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一
「お前は母上に似て見目良く美しい。なにより賢い娘じゃ。お前ならわしも恥じることなく送り出せる」
国主の父はうんうんと頷きながら話す。
しかし椿は返事をしない。
「椿、どうじゃ。考えてみろ。良い話であろ う?」
嬉々として話す父に、椿は沈んだ声で言った。
「…確かに、我が国としては良い話ですわ。でも……」
「なんじゃ」
「……―――本当にいいんですか?ちゃんとあちらにはお話されたんですか?…………わたくしの、病のこと」
話すにつれて、静かに目を閉じる椿。
ーーーーーー椿は目が見えない。




