仮想空間×小鳥遊妃菜多
私はかなり満足している。
VR空間でユウくんと触れ合える。アバター同士であっても…いい。だってそのアバターの先にはユウくんがいるんだから。
もちろん、私以外にユウくんのことを狙っている女がいることも分かってる。ユウくんに予定を聞いた時に「その日は別の人と会う約束があって」と何度か断られているから。
断られた時は「私のユウくんを奪いやがって」という嫉妬の気持ちが湧き出てきた。だけど、よく考えればこんな人を他の女が野放しにしておくはずがない。
見す見す、ユウくんを渡すはずがない。
ユウくんと一緒になるのは私。
もし、ユウくんが色んな女と結婚したいと言い出したとしても、第一婦人は私。それは絶対に変わらないし、変えさせない。
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今日は数日ぶりにユウくんと仮想空間に会える。
それだけで今日、目が覚めて、仕事をしている間も心臓の鼓動が収まることはなかったわ。頭の中ではもちろん、ユウくんのことを考えていた。
考えない日の方が少ないし、ほとんどないと断言できるぐらいに私の中でユウくんは大きな存在になっている。
仮想空間に入り、ユウくんと会うと私の中で必死に抑えている欲求が溢れだしてしまいそうになる。
「お久し振りですかね、ひなたさん」
「そうでもないと思うわ。5日前に会っているわけだし、連絡は毎日しているから」
「そうですよね。ひなたさんと会うのが楽しみで…そんな風に思ってしまうんですかね」
この子…ユウくんは本当に魔性の男だ。
楽しみだ…って言われたらそんなの嬉しいに決まってるわ。
私だけが楽しみにしていたわけじゃなくて、ユウくんも楽しみにしてくれていたなんて。男に…大好きな人に…最愛な人に求められるのがこんなに幸せだと初めて知った。
ユウくんと出会ってから初めてのことばかり。一人の人間にここまで執着したのも初めての経験だし、男性と話したのも初めて、私のことを求めてくれた人も初めてだ。
こんな天国のような場所があるなんて。
「それを言うなら、私もユウくんと会えるのを楽しみにしていたわ。ユウくんが会いたい気持ちよりも絶対に私の気持ちの方が大きいと断言できるぐらいに」
この気持ちは負けない。だって私はユウくんと会うために、この仮想空間の世界を作り出したりするぐらいだからね。
自分で言うのもなんだけど。
「そこまで…会いたいと思ってくださるのは嬉しいですね」
それから私はユウくんと二人きりの時間を過ごした。
―――
ユウくんが先にログアウトをしたのを確認してから、私はこれからのことについて考える。
「…これからもユウくんにはしばらくログインしてもらわないと」
いつかは現実で会うのが目標ではあるものの、さすがにそこまでの信頼関係をすぐに築けるとは思っていない。長いスパンで考えるぐらいがちょうどいい。
でも、それを阻む大きな問題が起こりかけている。
それは男バレだ。
ユウくんに対してなるべく顔を隠したりするようには言っているけど、さすがにそれで誤魔化せるほど女は甘くない。特に男に飢えている女はたくさんいる。男を見つけて、襲い掛かろうとする人間もいるぐらい。
そういう女は変な嗅覚を持っていて、いくら変装をしていて見破って来る。
結果的にこの仮想空間に男がいるという噂が広まりつつある。私としてはそういう噂が広まって、ユウくんがこの空間にログインしてくれない状況になるのだけは避けたい。
どうにかしたいとは思っているが、どうすればいいのか私も分からないというのが正直なところ。
さすがに私以外の女を全て締め出すのはだめ。そんなことをしたら、色んなところから批判を受けるに決まっているし、ユウくんもログインしてくれなくなる。
「そうなると…どういう風に対処するのがいいのか、しっかりと検討しないといけないわ」
これからも私がユウくんとこの空間で過ごすために。




