大学と事件
今日もいつも通り、双葉さんが迎えに来てくれたので車に乗り込んだ。
双葉さんと他愛のないような話をしていると…大学に着く。
だけど、今日の大学は少し違った。大学の周りに多くの女性が集まっていた。
大学の関係者らしき人たちが門を閉めたりして対応しているものの、それでも抑えられないぐらいたくさんの女性が門の前にいる。
双葉さんの方に視線を移すとそこにはいつもより少し険しい顔をしていた。
「これって大丈夫ですか?」
双葉さんは僕のことを安心させるために少し笑みを浮かべる。
「大丈夫ではないかもしれませんが、葉山様に被害が出ることはないので心配しないでください」
「…大丈夫じゃないんですね」
「ですが、理事長もこの状況を長続きをさせないと思うので、あと2時間もすれば丸く収まると思います」
この状況は大学に通う人たちにとっても、教職員にとっても良い方には働かないと思う。だけど、簡単に状況が覆るとは思えないので、理事長がどんな風にこの状況を解決に導くのか気になる。
そして僕と双葉さんと運転手さんは裏口から校内に入ることになった。さすがに正面から入るのはさすがに無理ですし。
双葉さんからは「万が一にも葉山様に被害が出てしまうとまずいので、今日はお家でリモート授業を受けてもらうのも一つの選択肢だと思います」とは言われた。
でも、僕としてはなるべく授業があるのなら受けたいし、双葉さんが近くに居てくれるならある程度のことはどうにかなる気もするので残ることにした。
―――――――
大学内を歩いていると、後ろを歩いている双葉さんから質問がとんできた。
「本当にいいんですか?」
「大丈夫です。双葉さんは心配し過ぎだと思います」
「さすがに心配ですよ。今の状況から考えると葉山様がこの大学にいることはかなり危険です」
双葉さんはさっきからずっと同じことを聞いて来る。それぐらい、僕のことを心配してくれているのだと思う。
だからこそ、僕はなるべく双葉さんを安心させるために笑顔で、後ろを振り向きな答えることにした。
「…大丈夫ですよ。だって双葉さんが近くで守ってくれていますし」
僕の言葉にサングラスで隠れている双葉さんの目が一瞬、見開かれた後にいつもの真剣な双葉さんに戻った。
「………わかりました。この身に代えても葉山様のことを護って見せます」
「ありがとうございます。双葉さんのことを頼りにしています」
そんな会話を交わした後に僕は双葉さんに案内する形で理事長室に足を踏み入れた。
理事長室にはその部屋の名前通り、理事長が静かに座っていた。
「まずはここまで来てくれてありがとう。腰を掛けてくれ」
「はい」
僕は向かい合うようにあるソファーに腰を下ろす。そして目の前のソファーに理事長が座り、双葉さんの僕の後ろで直立不動になっている。
「今回、このようなことが起こっている理由はニュースのようだ」
「ニュースですか?」
「キミに関するニュースが報じられたようだ。男性でありながら女性区域にある我が大学に通っていることがね」
「それであんなことに…?」
「ああ、女たちは男に飢えているからね。それに男性が女性区域に入って来ることが珍しいというか……ほとんどないから」
だとすると今、門の前に女性が多い理由は僕の所為。
「キミが気にする必要は全くない。今回の事態はこちらの情報管理の問題だ。なるべく情報が漏洩しないようにしてきたつもりだが、これからはもっと厳重に管理することと、キミへの護衛も増やすことにするを決めた。キミのためにも、我が大学のためにも今のままでは不安だしね」
「…僕が迷惑を掛けたのに…色々とありがとうございます」
「さっきも言ったが、今回は我々の失態だ。キミが我が大学に通ってくれていることはとてもありがたいし、こちらとしてはキミが安全に大学生活を送れるようにサポートするのが仕事だ。そのために責任を果たすつもりだ」
理事長の言葉には覇気があって、目も鋭くて、雰囲気も支配していて、まるでライオンみたいだ。何度か、理事長ともリモートや対面で会ったことあるのに、今回のような感覚は初めて味わった気がする。
やっぱりこの人は理事長なんだと感じた。
その後、僕のこれからについて理事長と話し合った。




