表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国恋歌  作者: Maaa
20/61

患い

「…………」




日が沈み始めても、椿はその場から動かなかった。 見兼ねた染乃が声をかけた。


「姫様…」


「あの方、義影様の息子だったのね…」


「はい……気付きませんでした」


「わたくしもよ。そうよね…少し考えればわかることだったわ」



昼間から仕事もせずにここへやって来た


少しぞんざいな物言い


品の良い香



なにより、貴賓用のこの離れに通されたこと。ここは義影か関係者数名しか入ることはできない。


―――…私…どうかしていた…。



目が見えないことを指摘されて


初めて殿方に触れられて…なぜか胸が高鳴っ て。


初めてのことばかりだった。




染乃はしばらく黙っていたが、あきらめたように話始めた。



「羽間の義影様の息子といえば、大国の跡継ぎ候補でありながらも戦に未だ一度も参加せず、 日がな一日城にこもっていらっしゃるという… その…、あまり良い噂のある方ではいらっしゃいませんでした。でも、噂とはあてにならないものなのですね」


「どういうこと?」


椿の質問に染乃は首を振った。


「噂にあるような、無能な方には見えませんでした。姫様も感じられませんでしたか?」


「……………ええ」


「それにとても麗しいご容姿で」


「…染乃、あの方はどのようなご容姿を?」


「造りもののようなお顔立ちでいらっしゃいましたわ。殿方には失礼かもしれませんが、とてもお綺麗で……ですが、お目元は涼しげというよりは鋭く………それから、その」


「何?」


口ごもった染乃に先を促す。


染乃は迷って、小声で言った。


「その……あの方はなんだか…何か違う空気を纏っていらっしゃる気がしました……。ご容姿のせいか、佇んでいるだけでまるで支配者のようなものを感じましたわ………その…お父上よりも」




「――……そう」


―――……そんな方なら、きっと素敵な方とのご縁談があるはずよね。




目の見える


大国の美しい姫君と




「ありがとう染乃。もう何も聞かないわ」


「姫様…」


「なんだか疲れたわ……」


「もうおやすみなさいませ」


そうね、と言って椿は絵を描いた紙に手をのばした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ