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二
琴菊たち一行が去った後
「全く…!失礼にもほどがありますわ!成り上がりの姫ふぜいが、姫様にあんな口を叩くなど許されることじゃございませんわ!」
「………」
「姫様も少しはお怒りなさいませ!!」
「………そう‥ね」
染乃の怒りとは反対に静かな椿。
椿は今、怒りよりも琴菊に対する驚きのほうが大きかった。
――……私と同じくらいの年なのに…
彼女は「政略結婚であること」、「縁談にはもうひとり候補がいて比べられること」…このふたつをわかった上でここへ来ていた。
そして、自分が選ばれるという自負も持って。
かたや景政に恋焦がれ、国に帰りたいと願う自分とは大きな差だった。
そう
―――…自分ひとりのために国を捨てたわたくしとは……。
「願わくば……」
どうか……罪を犯した自分ではなく、彼女が選ばれますように………。




