25/61
五
空気の澄んだ深夜
今夜は満月。
虫の音が耳に心地よく、月明りの下で椿は起きていた。
頭が痛くて眠れないのだ。
体もだるいが、薬師には病ではないと言われ た。
近頃、どうすればいいのかわからないことだらけだった。
――――………?
――……今……何か音がしたような…
――――――……
―――……
音はゆっくりと近付いてくる。
「……!?」
椿は自分の耳を疑った。
―――…嘘よ……聞き間違いだわ…
だって…
その音は聞き覚えのあるもの
椿がこの一月以上、ずっと聞きたかったもの だったから。
――――…景政様…!




