三
手のひらをスッと握られ、指先に柔らかな─────いつもの感触がした。
「久しぶりだな」
「………はい」
「宴の日以来ゆえ………三ヶ月ぶりか」
「………………そうですね」
―――正確には、ひと月。
もっとも、あれは椿がたまたま通りかかっただけだから、景政は知らない。
「今日はご機嫌が麗しくないようだな」
「…………いえ」
機嫌が良くないと言えばそうかもしれない。
でもこうして景政に久しぶりに会えてうれしくもある。
椿は何と答えればよいかわからなかった。
「理由は?………私か?」
「……………そう思います」
椿としては真面目に考えて神妙に答えたつもりなのに、景政はクスクスと笑いだした。
「失礼ですわ、景政様」
「フッ…ハハッ……いや、失礼。…それはそれは…私は一体何をしたんだろうな」
からかうように言う景政に、椿は頬を染めてツンと後ろを向いた。
――――琴菊様にはあんなにお優しく接していらしたのに…!
「知りませんわ」
「椿」
「ご自分でお考えあそばせ」
そう言った瞬間、背後からギュッと抱きしめられた。
ふわり、と心地よい景政の着物の香りがする。
「わからぬ。教えてくれないか」
絶対一秒も考えていない。
椿が無言でいると
「……………ッ……!」
生々しい暖かさが首筋を撫でた。
「椿」
「ぁ…ッ」
「教えてくれないのか?」
景政は楽しげな声で椿の耳元に囁く。
首筋や耳を舌先で舐め回し、
華奢な身体が逃げないように抱きしめる力を強くした。
「…ゃめッ…景政様…ッ」
「聞こえない」
ツ――――……
「…ぁ…ッ」
「早くしないと………そろそろ染乃が騒ぎだすぞ」
―――こんなのズルい…
そう思ったが、男の力には敵うはずもなく、声が漏れるばかりだった。
「…ッ…ひと月前…」
いつの間にか、抱きしめられていたはずの景政の右手は、椿の着物の合わせの間から中に侵入していた。




