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二
半月の輝く深夜。
椿は布団の中、空を見つめ考えていた。
―――……もしも…もしも、私が選ばれて義影様の妻になったら……
「………わたくしは…あの方の……義母」
――…そうなったら、私は義影様が死ぬまでこの城にいなくてはいけない……
城の中で何度顔を合わすことだろう。
それだけじゃない。
―――…景政様が……妻をめとったら……。私は 一体どれだけの間…お二人の声を聞くことになる?
睦まじく寄り添うであろう姿を、この目で見らずに済むだけましだろうか。
「――…嫌…」
どうしたらいいのかわからない。
忘れたいのに忘れたくない。
考えたくないのに思い出してしまう。
あんなに短い間に会っただけなのに…
傷のなかった椿の心に、景政は深く何かを刻み 込んでいた。




