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四
日に日に椿は食が細り、好きだった絵も描かなくなっていった。
もう一人の嫁候補はまだ来ない。
忘れようにも、いつも景政と会った日のことを考えてしまう。
「姫様、少しはお食べになりませんとお体が…」
「染乃………わたくしはもう……博巳に帰りたい…」
「姫様!?」
椿の弱音に染乃は驚いた。
――………。
「…わかっているわ。無理よね今更……」
椿はあきらめたように小さく言った。
涙は見せない。
染乃にいらぬ心配をかけたくなかった。
―――…気持ちに蓋をする方法を、誰でもいい から教えて…
こんな乱れた……自分でもわからない気持ちのまま景政の義母となり、いずれ訪れる彼の奥方を迎えるくらいなら…
……消えてしまいたい。




