36/61
四
「管弦もよいが、いまひとつ何か余興が欲しいのう。……景政、そなた何かやらぬか」
尊大な態度で義影は息子を名指しした。
「………何かと言われても、私は笛などしかできませんが」
たいして気分を害していないような声。
「笛か…まぁそれでよいわ。聞かせてみよ」
「………はい」
どこか笑いを含んだ返事。
―――…景政様?
室内は静まりかえる。
━━━━━♪ーーー…
耳に心地よい、雅な笛の音。
笛を吹く彼の姿に、誰もがため息をつく。
椿はひとり目を閉じて、音に耳をすませた。
ゆるやかに紡がれる、彼の旋律
――自信過剰かもしれない
けれど
もしかしたら…
景政は、わざと笛にしたのかもしれない。
椿にはわからない、目で見る何かではなく
見えなくても、耳に直接響く笛に。
椿のために…。




