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7話~依頼~

「はいっ!こちらが新しい冒険者証になります。」

受付嬢さんにそう言われ、鉄製の黄銅色の冒険者証を手渡された。


「やったぁ!ようやく鉄製になったよ……」


「おめでとう、よく頑張ったな。」


「そうですよ、アリサさんは真面目に依頼をこなしてくれるって

依頼者さんからの評価もとても高かったですからね。」

レイスと受付嬢さんに褒められ、素直に嬉しくなる。


―――私がこの世界に来てから、二か月が経っていた。


依頼の合間に、この世界に慣れる為に様々な所を見て来た。

暮らしている区画内であれば、もう迷うことなく移動することが出来る。


この街、《魔法都市アンスリウム》は、この世界の中では割と治安がいいらしい。


実際、夜に出歩いていても襲われるようなことはなく

衛兵が定期的に巡回している。


日本の治安の良さを知っている私が暮らすには、最適な街だ。


その代わり物価は高いみたいだけど

ギルドの依頼を真面目にこなしていれば生活に困ることは無かった。


―――いや、レイスが手伝ってくれてなければ、路頭に迷っていたのは確実だろう。


そんなこの街にも、下層にはスラム街があるらしい。

水路を下っていけば辿り着く、とレイスは言っていた。


ギルドの人達、レイス、宿の女将さん。

色んな人達に助けられたおかげで、何とか生きている。

―――私は改めて、出会いの縁に感謝した。


「よしっ!じゃあ、今日は俺が奢ってやろう、アリサの昇格祝いだな!」


「おっ!いいの~?太っ腹だねぇ?」

私はレイスの横っ腹を肘で突きからかう。


「店は……丁度昼時だし、《黄金の噴水亭》にするか、あそこなら飯も旨いしな。」


「やった!あそこのチキンおいしいんだよねぇ♪」


私達は広場の一角にある酒場に向かった。

ここら一帯では少し値段は張るものの、味は断トツで美味しい。


心を躍らせながら、お店の扉を開けると、


「なによ!そんな言い方しなくてもいいでしょ!?」

と、少女の金切り声が聞こえて来た。


酒場のど真ん中で、少年が三人とお転婆そうな少女が一人いた。

腰まである青みがかった黒髪のツインテールに、碧眼の少女。


「お前……いい加減にしろよ!女のくせに!」


少年の一人がそう言い、少女に掴みかかる。

―――その様子を見て、私は体が勝手に動き出し、少年の腕を掴んだ。


「な、なんだよお前!引っ込んでろよ!」


「男が囲んでまぁ……恥ずかしいね。」

私は掴んでいた腕に力を込める。


「いっ!痛ぇっ!こいつ!女のくせに力つえぇぞ!」


「また言った。そういうの、私の世界だとセクハラって言うんだよ。」


私はそのまま、掴んでいた少年を店の外へ思いっきり放り投げた。


「このやろぉ!」


傍観していた二人の少年が私に掴みかかってくるが

腰に差していた木刀を抜く暇もなく、柄頭で顎を容赦なく打ち抜いた。


「あぐっ……」

少年達はそのまま白目を剥いて倒れ込む。


私はそのまま少年二人を引きずり、店の外に投げ出す。


「ふぅ……」

その際、少年達の冒険者証が見え、等級が《シルバー》だと分かった。


「うそっ!?これでシルバー!?」


(ランクと実力は必ずしも伴うことは無いって事かな。)


(それともレイスが別格に強かっただけ・・・?)


そう思いながら、酒場のマスターに、

「騒がしくして、ごめんなさい・・・」

と謝った、しかしマスターは何も言わず

右手の親指を立て、よくやった。と言うような仕草をしてくれた。


レイスはその隣でやれやれ、といった様子で、頭を抱えていた。


「おねえちゃん……いやっ!おねえさまっ!」


「おねえ……さま?」

助けた少女にいきなりそう呼ばれ、私は驚いて聞き返した。


「かっこよかったわ!おねえさまっ!あなたのお名前を教えてくださいっ!」

少女はそう言って私の手をガシッ!と掴んだ。


「え、えっと……」

私は少女の圧に押され、たじろいだ―――



マスターの計らいで、酒場の奥の落ち着ける円卓を用意してもらい

私達は自己紹介を始めた。


「私は鳴神アリサ、こっちはレイス。」


「アリサお姉さま……素敵なお名前ね!」

少女は陶酔したような表情を浮かべている。


「私はメイ、メイ・イグナ・アーツ!

魔法使いよっ!よろしくね、アリサおねえさま!」


メイと名乗った少女は、身を乗り出して私の手を掴む。


「同じ女の子なのに、男共を放り投げる力強さ・・・ワタシっ!惚れちゃいました!」


目を潤ませながら熱弁する姿に圧倒される。


私は話題を逸らそうと思い、

「あー、そういえば、何で揉めてたの?」


「そう!それ!聞いてよ!あいつらひどいんだから!」

そう言いだし、メイの愚痴が始まった。



―――――――――



メイの話を一通り聞いて、私は状況を整理した。


彼女は冒険者になる夢を抱き、この街へやって来た。

だが、なかなか良いパーティーに恵まれず、しばらくはソロで活動していたらしい。


地道に依頼をこなし、先日ようやく《ブロンズ》ランクに昇格。

魔物討伐依頼が解放されたことで、満を持してパーティー募集に踏み切った。


魔法使いというだけで声は掛かり、シルバーランクの三人組に誘われた。


自分よりランクが高いのだから、きっと実力もある。

そう思って加入したが――現実は違った。


彼らは魔物討伐の経験がほとんどなく、

そのうえ、日常的に彼女へセクハラまがいの言動を繰り返していたらしい。


ついに我慢の限界を迎え、今日この酒場で言い争いになった。


―――要するに、そういうことだ。


「こんなはずじゃ、なかったのにぃ……」

メイは愚痴を言い終わると、ミルクを手に円卓に突っ伏して泣き始めた。


私はメイの背中を優しく撫でながら、

「よく頑張ったね、また新しいパーティーを探そうよ。」


「新しいパーティー……そうだ!」


メイはがばっ!と起き上がり私の手を掴み

「おねえさまのパーティーに入れてください!」


「えぇ……?」

私はレイスに助け船を求めるように視線を送った。


「いいんじゃないか?魔物討伐の依頼をやるなら、魔法使いはかなり心強いよ。」


「そうなの?私、未だに魔法が何なのかよくわかってないんだけど」


「えぇっ!?」

私の発言にメイは驚き、机を叩いて立ち上がった。


「おねえさま!魔法を知らないで、今まで生きて来たんですか!?」


メイが予想以上に驚いたので、私もびっくりし、

「なんとなく便利な物なんだろうなぁぐらいにしか……」


実際、アンスリウムで暮らしていても、

たまに使っているのを見かける程度で、

メイのような魔法使いを見た事がない。


「なるほど、おねえさまは変わったお方なのですね……」


メイは少し考え、

「なら!決まりです!」


「魔法学院を高成績で卒業した優等生のこの私!メイが!」


「魔法のなんたるかを教えてあげます!」


「えぇ!頼まれなくても教えます!」

と、メイが意気揚々とした所で、給仕のお姉さんが料理を持ってきてくれた。


すると、メイのお腹がものすごい音を出して鳴り出す。

(ぐぅぅぅぅ――)


「――っ!」


メイはお腹を押さえ、顔を赤くしながらこちらを見つめ

「……昨日から、何も食べてないんです!」

何故か開き直っている。


私とレイスは顔を見合わせて、笑い出し。

「一緒に食べようよ、あなたの分もレイスが奢ってくれるって。」


「俺っ!?」


「ありがとうっ!」

と無邪気に喜ぶメイ。


「まぁ、いいか、金、足りるかな……」


次々と運ばれてくる料理を、私達は食べ始める。


――視界の端で、レイスは財布を確認していた。


「なるほどぉ、おねえさまがギルドで噂になっていた、異世界人なんですねぇ。」

私達は料理を食べ進めながら、親睦を深めることにした。


「私、噂になってるんだ……」


「それはもう、珍しい服装と剣術を用いて木剣で魔物を撲殺するやばい奴――

 みたいな話を聞いた事があります。」


「正直ワタシは、その話を聞いた時に、近寄っちゃダメな人だと思いました。」


「誰だその噂を流した奴は、引っ叩いてやろうか。」


「まぁ、木剣で魔物を倒したのは事実だしな。」

そう言うレイスの横っ腹をど突く。


「でも、女の子の戦士なんて珍しいですからね、

 大体の女冒険者は魔法使いか僧侶と言った魔法職か、

 斥候や弓使いと言った職が多い感じです。」


「へぇ~、冒険者の職業にも色々あるんだね。」


「もしかして、知らずにやっていたんですか!?」


「まぁ……今まで困らなかったし。」

私がそう言うと、メイは呆れた様子でため息を吐き、


「いいですか、おねえさま?」


「今までは運が良かっただけです!」


「《ブロンズ》になったからには、魔物討伐は避けて通れません!」


「しかも失敗したら普通に死にますからねっ!?」


「まぁメイの言う通りだ

 ⦅ブロンズ》から昇格するには魔物討伐の実績が必要になる。」

レイスが隣から口を挟む、


「だから、新米冒険者が躓く一つ目の壁になってるんだよ。」


「男は黙っててください!」


「えぇっ!?」


レイスは黙らされしょんぼりとし、メイはチキンの骨を振りながら


「邪魔が入ってしまいましたが、魔物討伐をするなら!

 パーティーの構成はしっかりとするべきです!」


「なるほど……具体的には?」

と私がメイに聞く。


「うっ、具体的には……

 戦士が二人、僧侶と魔法使いを入れて、斥候は必須でえーっと……」


メイはチキンの骨を弄りながら頭を抱え始めた。


話を聞いて私は考え込む、

「メイちゃんが魔法使いで、戦士は私達で足りてるよね……」


「僧侶が何をする人なのかは良くわからないけど

 斥候はつまり、偵察を担う人の事だよね?」

レイスに目配せをすると、レイスは頷く


「それなら、レイスが兼任できるみたいだし

 最低限の戦力はこれで揃ってるってことになるかな?」


「で、でも!僧侶が居ないと傷を負った時に大変ですよ!」


「衛生兵ってことか、なら私とレイスは

 応急手当なら出来るから問題はないんじゃないかな?」


「そ、そんな……教科書には、それぞれの人が必要だって、書いてあったのに……」


それを聞いて私は苦笑いして、

「完璧を求めてたら、前に進む事なんてできないんだからさ

 とりあえず私達三人でやってみようよ、ね?」


私がそう言うと、メイは渋々口を開き

「わかりました……おねえさまがそう言うなら……」

そう言って、残りのチキンを食べ始めた。



食事を済ませると、再びメイが口を開く。

「次の議題はどの魔物討伐を受けるか!ですねっ!」


「魔物かぁ……」

正直、トラウマしかない。


「まぁ、魔物といっても、かなりの種類がいるからな。」

レイスは私の心境を思ってか、少し優しい口調になっていた。


「何をっ!弱気な!……とはいっても、私も実戦は初めてなのですが。」


「しかし!学院の実技試験では1位2位を争ったことがあるこのワタシっ!

 実戦ではご期待ください!」


(争ったことがあるっていうことは、なったことはないのかな――)

私は心の中でツッコんだ。


「私達のランクで受けれる魔物討伐って、例えばどういうのがあるの?」


「それは―――」


「やっぱりゴブリン退治でしょう!」

レイスの言葉を遮り、メイが机を勢いよく叩き、意気揚々と話す。


「昔読んだ本に書いてありました

 勇者はゴブリンの巣穴でお姫様を助け

 そのお姫様と共に魔王を討ちに行く旅に出たと。」


メイは椅子の上に足を乗せ、さらに熱を入れて話し始めた。

「なのでっ!私もゴブリン退治がしてみたいんです!」


「そして、ゴブリンに捕まっていた少年を助け出し

 後に私が窮地に陥った時に、白馬に乗って駆け付けてくれるんです……」


(ツッコミ所が多すぎて何も言えない……)

私は苦笑いをしながら、メイの熱弁を聞いていた。


「ゴブリンか……」

レイスは考え込みながら呟くように言った。


「何かあるの?」


「いや、なんでもない。メイは乗り気だし、やってみてもいいだろ。」


「やったっー!」

メイはその場で両手を掲げジャンプした。



―――――そして私は、初めての魔物討伐に赴く。


ハイテンションガール・メイの登場です。


「面白そう!」「期待できる!」そう思っていただけましたら


ブクマや★を入れていただけますと、うれしいです


みなさまからの応援が励みになります!

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