるが
今は無視してホーンドベアに向かう。
さらに[ハイジャンプ]を使って二人のエルフを飛び越えた処で
ホーンドベアに追いつかれそうになっている女性のエルフが見えた。
だけどなんか妙な感じだな、追いかけられているエルフがあまり焦っていない様に見える。
緊張はしているんだろうけど、後ろをチラチラと見ながら気にしつつも速度を上げてる感じがない。
大きめの木を上手く使って逃走経路をホーンドベアにわざと見せながら
左右に蛇行して・・・・・・、ああ 他を逃がす為に時間稼ぎしてるのか?
おかげで他のエルフは結構な距離が稼げているようだ。
この位置関係なら見られたとしてもこのエルフ一人だけだな、と考えて直ぐに
[スーパージャンプ]を発動してホーンドベアが見える上空に跳び上がる。
落ちながら、ややホーンドベアの上を越えて後ろ側に着地しそうな状況、跳び過ぎたか?
もう一匹奥にいるし、ここで時間はかけられない。
かなり高く跳んだ所為でエルフからも見られてない、と思うので遠慮なく
アイテムリストから取り出した手裏剣を[不意打ち(バックアタック)]を発動してから投げ降ろした。
シュドンッ と、くぐもった音がしてホーンドベアの後頭部から入っていった手裏剣は
胸の下あたりを突き抜けて地面に突き刺さったらしく地中に潜ってしまったようだ。
ホーンドベアはしばらく立ったままでいたが一発で絶命したようで
そのままゆっくりと前のめりに倒れていった。
空中で投擲なんかした所為でバランスを崩してしまった俺は
バキベキと木にぶつかりながら落ちていきなんとか着地した。
いきなり落ちてきた俺と倒れたホーンドベアを眼を丸く見開いて見ているエルフがいるが
そっちは後回しにしてMAPを確認する、まだ近くに一匹いるはずなんだが・・・・・?
右手前方見えてるはずの位置なのにいないって・・・・・、ああ、このMAPって同じ位置でも
建物とか崖とかで上下の位置関係にあると重なって表示されるんで
クエストとかでも人を探すのに紛らわしい事があったっけ、という事は・・・・・。
いたっ!! さっきのよりは小さめって言っていいのか?それでも2m近くのホーンドベア。
木の上に登ってこっちを睨みつけているそいつが、飛び降りてきた。
いきなりの攻撃になにも武器を装備していなかった俺は
慌ててホーンドベアの飛び降りての突進から逃げる様に右に転がり距離を取ろうとしたが
流石にLVの高い魔獣だけあって運動能力も良いらしい、直ぐに俺に向かって追撃をかけてきた。
至近距離からの角の勝ち上げ、左右の長い爪の振り回し、合間に噛み付き。
どれも一発で腕や足を千切って持っていかれそうな迫力だが・・・・・・。
ヒラリヒラリとその全てを回避、回避、回避と避けまくる。
常時発動戦闘能力の回避は盗賊や忍者、踊り子のLV上げでカンストしてるし
ソロで行動する事の多かった俺は回避装備も廃人LVに近い物を所持していた。
避けまくりながらアイテムリストから選んだいくつかの装備に切り替えた俺にとっては
戦闘技能での回避系スキルを使うまでもなくホーンドベアの攻撃を
ほぼ全て回避していた、いくつか当たりそうなのもあるかと思ったけど
ステータス値のAGIが高過ぎる所為と、[受け流し]が勝手に発動してしまったりして
被ダメージ0が続いていた。地味にパッシブスキルのカウンターが発生してたりもした。
人を襲う以上しょうがない、倒させてもらう。
攻撃系のスキルもどうやら全て使用可能みたいだけど、多すぎて選ぶのが面倒だな。
ああ、武器によって使用不可のはグレー表示になってんのか。
こっそり装備した短剣だと威力の高いので・・・・・、[踊る刃]か。
ゲームの時は使用に一定の制限があっていつでも直ぐに使えるって訳じゃなかったんだけど
こっちでは関係ないみたいだな。
発動した[踊る刃]でホーンドベアは胸部を中心に切り裂かれ倒れた。
んで、消えた白点だよ、急がなきゃいかんのは。
位置は確か、こっから少し南の方で・・・・・・。
近づいてくるエルフがMAPでわかってはいたが今は無視して走り出す。
急いで蘇生しなきゃ誤魔化しようがなくなっちまう。
おおよその位置に近づいた所で周辺を[見て]みるとターゲット出来るモノがあった。
状態は死亡だけど、まだ間に合うはず、すぐさま[蘇生]と[蘇生II]をかける。
死んでたのは二人のエルフ、MAPで消えた様に見えたのも白点が二つのようだったし
周りを[見て]もタゲれるのは自然物ばかりなのでおそらく他にはいないだろう。
一応、後でエルフの人に確認していた方がいいか?。
「う、ううっ・・・・・・。」
「あ? イタタッ」
[蘇生]をかけたエルフ達が意識を取り戻したようだ、が まだHPが戻っていないみたいだな。
動かすにしても治療はもう仕方がないか、はぁ~。
魔法は出来るだけ隠したかったんだけど、目の前で痛がってるのをほっとく訳にもいかんしなぁ。
「おーい、今治療すっから、ちょっとじっとしててくれよ~。」
「えっ?」
「どっちも[治癒II]でいいか、っと再詠唱可能時間も伸びてるんだっけ
こっちの人には[治癒III]っと、過剰回復になるけど まぁいいか~。」
「ええっ?!」
「お、俺たち助かったの?」
「いや~、あたりどころが良かったんでしょうねぇ。
怪我はしてましたけど気を失ってたみたいですよ。」
「ホ、ホーンドヘアに襲われて生きてたなんて・・・・・。」
「よく覚えてないけどいきなり黒い影が目の前に出てきて弾き飛ばされた様な・・・・・。」
ですよね~、お一人はほとんど首が千切かけてたし、もう一人も胸と腹に穴空いてました。
どうみても完全に死体状態で、それを他のエルフがちゃんと見てなきゃいいんだけどな~。
出来れば怪我して気絶してたのを治療した程度に思ってくれればまだなんとか・・・・・。
「あの、あなたは・・・・?、他の人はどうなったのかわかりますか?」
「そうだ! それにホーンドベアは? みんなを追いかけて行ったんじゃないのか?」
「ああ、他の方は無事なようですよ、ほら 戻って来られた様です。」
さっきからMAPで白点が近づいて来ている、緑点はシングとペンタか。
それの近くにいる白点はイリーだろうな、こっちに合流する様だけど、まだ少し遠いか。
一番に戻って来たのは近くにいた、さっきの時間稼ぎしてた女性のエルフさんか。
木々の間から音も立てずに出て来るとか、ちょっと怖いっすよ エルフさん。
ちょっと前からこっちを観察したなかったですか?
「お前、何者だ? 流れの傭兵か? その者らは死んだと思ったが・・・・・、治療したのもお前なのか?」
どういう訳か、直接に向けてはいないものの、俺の足元あたりに短弓を構えたままで
質問してくる褐色の肌の銀髪のエルフ、他の人は見た感じ北欧系って感じなのに
この人だけ異質な様に思えるんだが、イリーも白人系だったけど 俺の偏見だとまずいしなぁ。
人種構成も大まかなあたりしかシングには聞いてないし・・・・・。
「ハニャ、この人が僕たちに治療魔法をかけてくれたのは間違いないよ。」
「うん、意識が戻って身体中が痛くて動けなかったのを治してくれたんだよ。」
「・・・・・そうか、ホーンドベアを一撃で倒してしまうような戦士が治療魔法まで使えるとは
思ってなかったので変に疑ってしまった、申し訳ない。」
構えていた短弓から矢を外し、俺に対して深々と頭を下げるエルフ。
「ホーンドベアを倒したって? 一撃でぇっ?」
「ああ、この目で見たから間違いない、あんな投擲術は初めて見た。」
「じ、じゃあみんなは無事なの? 」
「私が見ていた範囲では他の者は距離を取って離れられていた様だ。
イリーを探しに行くのは後回しになるが一旦村に戻った方が良いかもしれん。」
「ぼ、僕達なら大丈夫です、早くイリーを探しに行かないと・・・・・。」
「そうだよ、せめて亡骸だけでも村に連れて行ってやらなきゃ・・・・・。」
「しかし、状況がわからないと、どうしようもないぞ。ホーンドベアは一匹だと
思っていたのが二匹だったし、他にもいるかもしれん。
一度、無事だった者も確認しないと・・・・・。」
「あの~、確かにホーンドベアはもう一匹いましたけど、もう死んでますし
そのイリーさんっていうエルフの人も無事で、こっちに向かってますよ。」
「「「えええっ?!」」」




