双葉梓穂②
自分もボディガードが増えることには賛成だった。
それはこれから葉山様を護る上で自分一人よりもたくさんの人がいた方が絶対にいいから。
自分の気持ちよりも葉山様の安全が大事。
もちろん、葉山様の側を独占したいという気持ちもある。というかこういう事件が起こらなければこれからも葉山様のボディガードとして、自分だけが特権で側に居られるはずだった。
でも、事件が起こってしまった以上は仕方ない。
追加のボディガードとして選ばれたのは月森さんと花里さんだった。
他にもたくさんの生徒から申し込みはあったものの、さすがに葉山様と付き合いがない人を選ぶのはないという話になり、そこから何度か吟味を重ねた結果として彼女たちが良いということになった。
本人たちにそれを伝えた時の反応は本当に対極だった。花里さんは飛びやがりながら喜び、月森さんの方は冷静にそれを受け入れている感じ。
花里さんが葉山様に告白をしたのは知っている。それは葉山様の近くで支えているのだから当たり前。なので、体で喜びを表現するのはわかっていた。
逆に月森さんはあんまり感情が表情に出るような人物ではないので、冷静にそれを受け入れるのも予想通りと言えば予想通りだった。
それから数日して、改めて二人を含めて、自分と葉山様は顔を合わせた。
二人に会ってみて改めて思ったのは、葉山様のことを好きなんだと。花里さんは葉山様のことを好きな気持ちを一度伝えていることもあって、好きなことを隠している感じがしない。
月森さんはクールな感じを装っているものの、葉山様のことを見る時の目が肉小動物のものと同じだ。隙を見せれば葉山様のことを奪おうとするんじゃないかと感じるほどに。
だけど、二人の葉山様を想う気持ちよりも自分が葉山様を想う気持ちの方が絶対に大きいと自負さえある。
それに自分は絶対に葉山様の近くにいたい。
『自分が生涯に渡って、この方の側にいたいという人と出会えた』と感じた日は忘れない。
生涯に渡って、側にいたい。
葉山様の側に居たい。
その望みに陰りが見えた。
今回のボディーガードを増やすということで。
二人がボディガードとして加わるからといって、自分がいらなくなるわけではない。
何より二人を増やしたのは少しでも葉山様が危害を受ける可能性を低くするため。
それでも、やっぱり生物の本能的に同性が側に居て、同じ異性のことが好きだとやっぱり危機感はある。
花里さんと葉山様が話していれば普通に嫉妬するし、それは月森さんの時も同じ。自分ってこんな嫉妬深い人間だったんだと大学4年生になって初めて知った。葉山様を護るためには当たり前で受け入れるべきことなのに。
――――――
講義を受ける時に葉山様の隣に自分が座った。他の二人は前の席に腰を下ろして、講義が始まるまでの待つまでの間も隣を見るともちろん、葉山様がいる。
それがとっても嬉しかった。
隣に座っているんだから横顔が見えるのは当たり前のこと。
でも、この横顔を見れるのは自分だけだと思うと優越感がすごかった。この世界のたくさんの女性がいるけど、その中で今、自分だけが葉山様の横顔を見れている。こんな素晴らしいものを自分一人だけが独占しているというのは…罪深い気もするけど、それ以上に高揚感が顔にまで出てしまいそう。
こんな素晴らしいものを見せられるとより一層、葉山様から離れられなくなってしまう。元々、葉山様がいない日常に戻るのが無理なのは分かっているつもりだった。
そして今日でそれが確実になった。自分は葉山様から離れることはできないし、離したくない。
もし、葉山様が大学を卒業したら自分はどうすればいいのだろうか。今は女性区域の大学に通うため、ボディガードやサポートは必要。だけど、大学を卒業して男性区域の中で生活を始めたら、自分のことがいらなくなる。そうなったら……どうすればいいんだろうか。
自分は何を目的に生きていけばいいのだろうか。こんな幸せを感じてしまったら他のことに幸せを感じれない。
生きる希望を見出すのも難しい。
だけど…今はそんなことを考えるのやめよう。
今は葉山様の隣に居られることを幸せに思おう。




