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三
バサバサッ!!!
突然吹いてきた風に、椿の描いた紙が外に飛ばされてしまった。
「あ…」
椿は紙が飛ばされる音のした方を見た。 染乃が慌てて拾いに行こうとする。
――……?
「待って、染乃。誰か来るわ」
静かな足音。
廊下からだ。
忍んでる風ではない。
一体……?
「失礼。椿を一枚拾ったのだが」
低音の心地よい声。
椿は声のした方を向いた。
「わたくしのものです。拾っていただいて有難うございます。風の悪戯で飛んでいってしまったのです」
「他にも何枚か?」
声の位置が高い。
椿は少し上を向いた。
「あ、はい。……でも外に飛ばされてしまったので、もう…」
「あの風ならば、そんなに遠くまで飛ばされてないだろう」
そう言うと、ザリッと男が庭に降りる音がし た。




