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八
「佳月夢想」
遙か昔に完成されたとされる、和歌と弦曲が記された“弦歌譜”。
その中に唯一の歌曲として混在している「佳月夢想」は、表向きはあまり知られていないただの恋曲。
しかし━━━━━━…
『吹き抜ける風、揺れる花草
沈む夕日、ゆらめく灯火
夜の香り、澄んだ星空
輝く佳月の美しき…
伏せし瞼、描く人
袖を濡らすも、かの人はいずこ
浅き夢に、募る想い
今宵も佳月の美しき…』
古曲の教養が深い者が知る、もうひとつの「佳月夢想」の意味
それは、「双曲」
「佳月夢想」とは、今は昔平安の月夜の晩に、女が男を想って歌った曲。
「月影想歌」の双曲とされる古曲だった。




