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4話~邂逅~

パチッ……パチッ……




焚火の、爆ぜる音。



身体がとても重く、感覚が無かった。

私、死んだのかな……



そう思い、目を開ける。


「よかった、目を覚ましたみたいで。」


聞き覚えのない声……


声の主に目を向ける。


そこには、見慣れない服装の少年が座っていた。

銀髪に琥珀色の瞳。歳は私と同じくらいに見える。


意識がゆっくりと浮かび上がる。


全身が冷たい。

濡れた服の上から、毛布のようなものが掛けられていた。


視線を落とすと、足元には白い砂。

まるで海辺のような場所に寝かされている。


けれど――ここは海ではない。


耳を澄ませば、水路を流れる水音が反響している。


水路の外に流されたのかと思い、期待して辺りを見回したが、

そこには見慣れた石造りの壁が続いていた。


天井の一部が崩れているのか、上から光が差し込んでいる。

その光が、白い砂を淡く照らし幻想的な雰囲気を醸し出している。


地下のはずなのに、ここだけが別世界のように明るかった。


私が周りをきょろきょろと見ていると、目の前の少年が口を開いた。

「ごめん、濡れた服をそのままにするのは良くないと思ったんだけど

 意識がない女の子に触るのもどうかと思って――」


少年はそう言って恥ずかしそうに目を背けた。


私は、毛布で身体を包みながら起き上がる。


「うぅん……ありがとう、あなたは?」


「俺はレイス、レイス・フィールドだ。」


「この近くに、希少な薬草の群生地があって

 その採取の帰りで意識を失っている君を見つけたってわけさ。」


パチッ……パチッ……と燃える焚火にレイスと名乗った少年は薪をくべる。


「君はどうしてこんな所に?冒険者ってわけでもなさそうだし。」


「わたしは……」



―――途切れ途切れになりながらも、ここまでの経緯を説明した。



そして、私は思い出したように立ち上がり、


「――アキ……そうだ、アキを探しに行かないと……」


私は木刀を手に取りふらつきながら探しに行く。


「ちょ、待つんだ!」

ガシッ!と手を掴まれ引き止められる。


「離して!友達が、蝙蝠に連れてかれたの!

 今ならまだ間に合うかもしれない!」


「蝙蝠……人を襲うとなると、大蝙蝠か!」


私はレイスの手を振り解こうとして、身体のバランスを崩し倒れそうになる。


「っと!危ない!」

レイスに支えられ、そのまま焚火の近くに座らせられる。


「――辛いかもしれないが、冷静に、聞いてくれ。」

レイスは私の両肩を掴み、諭す様に話し始めた。


「大蝙蝠は賢い。狙った獲物は、まず逃がさない」


「これは推測だけど、君達は襲われる前から見つかっていたんだと思う。」


そして、レイスは言い辛そうに、

「あいつらの巣は、人や魔物に見つからないような場所に作られる

 だから、君の友達は、もう……」


「嫌っ!聞きたくないっ!私一人でも探すんだ!」


暴れる私をレイスは抑え、

「駄目だ!君を助けた者として、軽々しく命を投げるような事は見過ごせない!」


「他にも大勢の友達が亡くなったんだろう!?

 必死にここまで逃げてきて、君だけでも助かったんだ!」


「辛いのは、分かる。

 でも、折角生き残ったんだから……命を投げ出さないでくれ……」


レイスに諭され、私は声を上げて泣いた。




「ぐすっ……う"あ"ぁぁぁ……」




―――幼い頃、両親を失って塞ぎ込んでいた私を救ってくれたアキ。

―――親友を失い、今までの想いが溢れ涙が止まらなかった・・・



涙が枯れるまで泣き続けた後、私は虚ろな目で焚火を見続けていた。


「これは、提案なんだが、俺と一緒に街に行ってみないか?」


「街……?」


「この場所は、ある都市の地下水路になってるんだ。」


「だからここから出て、街で君の友達の事を聞いてみよう

 もしかしたら別の冒険者に助けられている、かもしれない。」


元気のない私を励ます為に言っているのは分かっていた。

けど、今は私を助けてくれたこの少年を信じようと思った。


「わかった……あなたについてく。」


私がそう言うと、レイスはホッとしたようで、明るい表情に変わった。


「くすっ……案外可愛い顔するね。」

言葉遣いは大人びているけど、こうして見ると年相応なんだなと思い、笑った。


「放っておいてくれ・・・」

レイスは顔を赤くしながら照れたようにそっぽを向く。


身支度を終え、街へと向かって歩き出す私達、

「なるべく魔物の出ない道を行くけど

 もし出たら戦わなくていいから、下がっていてくれ。」


そう言われムッとする私、

「これでも、一応、一匹だけだけど、ネズミのバケモノを倒したんだから!」


そう言うとレイスは驚き

「その木剣で!?すごいな…」


「けど、君は異世界人だからか、《オーラ》も《魔力》も使えないみたいだ。

 魔物の攻撃を掠るだけでも致命傷になるから、気を付けてくれ。」


「《オーラ》?《魔力》?」

聞きなれない単語が出てきて思わず聞き返す。


「《オーラ》っていうのは気力の事で、って、そうか

 君の世界だとそもそも存在しないのか――」


レイスは少し悩み、

「俺もそこまで詳しい訳じゃないから、街に出たらちゃんと説明するよ。」

そう言って進んでいると、



―――道を塞ぐように巨大鼠が二匹現れた。



「ひっ――」


「大丈夫、下がって。」

レイスは私を庇うように剣と盾を取り出す。



一瞬の出来事だった―――



レイスは、襲い掛かってくる巨大鼠の一匹を盾で押しとどめた。

同時に、もう一匹を素早く剣で両断し

流れるように盾で抑えていた巨大鼠の首を刎ねる。


「す、すごい……」


現代では見ることのできない、実戦的な剣捌きに見惚れていた。


あまりにも綺麗な剣捌きだった為、私は自然と拍手していた。


「恥ずかしいからやめてくれ……」


レイスは照れるように頬を搔きながら、巨大鼠の尻尾を切断していた。


「何してるの?」


「あぁ、この鼠は討伐依頼が出てるから

 こうして尻尾を冒険者ギルドに持っていくと、討伐報酬が貰えるんだよ。」


そう言って、レイスは切り落した尻尾を布で包む、その際に同じような物が10本以上見えた。


「すごい、そんなに倒してたんだ」


「最近は数が多いみたいで、よく遭遇するんだ。」


「まぁ、数を纏めて報告すると、いい金額になるからな。

 街に出たら、これで美味しい物でも食べよう。」


そう言ってレイスは笑う。


「ねぇ、なんで見ず知らずの私にそこまで優しくしてくれるの……?」


相手が男の子だからか、正直ここまで優しくされるのが怖い。


私がそう聞くと、レイスは顎の下に手をやり考え込みながら


「そうだなぁ、俺の師匠が、優しい人だったからな。」


「だから、俺も、師匠と同じように困っている人を助けたかったんだ。」


と、レイスは少し寂しそうに言った。


「そっか……」


下心があるんじゃないかと疑った自分が少し恥ずかしくなった。



しばらく地下水路を歩き続けると、思い出したように、レイスが口を開く。


「安心してくれ、君が暮らせるようになるまでは、面倒を見るよ。」


「わけもわからず、こんなとこに来て困ってるだろうけど

 この世界にもいい所があるからさ。」


そう言って、レイスは私に手を差し伸べてくれた。


「うん……ありがとう。」


―――レイスの手を握り、進んだ先で光が見えた。


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