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九
―――…ドクンッ
――――――…ドクンッ
心臓が大きく波打つ。
「…か……景政さ‥ッ!!」
椿は一瞬ビクッと震え、ギュッと目をつぶった。
柔らかな感触
指の先からゆっくりと下に降りてゆく、景政の唇。
震える椿の指先に、景政の愛撫が降る。
「………ッ……!」
彼の唇が手のひらまで着いたときだった。
ビクッ!!
暖かいモノが、椿の手のひらを舐めた。
「な…ッ、なにを…!」
椿は真っ赤になりながら、やっと手を取り返した。
「失礼。あまりに美味しそうだった故、舐め てしまった」
悪気のかけらも感じられない言葉。
「わたくしは食べ物ではありません」
憮然と言う椿に、景政はクスクスと笑う。
「そうだな。ではもう舐めないから、もう一度手を握ってもよいか?」
しかし景政は椿が答えないうちにスッと手を 取った。
「椿」
景政の低い艶のある声
――――…ドクンッ
再び心臓が鼓動した。




