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アムリタはめぐる  作者: おかのん
第2章
14/28

『アイディス』についてとティナにとっての奇跡と

 アイディス。


 ティナを蝕む病魔の名である。

 免疫不全を引き起こすウィルスによる感染症。空気中での生存が不可能であり、血液その他分泌液による感染のみの、極めて感染力の低い病である。


 ・・・それ故に、全く研究が進んでいない。いや、その存在さえ、カーリュッフの誇るカーリマンズ学院が数年前にやっと確認したばかりなのである。


 最初の検体がティナであった。

 本来ならば、ティナは死ぬまで研究材料として扱われるはずだった。なにしろ、未知の病気の病原体保持者だ。なんとでも理由をつけて隔離出来たのだ。


 それを許さなかったのが、トルク=カルファト。教授である。

 血液による感染であるとあたりをつけそれを証明した事と、ティナがカルファト教授の教え子であった事。そして、その感染源がトピライカの聖五種族の一種、レッサーフェルプールによるものとつきとめた。


 レッサーフェルプールは、猫と人をかけ合わせたような外見を持つ上、美しい外見を持つ者が多い。エルフの持つ人形のような無機質な美しさとは違い、肉感的で、嗜虐心を掻き立てるようなところがある。それが災いし、愛玩用として密猟が行われていたところを、カルファト教授がつきとめて憲兵につきだしたのである。そして、前例のない被害者であるレッサーフェルプール達の今後をどうするかという段になって、白羽の矢が立ったのが、とうの教授というわけであるが・・・

 それと並行して広がっていた、原因不明の病があった。基本的に普通の病気の治りが遅い・・・というか治っていかないという形である。最初は『XXが治らない』『OOが治らない』という話なので、結びつく事がなかったが『病気が治らない病気』であるとしてデータを纏めなおすと、そのくくりが正解である事が証明された。

 さらに、そこにもカルファト教授が関わっていたことから、レッサーフェルプールの顧客と、件の罹患者が重なる事が分かり、事実が発覚したのである。


 しかし、その事実に気づくのが遅かった。

 ティナは、レッサーフェルプールを・・・ 彼女らの外傷を治療しようとし・・・ 『人』に憎悪を持つ彼女らは、ティナを傷つけた。

 彼女らの爪に残っていた血には、アイディス=ウィルスが含まれていたのである。


 罹患者が他にもいたのに検体一号となったのは、その事件以後に正式にアイディスの存在が認定され、性交接触による罹患であるという事が明るみに出る事を嫌って、検体登録手続きを行ってくれる罹患者が出なかったためだ。現在はいくらか登録されている。検体となる事で受けられる治療の優先などの特典がなければ、今だいなかったかもしれない。


 アイディスとは、いわゆる『免疫不全ウイルス』のことだ。

 ウィルスは基本、人体に入り込んだ場合、その環境を生かして増殖する。アイディス=ウィルスはその際、自らがけして強じんな生命力を持つわけでも、莫大な感染力を持つわけでもない代わりに、人体の免疫力を破壊してしまうのである。

 ルールそのものをひっくり返してしまう、ジョーカーのようなウィルス。とでもいうのか。


 この病を治療する方法は、今だ見つかっていない。



 ・



 泣きじゃくるヴァスと、困惑するファローが、ティナを抱えて戻ってくる途中、リドルと鉢合わせをした。


「リドル! て、ティナがぁぁあああ・・・」

「すまない、一通り診てみたのだが、さっぱりわからん」

「ヴァス、落ち着け」


 リドルもこの時点では何が何やらだ。いきなり血を吐いて倒れたというだけでは、絞れる原因も限度がある。

 

「・・・いざという時のために、この町の医者がどこにいるか、確認をしに行くところだったんだ。

 ここからなら、二アプローチス・インの方が近い。寝かせておいてくれ。俺はそのまま医者を呼んでくる。・・・まあ、役には立たないだろうがな。それでも生食の一つでもあった方がいい時もあるし、俺達よりも事情を知ってる可能性がある」


 実家である宿のほうで事情を知らないという事はあり得ないだろう。なら戻った方がいい。

 病院の場所は聞いてある。とにかくどういう病気なのかの判断が出来ない事には手の施しようはない。


 

 ・



 ティナの父に聞いた病院は、聞いた通りにそこにあった。そして、ティナの名を出すと、医師は即座に飛び出した。

 そして、二アプローチス・インに走るまでに、そもそもあの病気はなんなのかを聞く。


「免疫不全!!?」

「うむ、そう聞いとる」


 レッサーフェルプールからの感染である事と、今現在、首都アゼルカーリマンズ学院で治療の研究が始められたばかりであることなど、知る限りの事を聞かせてくれた。


 免疫不全という新しい形の病。その感染力の低さと感染経路の限定、感染源を早めに抑えた事から、社会に与える影響はごく小さくて済んだ。だが逆に、その小ささから、研究予算を都合することが難しかった。

 ティナが有効な治療を受けられる可能性は少ない。

 


 リドルは。

 笑い出したい気分だった。


(ヴァス。お前にとってよりも、彼女にとって、これは奇跡なのかもしれねえぜ)


 


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