新たなボディガード
お菓子を渡した日、帰路に付く車の中で双葉さんから「次に大学にいらっしゃる時からボディーガードが増えます」という連絡をもらった。
それは少し前に僕の情報がニュースで漏洩してしまったことを受けて、ボディーガードを増やすことになった。理事長からも「少しでも葉山くんの安全を高めるためにこれは必要なことなのだ」と言われている。
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そして今日はそのボディガードの方と顔合わせをする日。いつも通り、双葉さんに迎えに来てもらい、大学へと向かう。
「いつもより早く迎えに来ることになってしまい、誠に申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ。顔合わせの日だということは分かってたので、早めに準備していましたし」
講義が始まるよりも前に顔合わせをすることになっている。そして今日から双葉さんと共に近くで護ってくれるらしい。
送り迎えに関してだけは双葉さんだけというのは変わらないらしい。あくまで大学内でのボディガードを増えると考えるのがいい。
大学に着くと双葉さんに案内され、ある部屋まで来た。どうやら普段はあんまり出入りしていない部屋で顔合わせを行うようだった。
「この先に新しくボディガードになる二人がおります」
「そうなんだね。あんまり待たせてしまうのは悪いから…入ろう」
「はい、かしこまりました」
部屋に入るとそこには二人の女性がいた。
その正体は…月森さんと花里さんだった。
「え…どうした二人が?」
僕の驚きとは裏腹に双葉さんはとても落ち着いている。
「それはこの二人が増員されたボディガードだからです」
「ふ、ふたりがですか?」
「はい。何か問題がありますか?」
「いえ、僕としては問題ないんですが、二人は問題ないのでしょうか?」
そう問いかけると最初に答えてくれたのは花里さんだった。
「もちろんだよ。あたしはあたしの意思でボディガードになりたいって立候補したんだもん。それにあの激戦を制したわけだし」
「激戦?」
最後の言葉の意味は分からないものの、自分の意思で選んだというのが聞けて良かった。
もし、理事長や上の立場の人から言われてボディガードになることになったんだとしたらそれは申し訳ない。それぞれの自由な時間を奪うことになってしまうのだから。特に月森さんは真剣にテニスと向き合っているので、その時間を奪ってしまうのは本当に申し訳ない。
「ぼくも立候補した。だから、葉山くんが心配する必要は何もない。ぼくが葉山くんのボディガードをしたいと思っただけだから」
「そ、そうですか。それならいいんですが」
「うん。だからそんな心配しないで。ぼくはぼくの意思で立候補して、葉山くんのボディガードになるんだから」
その言葉を聞けてまだよかった。月森さん以外の誰かの意思が介在した結果として僕のボディガードになったわけじゃなくて、自分の意思で選んだのであれば…。
「わかりました。ではよろしくお願いします」
そこで双葉さんが月森さんと花里さんの顔を見てから、話し始めた。
「二人は葉山様と知り合いではありますが、これからボディガードとして共にいる時間も多くなるでしょう。なので改めて自己紹介をお願いできますか?」
最初に答えようとしたのは花里さんだった。
「は~い。あたしは花里小夜です。しっかりと葉山くんを護れるように頑張ります。これからよろしくお願いします」
花里さんから自己紹介をしてもらったこともあるので、僕も自己紹介と挨拶をすることにした。
「僕は葉山優です。改めてよろしくお願いします、花里さん」
「うん!よろしく、葉山くんのために頑張るね!」
「本当にありがとうございます。その気持ちだけで嬉しいです」
自分の所為で花里さんの自由を阻害してしまうのは少し申し訳ない。
それにフッた相手のボディガードなんてよくやろうと決心してくれたと個人的には思うし、ありがたい。それに月森さんにも言えることだけど、ボディガードとして長い間一緒にいることがある程度の面識がある人で助かった。
一からのコミュニケーションじゃなくて、元々構築されていたものからならしっかりと信頼関係も築いていけそうな気もする。
次に月森さんが自己紹介を始めた。
「ぼくは月森景都。運動には自信があるので、いざという時も葉山くんをしっかりと護れると思う。これからよろしくお願いします」
「月森先輩、これからよろしくお願いします」
「うん。ちゃんと葉山くんのことは護るよ」
テニスの時間をあんまり削らせるのはさすがに申し訳ないので、練習の時は僕がテニスコートの近くにいれば、問題ないかな。護衛対象が近くにいれば問題ないとは思うし、僕も月森さんのテニスを近くで見たいしね。
一通り、自己紹介と挨拶が終わると最後に双葉さんが挨拶を始める。
「では、お二人共、これからよろしくお願いします。自分は双葉梓穂と申します。三人で葉山様を護るために力を合わせましょう」
すると、それに感化されるように花里さんと月森さんも返事をした。
「うん!あたしも頑張る!」
「ぼくも!」
この日から僕のボディガードは三人になったのだ。




