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2話~地下水路~

2月14日に加筆修正しています。

「―――――ちゃん!――サちゃん!アリサちゃん!」


「ん……」

誰かが私を呼んでいる気がして、ゆっくりと目を開けた。


「アリサちゃん!よかった……」


アキが涙目になりながら私を見下ろしている。


「痛っ……ここは……?」

節々が痛む体を起こし、周囲を見渡す。



薄暗い、石造りの地下空間。

見覚えのない壁が、どこまでも続いている。


天井から水滴が落ちる音と、どこかを流れる水の音が、

静まり返った空間にやけに大きく響いていた。


壁には見たこともない光源が埋め込まれていて

青白い光が、影を不自然に揺らしている。


―――その中で、場違いなくらい見慣れた制服を着た学校の人達が

   あちこちに立ち尽くしていた―――



「あの黒い霧に飲み込まれた後、気付いたらこんな所に居たの……

 アリサちゃんはここがどこかわかる?」

アキは泣きそうになりながら聞いてきた。


「私もわかんないな、そもそも日本なの?ここ……」


(外国、なのかな……?)


「これは、異世界転移ってやつじゃないか!?俺達は選ばれたんだよ!」


私達が現状に戸惑っていると

突然一人のメガネをかけた男子生徒が叫び出す。


「異世界転移?ってあのアニメとかで流行ってるやつ?」


テンションの高いメガネ君に私が聞く。


「そうさ!もう少ししたら神様的なのが現れて

 僕たちにチート能力を与えてくれるはずだ!」


声を荒げるメガネ君だがアキが反論する。


「私も有名な奴は見た事あるけど

 だったら転移中にそういうのに会えるんじゃないの?」


「チッチッ……君は分かってないね。

 最近のは、まとめて転移させてから能力を与えられるパターンなんだよ」


「そうなの?」


「いや……多分違うと思うけど」


こそこそと私達は話し合っていると――


パンッ!パンッ!と手を叩く音が、騒音を切り裂いた。


「落ち着け!集まれ!」


怒鳴るような声だった。


それでも生徒たちのざわめきは完全には止まらない。


先生の額には汗が浮かんでいた。


「思ったより、沢山いるね」

と、アキに耳打ちした。


「担任の先生はいないね」


「他に、友達はいるかな……」

アキはそう言って周りを見渡した。


私も、見知った顔がいないか、周りを見渡したけど

アキ以外に知り合いはおらず、先生も知らない人ばっかりで

少し心細くなった。


―――――――


みんな、先生の元に集まると、一斉に話し出し、


ざわざわと、辺りに声が響き渡った。


「私達どうなっちゃうんだろ……」


「さっき言ってた異世界転生って本当なのかな?

 魔法とかチート能力とか使えるようになるのかな?」


「俺、剣士になりたい!

 両手に剣持ってどれだけ斬られても死なないチート能力が欲しい!」


「家帰りたい……」


皆思い思いに話している。


―――私は背負っていた木刀を胸の前で握りしめ、無意識に呼吸を整えた。


「……なんだあれ!」

誰かが叫び、指差している方向を見る。



そこには――巨大な鼠がいた。



一瞬、目を疑った。

猪よりも一回り大きい体。

口元から覗く歯は刃物みたいに鋭い。


……一匹じゃない。

闇の奥から、影が次々と現れる。



「落ち着いて!下手に動いて刺激しないように!」

先生が声を荒げ、ざわつく生徒達を落ち着かせようとする。


すると、一匹の巨大鼠が―――

声を発した先生に向かって突進した。


押し倒された先生

次の瞬間、骨が砕けるような音と共に、先生の叫び声が地下に響いた。



――――――「えっ?」



目の前で起こった光景が理解できず


思考が止まったまま


先生に群がっていくネズミの数が増えていく。


「ぎゃあああっ!」


断末魔が響き渡る。


しかしすぐに声は途切れ、代わりに肉と骨が裂ける湿った音だけが残った。


次第に動かなくなる先生の体を見て、私の血の気が引いていく。


「うっ……うわぁぁぁ!」


誰かが叫び出し、その声に反応する様に全員が一斉に走り出す。


私はその声で我に返り、友達の腕を強く引っ張る。

「アキ!立って!逃げるよ!」


しかしアキは立ち上がれず、震えながら泣いていた。

「ごめん……立てない……」


「っ……!」

咄嗟にアキを抱える。


どこに逃げようかと周囲を見渡した瞬間。

巨大鼠は新たに増え、ざっと見ただけでも二十匹近くは居るっ!


「こっちにもいるぞぉ!」


「いやぁ!こないで!」


「助けてぇ……あぐっ……」



―――飛び交う悲鳴と、血飛沫。



周囲を見渡し、私は鼠が少ない水路方面に向かって走り出す!


「はぁっ!はぁっ!」



「たすけてぇ……」


「!?」


私の目の前―――


通路の真ん中で下半身を巨大鼠に食われている一人の男子が

血塗れの手を私に伸ばしてきた。


「……っ!」


男子と目が合う。


"死にたくない"そう言っているのが、視線を通じて伝わった。



しかし、私はアキを抱えている腕に力を込め、思いっきり走り出す!


歯を食いしばり、勢いよく跳んだ。


「ごめんっ!」


謝りながら

巨大鼠に食われている男子生徒を飛び越え

私は薄暗い通路の奥へと走る。


しばらく通路を走っていると……


「っ!?」


目の前に伸びた影に、反射的に足を止めた。



―――先程の巨大鼠が1匹、道を塞ぐようにこちらを見つめている。



「ごめんアキ、少し、待ってて……」


「アリサちゃん……?」


アキを降ろし背負っていた袋から木刀を取り出す。



先程の光景が脳裏によぎり、木刀を握る手が震える……


それでも決意を言葉にして自分を奮い立たせる。


「アキだけでも……私が守る!」


声を出すと同時に正面の巨大鼠が突進してきた。


(速いっ!)


そう思い、横に躱すと同時に巨大鼠の胴体目掛けて思いっきり木刀を振り下ろす!


ガンッ!という鈍い感触が手に伝わる。


「こいつっ……硬い!?」


突進を躱された巨大鼠は身を翻し再度突っ込んでくる。



「胴体が硬いなら……頭はどうだっ!?」



鼠の突進をギリギリまで引き付け

抜き胴のように

相手の懐へ潜り込む動きで、頭を思いっきり叩きつけた!


相手の突進の力を利用した一撃は見事に、頭骨を粉砕したようで

鈍い衝撃が木刀を通して腕に伝わり確かな手応えを感じた。



「やったかっ!?」

―――違うっ!油断するな。


すぐには力を抜かず、木刀を構えたまま一歩距離を取る。


呼吸を整えながら、巨大鼠のわずかな動きも見逃さない。


しかし、巨大鼠は頭骨を粉砕されたせいか

ビクビクと震えているだけで立ち上がる余力は残っていないようだった。


「トドメは……したほうが、いいよね……」


視界の端で隠れているアキの方を見る。

無防備なアキに万が一にでもこいつが襲い掛かったら……

そう思い唇を噛みしめて覚悟を決める。



ビクビクと痙攣している巨大鼠に恐る恐る近づき

木刀を頭の位置に狙いを定める。


木刀を握りこむ手に汗が滲み、滑りそうになるのを必死に抑え

しっかりと握りしめた。 


「ゴメン……!」


振り上げた腕が一瞬止まるが、覚悟を決めて振り下ろす。

嫌な感触が手に伝わると共に、巨大鼠が動かなくなる。



―――私はこの時、生まれて初めて生き物を殺した。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

物語はまだ始まったばかりですが、

ブクマや★で応援していただけると、とても励みになります!

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