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戦国恋歌  作者: Maaa
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「──だが、これは一計にすぎない」




───…え?





「…………景政様?」


景政の言葉と微妙に変わった声の響きに、椿は不安を覚えた。





「あの男は何を言いだすかわからない。だが、それにいちいち従うわけにはいかなくなった」




景政は少し体を離し、光りのない椿の瞳を見つめる。




──────…景政様?


「私は初めて欲しいものができてな。面倒なあの男に関わってでも、欲しいものだ」



「……欲しい…もの?」



景政の声が呪文のように椿に絡まる。


先程までとは違う



密事を囁くような、低く艶のある響き…




そう、と景政は椿の頬に手をあて、指で唇をつーッとなぞった。




「この柔らかい唇も、紡ぎ出される歌声も」






景政の吐息が頬にかかる。





「お前の愛も────椿自身も。全てが欲しくなった」



頬をすべり、唇が重なる。



だから、と景政は続けた。



唇は触れたまま。






「私を動かした責任は取ってもらう」




突然唇を押し当てられ、隙間から舌を入れられた。


「────…ッ!?……んぅ…」


頬を染めてうろたえる椿に、景政はクスッと笑って唇を離した。



「いずれ……絶対にな」



「…ッ景政様!!」



「怒るのもよいが、そろそろ戻らねば染乃が人を呼びに行ってしまう」


ハッとして椿は頷いた。



景政に導かれ、染乃の声が聞こえる所まで行く。





手を繋いだまま、椿は独り言のように呟いた。







「………わたくしもあります。欲しいもの」



「…………」




「“椿”を拾ってくれた方です。わたくしの目を…気づいてくれた方」







風に吹かれるように宿命(さだめ)に流されていた自分を、見つけてくれた人。






「景政様の全てが欲しい────。あなたと…」






共に生きてみたい。






「……わたくしは、諦めなくていいんですね?」


祈るように、繋いだ手にギュッと力を入れた。




……諦めたくない…ッ









「────ああ。」






自信に満ちた声と、力強く握り返された手。


椿は微笑む。



不思議な安心感。






ゆっくりとその手を離して、染乃の待つ方へと歩き出した。

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