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第5話 昔と変わってしまった理由


 前世を思い出して一日が経った。

 俺はベッドで目が覚めた後、しばし眠気の余韻よいんに浸る。


「……夢じゃ、無いんだな」


 俺は本当に転生したのだ。

 前世で刺されて死んで、転生した後にもう一回死んで。

 そうして今、父親になって子供達との仲を修復しようとしている。


「……何で思い出したんだろうな」


 前世でも輪廻転生という概念はあった。

 時々記憶を持って生まれ変わっている人がいる。そういう話も聞いたことはあったが、大半の人間は前世の記憶など持ち合わせてはいない。ただただ今を生きるのに精一杯だった。

 異世界転生の物語。それは、前世で流行っていた内容だ。


 神様と会話。

 チート能力。

 前世の知識を生かして貢献する。

 悪役の運命を変える。


 色んな話はあったが、大体こんな感じだったと思う。

 ならば、俺が前世を思い出したのは、ギルバルトの未来で起こる運命を変えるためだろうか。

 確かに、今のままでは子供達と良好な関係など築けるはずもない。まともに喋れず、愛しているの一言も言えない。喧嘩別れして、挙句の果てに暗殺。あの夢で見た未来としては、今でも充分あり得る話だ。


「というか、寡黙過ぎて言葉が足りなすぎるし。誤解されて恨みとか買ってそうだよな、俺」


 騎士としての評価は悪くないし、民にもそれなりに好かれている。

 だが、圧倒的にそれは父のおかげだろう。父は俺と違って社交的だった。気さくだし面倒見も良いし何より身分分け隔てなく接する姿は、民の憧れだ。

 その息子も、羽目を外したりしないし騎士としての職務は全うしている。だからこそそこまで嫌な目で見られないのだろう。



「はーあ。今日はどうすっかなー」

「お出かけしてみては?」

「うわあああああああああっ⁉」



 いきなり声をかけられ、俺は文字通りベッドから飛び上がった。デジャブである。昨日も同じことがあった。

 扉の方を向けば、案の定執事のブランシュがいた。ほのかに湯気の立ったおけをワゴンに乗せて用意していた。有能過ぎる。


「ブランシュか……おはよう」

「おはようございます、旦那様。昨日に引き続き独り言が多いですね」

「悪かったなっ。……子供達に説明してくれたか?」

「ええ。――今まで秘密にしていて申し訳ありません。旦那様は子供達が可愛すぎて極度の緊張におちいってしまうので、上手く声が出ないし笑えないし目を合わせるのも大変な上に文字も書けないポンコツオブポンコツになってしまうのです、と」


 酷い説明だ。


 しかし、それ以外にもはや思いつかなかった。子供達が騙されてくれるとは思っていないが苦肉の策である。

 ブランシュ達とは普通に話せるのに、子供達の前では全く体が言うことをかない。これはつまり、深く深く記憶を思い出す前のギルバルトの心に問題があるのだと考えた。

 俺自身の心には、子供達に隔意かくいを抱くものは見当たらない。

 つまり、ギルバルトも別に子供達が嫌いだったわけではないのだろう。何故なら、俺が嫌いだと思う食べ物は、少し前のギルバルトも嫌いだったと知ったからだ。

 つまり、原因は俺が思い出せない中にある。

 やはり時間をかけて向き合うしかない。そして、何としてでもスムーズに子供達と会話をしてみせる。


「本日はどうするおつもりで?」

「……。……子供達と外へ出てみようかな、と」

「ほーう。本当にギルバルトは改心したんですね。よかったよかった」

「改心とか言うな。……はあ。こんなに変わったのに普通に受け入れてくれるのはお前くらいだよ」


 他の使用人はおっかなびっくりな接し方をするのに、ブランシュは平然と接してくれる。ありがたいことこの上ない。

 しかし、ブランシュにとっては意外な言葉だった様だ。


「……やっぱり覚えていないんですか?」

「は?」

「昔の貴方は、こんな感じでしたよ」


〝いや、お前は小さくて覚えてないかもしれねえが……昔は結構よく笑うしよく喋る子供だったんだぞ〟


 そういえば父も同じことを言っていた。昔から一緒にいた幼馴染なら、知らないはずがない。


「……な、なあ。俺って、どうしてその、笑わなくなったんだ?」

「……」

「どうもそこらへんのこと覚えてなくてさ。知ってるなら」

「さあ、そろそろ支度をして下さい。ディアン様とカーラ様が待ちくたびれてしまいますよ」

「え。ちょっと」

「……思い出せないなら、思い出せるまで待った方が良い」


 それだけを促して、ブランシュが静かに急かす。

 教える気はないということだけは分かった。つまり、自力で思い出すしかない。

 だが、父は知らないけどブランシュは知っているということか。本当にいつも一緒にいたんだな。まだ俺が完全に同化していないからかもしれないが、俺の味方になってくれる人がいてくれて嬉しい。恵まれている。感謝しかない。


「……いつもありがとな、ブランシュ」

「ギルバルト……」

「さあ、行こう! 子供達の笑顔は元気の源! 今日こそもう少し会話を弾ませるぞー!」

「……ええ。頑張って」


 ブランシュが穏やかに笑うのを見て、よーしともう一度気合を入れ直した。人生、気合で乗り切るものだ。



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