35/61
三
次の日
城では美和から来た琴菊の、歓迎の宴が催されていた。
椿のときにはなかった宴。
楽しげな管弦楽で皆が興にふける中、琴菊よりも下座に座る椿は人知れず溜め息をついた。
宴の席に彼は居ない。
もしかしてと淡い期待をしていた自分がいた。
パチパチパチパチ…
管弦楽が終わった時だった。
「遅れてしまいましたが、参加してもよろしいですか?父上」
――………!!
「ふん…呼んだ覚えはないが、まぁよかろう」
気配からして、景政は椿の斜め向かいの上座に腰をおろした。
「わしの息子の景政じゃ」
突然現れた景政に見惚れていたのか、琴菊は慌てて頭を下げた。
「み、美和より参りました琴菊と申します…!」
椿も続ける。
「……薄巳より参りました…椿でございます」
頭を上げると、気のせいか…景政と目があったような気がした。




