55/61
泪
稲穂が風になびく初秋
─────羽間の城に……否、羽間の城下中にも渡り、衝撃が走った。
始まりは義影の発したひと言。
「我が妻を決めた。皆を集めよ」
家老の爺をはじめ、側近達は一瞬呆然とした後、慌ただしく城内の家臣達を収集し始めた。
「「「将軍の奥方様がお決まりになる!皆の者集まられよ!」」」
バタバタと城内が騒がしくなる中
その知らせは、もちろん当事者達にも…
───バタバタバタバタ
「足音が…なんだか騒がしゅうございますわね、姫様」
椿と染乃は部屋で茶を飲んでくつろいでいた。
「本当に……一体何の騒ぎかしら」




