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1話~転落~

他愛のない日常が、どれほどの幸せだったか―――

血濡れた剣を手にして、私は初めて気付いた。


―――私は、覚悟が足りなかった。だから、死なせたんだ……


―――それが、すべての始まりだった。






学校の昼休み、ざわざわとする教室内―――

ではなく、私は校庭の日当たりのいいベンチで一人、お弁当を広げていた。


「あー!こんなとこで食べてる……

 アリサちゃんが居なくて寂しいから探したんだぞぉ!?」


せっかく静かだったのに……


そう思いながら声の主を睨む。


「教室にいると、みんな見てくるんだもん。

 気になってご飯が喉を通らないから、人のいない所に来たの。」


「ふふ~ん?今や噂の中心人物だもんね?」


友達がパチン!と指を鳴らして言った。


「この間の剣道の大会!圧勝!優勝!だったじゃん!」


「剣道部の顧問の先生が感極まって泣き叫んでたよ?」


「私、剣道部入ってないのに……

大会に出たのも道場の師範である

お爺ちゃんに出ろって言われたから仕方なく出ただけだよ」


「でも優勝したってことは、日本一でしょ?」


「まぁ……同年代の中では強いっていうだけで

 本当の日本一になったことがあるお爺ちゃんに比べたら

 私なんて未熟者だよ。」


そう言って、背負った木刀袋を撫でる。


お爺ちゃんにお守りにと嫌々持たされた物だけど

不思議と触れていると心が落ち着く。



―――この時の私は、これが“命を奪う武器になる”なんて思ってもいなかった。



「それかっこいいよねー。

 道場の名前が入ってて、剣士!って感じ」


「まぁ・・・ね」


褒められてちょっと照れる。


「あ~照れてるぅ?」


「うっさい」


お互い、そんなやりとりをしながらご飯を食べ進めた。


「食った、くったぁ!」


「ごちそうさま、アキ、下品だよ」


「アリサちゃんがお上品なんだよ」


……ざわざわ


なにやら、騒がしい声が聞こえてきた。


「何か校門の方が騒がしいね?何だろ?」


「さぁ?芸能人でも来てるんじゃない?」


興味なさそうに言うと友達の目が光り。


「芸能人!?見たい!ねぇアリサちゃん!一緒にいこうよ!」


「ちょっ……もうっ……!」


アキに腕を引っ張られ連れていかれる。


校門に着くと、たくさんの生徒達が居た。


「なんだあれ・・・朝はあんなものなかったよな?」


「すげ~……浮いてる!G〇NTZのアレじゃん!」


「爆発したりするのかな……なんかこわい」


「お前ら!校舎に戻れ!今警察呼ぶから近寄るな!」


先生が集まった生徒を散らすように叫んでる。


校門の前あたりに何かあるみたいだけど人が多すぎてよく見えない。


私より背が小さいアキはピョンピョン跳ねているが、

よく見えないみたいで、

「うーん、見えないなぁ……アリサちゃんなら背高いから見える?」


「ちょっと待って……」


人混みに近寄ると、気付いた人達が道を開けてくれた。


鳴神(なるかみ)アリサだ!」


「本物だ!スタイル良くて美しい……」


(恥ずかしいな……)


じろじろと見られたけど、退いてくれたおかげで


見える位置まで来れた。


「なんか黒い球体が見えるね。なんだろアレ?」


校門の前に、墨を塗り固めたような黒い球体が浮いていた。


その周囲を、申し訳程度にカラーコーンが囲っていた。


私は、球体を見た瞬間、背筋が凍りつき、胸の奥がざわついた。



―――この感じ。


―――本気のお爺ちゃんと稽古をしたあの時と同じだ。



本能的にヤバいと思った私は、すぐにアキの腕を掴み、


「なんとなく、いやな感じがする、離れた方がいいかも!」


「えー!私まだ見れてないよぉ!」


「いいからっ!」


アキを連れて離れようとしたその時、


一人の男子生徒が、


「うぇーい!隙あり!」


と言って黒い球体に触れる。


「あっ!こら!」


先生が慌てて男子生徒のシャツを掴んだ。


「もう遅いぜー!触っちまったからなぁ・・・ってなん・・・」


球体に触れた男子はあっという間に球体に吸い込まれ消えていった。


「おい!まっ・・・」


男子を掴んでいた先生もそのまま吸い込まれ消えていく。



―――――――――――――――

一瞬の静寂

―――――――――――――――



「・・・えっ?」


うそ、でしょ?


消え、た?


目の前の光景を信じられなくて、頭が理解を拒んだ。


「う・・・うわあぁぁ!吸い込まれたぁ!?」


誰かが叫び出すと、それに続いてみんなが叫び出す。


「落ち着きなさい!落ち着いて!押さないで!冷静に!」


先生が落ち着かせようとしてたけど、意味がなかった。


「やばい!にげろぉ!」


「どけよ!邪魔だよ!」


「やめて!押さないで・・・きゃっ!」


「アキっ!」


倒れそうになったアキを咄嗟に支えた。


「ありがとうアリサちゃん・・・アリサちゃん?」


その時、私の視線は


黒い球体から


離れなかった。


「なんだろう、なんか動いてる気がする・・・」


黒い球体をよく見ると、表面が波打っているように見えた。


「・・・えっ?」


友達が疑問の言葉を口にした瞬間。


黒い球体は突如

風船が割れるように弾け飛び

闇のような黒い霧が一瞬で周囲を覆った。



「なっ・・・!」


私の口から声が漏れ出るが、その音すらも闇に溶け込んでいく。



―――逃げる間もなく私は闇に包まれてしまった。



闇に包まれ視界が消えた。


音が消えた。


足元の感覚がなくなった。


体が宙に放り出されたみたいだった。



私の名前を呼ぶアキの声が耳に残っていたけど

そのうち眠りにつくように意識が消えていった・・・



―――――――――――




「・・・ちゃん!・・サちゃん!アリサちゃん!」


「ん・・・」


誰かが私を呼んでいる気がして、ゆっくりと目を開けた。


「アリサちゃん!よかった・・・」



アキが涙目になりながら私を見下ろしている。


体の節々が痛い・・・


けど、なんとか体を起こした。


「痛っ・・・ここは・・・?」


私は顔をしかめながら、辺りを見渡す。



そこは見知った校舎ではなかった。


薄暗い、石造りの地下のような場所。


天井から水が滴り落ちる音。


そして・・・石の壁で灯っている私の世界では見た事のない光源。



―――ここが、私の知っている世界ではないことだけは、はっきりと分かった。

―――そして、この時の私はまだ知らなかった。



―――ここが、二度と元の世界に戻れない場所だということを。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

物語はまだ始まったばかりですが、

ブクマや★で応援していただけると、とても励みになります!

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