【アップデートについて】海野彩葵と小久間岬
海野彩葵
公式のお知らせを読むと、VRが開始される日付やギフトなどの詳細が書かれていた。
アップデートの連絡が来た時は嬉しかったものの、まだ半信半疑だった。でも、今回は日程なども出ているのでこれはもう確実だ。それにただのVRじゃなくて、VRMMOのように五感全てを共有できる。仮想空間において、アバターを作り出して、会ったり話したりできるということ。
「これはユウさんと話したりできるってことだよね」
いつかはリアルで会いたい。でも、今までの通話などに比べたらかなりの進歩。だって仮想空間とはいえ、VRMMOのような形であれば触覚がある。ユウさんに触れれば、ユウさんを側に感じられるということだ。
さすがに許可なしで触ったりしないものの、触りたい。
そしてそれを可能にするために『ギフト』というサービスがある。ギフトを使えば、ユウさんに色んなお願いができる。
でも、何でもかんでもお願いすればいいというものではない。
ここがとても難しい。
もちろん、18禁に触れるような行為をするつもりはない。
でも…折角会えるんであれば会える利点を活かしたい。
さっき、運営のサイトを開いて、ギフトの詳細をもう一度確認してみると前に見た時は書かれていなかったものが何個かあった。
新たに追加されたもので私の目を引いたのは…『特別ギフト』と書かれたもの。特別ギフトの詳細欄には驚くような内容が書かれていた。
それは―――――
「え……個室で二人っきり…」
そこには個室で二人きりになれるサービスと書かれていた。さすがに自分の目を疑った。こんなサービスがあっていいのかと。
女は肉食動物と同じで狙った獲物を絶対に捕らえる。そんな女という生物とユウくんのように優しい男性が同じ空間で過ごしたら、確実に襲っちゃう。その瞬間、私の人生は終わるし、ユウくんとも二度と会えない。
それは分かっているものの、このサービスを利用した時に私が理性で感情を抑え込めているかは分からない。
それにこんなサービスなんて…ユウくんを含めて男性側が絶対に断りそう。いくら優しいユウくんでもさすがにこんな危険なことは首を縦に振らないんじゃないかな。
ここの運営は一体なにを考えているのだろうか。
もちろん、女側の私としては嬉しい。男性と二人きりで過ごせるなんていくらお金を積んだとしてもいい。というかお金に換えられない位の価値が存在する。
でも、男性側からすればギフトの収益があるにしても、それに代えられない位の危険があるが気がする。特にユウさんみたいに優しい人はあんまり断らなそうだし、押されるうちに何でも受け入れちゃいそう。
18禁に触れることがNGと記載があったものの、逆に言えばグレーゾーンや捕まること前提で何かをしてくる女がいないとは限らない。そういう点を含めて、かなり今回のアップデートは危険だ。
聞く感じだと、ユウさんとやり取りをする感じは参加するみたい。それなら私は止められない。だって私もユウさんとやり取りしたいし、ギフトを使って触れたい。
ユウさんへの危険を案じるのであれば、参加しないように言えばいい。ちゃんと説得すればユウさんは必ずと言っていいほど聞き入れてくれると思う。
それなのに、やっぱり私は止めない。
男性と触れたいという気持ち、ユウさんと一緒の時間を過ごしたいという気持ちが強い。
――――――
小久間岬
男性と触れ合う機会。
今まで一度たりともなかった。
そんな機会が急にきた。
諦めの気持ちからインストールした出会い系アプリから全てが始まった。
ユウさんと出会って、やり取りを始めて、この人とこれからもやり取りを続けたいと思って、もっと近づきたいと感じた。
私はユウさんという存在と知り合えただけで満足して、それ以上を望んではいけない人間なのに、その先を望んでしまう。
そんな時にこのアップデートはまさに望んでいたもの。
だけど、一つ不安材料があるとすればそれは金銭面。ギフトの金額は色々だけど、やっぱりすごい要求ができるものはそれなりの値がする。
私はパートをしているだけで大きな収入がない。それに子供のこともあるから、大きなお金を使うわけにもいかない。
もう数年前であれば…子供を授かるよりも前だったら自由に使えるお金もそれなりにあった。
でも、今はそうではない。
それが分かっているんだったら、大きく使わなければいい。
でも、ユウくんみたいな子とやり取りしていると思うことがある。この子はたぶん、男性の中で希少な存在であり、二度と現れない。
このチャンスを逃したら、一生後悔するかもしれない。
多少、貯金を使っても問題ないという囁きとしっかりと理性でセーブをするべきという囁きが両耳から聞こえて来る。
これから先の自分もある。
でも、後悔したくない自分もいる。
どっちを選ぶが一番良いんだろう。
最終的に決めるのは自分自身。
少なくても仮想空間での交流が始まる、6月15日までに全てを決めないと。




