表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『お題はランダム』シリーズ

植物園で出会った貴婦人

作者: 瑞代 杏

お題

『水曜日』の『植物園』で『呼び止める』

含まなければならない言葉

『花』『心』『虫』

文字数

700文字(±10文字)




「あの、すみません」

 水曜日の植物園。

 いつも通りに見回りをしていた私は、先程から同じ植物を見上げていた女性を呼び止めた。

「はい。何でしょう?」

 女性が振り返る。

 整った顔を彩るスタイリッシュな眼鏡、ゆったりとしたカーディガンにストールを羽織った貴婦人の姿が私の目に映った。

「いや、特に用事があったわけではないのですが……先程から同じ植物ばかり見ているので。何か気になるものでもありましたか?」

「まあ、そうでしたか。気になるというものはないのですけど、植物って本当に素敵ですよね」

 女性は視線を外して、再び自分の背丈よりも高い植物を見上げる。

「素敵、ですか?」

 私も女性に倣って、青々と伸びる植物を見上げてみた。

 太陽の光を一杯に浴びて、伸び伸びと育つ植物。

 周りにも恩恵を与え、自らも存在を誇示するその様は、確かに素敵と言えるかもしれない。

「ええ。植物は本当に素敵なものです。花を咲かせては周りを楽しませ、実がなればそれを私達に与えてくれます。植物もまた、心を持って生きているものなのです」

「良いですなぁ。我々のような者にとっては何よりの褒め言葉です」

 私は素敵な事を聞かせてくれた女性に深々と頭を下げた。

「まあ、そう感じていただけたのでしたら嬉しいですわ。それでは、私はこの辺で失礼致しますね」

「はい。ご来園ありがとうございました。是非またいらしてください」

「ええ。また何れ……」

 軽く会釈をして、女性は出口へと歩いていった。

「はは、あんな感じの女性ひとに出会ったのは何年ぶりだろう。でもこれ――」

 私は軽く息を吐きながら、もう一度その植物を見上げた。


「異常発育したウツボカズラなんだよなぁ……食虫植物」

実は奇婦人だったというオチ(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 映像がない活字ならではのトリックですね^^ まぁいいじゃないですか。 いいこと言ってるんですから(*^_^*) 素敵な時間をありがとうございました☆
2011/10/17 22:49 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ