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出会い
彼との出会いは突然だった。
*
城の生活は暇だった。
否、煩わしかった。椿の世話役になった女性たちが。 何故そんなに騒ぐ必要があるの?と言うくらいに、城内の噂話に一喜一憂したり、 暇さえあれば
「椿様、何かして遊びましょう」
と、主である椿にねだるように誘ったりするのだ。
都の高貴な女人たちは、皆この様に過ごしているのだろうか。
椿は静かだった博巳の城が恋しくなった。
そして椿は彼女たちを遠ざけるため、いつもわざとこう言う。
「わたくしは絵を描くわ。あなたたちもいかが」
彼女たちは貝合わせや絵札遊びをなら得意だ が、絵などという彼女たちから言わせれば”高尚”な趣味には全く興味がなかった。
よって、いつも椿のこの一言で退散するのだった。




