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椿
「椿、嫁に行ってくれぬか」
「―――……」
突然請われた父の言葉。 椿は驚きを隠さずに目を見開いた。
―――嫁ぐ?わたくしが……?
「話はあの大国、羽間・巽の義影殿との縁談じゃ」
椿はさらに驚いた。
羽間の国といえば、今最も力のある国 五つに挙げられる大国。そんな所が何故このような血筋ばかりが自慢の小国に?
そしてさらに驚きいたのは、相手が巽義影ということ。
……――確か、御歳60を過ぎられたはず。
今年17になった椿と、その差は43。
……――政略結婚など、そのようなものなの ね。
椿は自分を落ち着かせるように納得する。




