16/61
七
「ところで、あなたは一体どなたなのです?」
「どなただと思う?」
「からかわないでくださいませ」
クスクスと笑うばかりで彼は答えない。
「目は全く見えぬのか?」
「え?……はい…景政様‥?」
唐突な質問に椿は戸惑う。 そして右手に暖かさを感じた。
「姫君」
椿の右手は今、景政に優しく握られていた。
「景政様…?」
離そうとした手をもう一度優しく握られた。
―――…ドクンッ
握られた手が熱い。
“ドクン”?
「姫君。私の顔はわかるか?」
「…いいえ…?」
――…何を言っているの?
すると景政は椿の手を引き …―――
「ぁ…ッ」
ビクッと手が震えた。
――…い、今…?
「ここは目」
「…え?」




