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通話

出会い系アプリはどうやって採算を取っているのだろうと調べてみると、どうやら女性側がアプリ内で使えるコインを購入するなどしてくれることが主な収入源らしい。



僕たち男性は出会い系のアプリは無料で全てのことができるけど、女性はコインを使ってやり取りをしてくれている。それは知っていたけど、改めてその事実に直面すると僕とのやり取りはそのお金に見合うだけのものがあるのかと少し疑問に思ってしまう。


だって普通に他愛のないことをやり取りしているだけだ。






男性からも金銭を取ればそんなこと気にすることもないんだけど、僕は一銭もお金を取られていないから余計に気にしてしまう。






自分が登録してある出会い系アプリのサイトを開いて金額を調べてみると、メッセージは5コイン、通話1分50コイン、ビデオ通話1分100コインと記されていた。


そこで僕は初めてメッセージ以外のことがこのアプリで出来ることを知った。



「へぇ…通話とかあるんだ」



でもこれを見る感じだとメッセージを10回やり取りをするのと通話で1分が同じ値段。相場というものが分からないので、何とも言えないけどすごくお金が掛かるのは分かった。






―――――――


その日の夜に僕はあおいさんと通話をすることになった。あおいさんはしっかりと連絡を取ってくれて、時間帯を含めてしっかりと言ってくれたので、自分の用はその時間までに全て済ませることにした。



初めての通話ということもあって、少し気を張っていたけど、あおいさんとの会話は予想以上に弾んだ。あおいさんの方からしっかりと話題を振ってくれているので会話が途切れることがほとんどない。そのお陰で僕もスムーズにあおいさんと会話ができている。



「ユウさんって大学生なんですよね?」



「はい、大学生です」



「私も去年まで大学生だったので、勉強で困った時は何でも教えてあげるからね」



「ありがとうございます、もし分からない時は頼らせてもらいますね」


周りに仲が良い年上の人はいないので、勉強を教えてくれる人がいるのは本当にありがたい。



「そう言えば、最近女性区域の中の大学に登校したんです」


少しでも女性に対して歩み寄ろうとしているところを知ってもらおう。あおいさんもあんまり男と話したことはないらしいし、少しでも女性のことを知ろうとしている姿勢があることを分かってもらおう。



「ほんとですか?」



なぜか、あおいさんの声がさっきまでの明るい感じじゃなくなったのが少し不思議だ。



「本当ですよ。今まで登校したことなかったんですけど、少しずつでもあおいさんたたちに歩み寄りたかったので」


まだ登校し始めてそんなに経っていないので、抵抗感もある。でも、いつか登校にも慣れ始めたらそんな抵抗感すらもなくなるのかもしれないと思うとその日が少し楽しみになる。



「その気持ちはとっても嬉しいですけど、男性が女の区域に入るのは危険です。強姦されたりすることも少なくないし、なるべくなら男性区域から出ない方がいいですよ」


あおいさんはたぶん、僕のことを心配してくれているんだろう。それは文面を見ればすぐにわかった。



「そうですね。でも、大学側もその辺りは気を使ってくれていますし、いつかあおいさんと会う日になった時のためにも慣れていきたいので」



「私もユウさんに会うのがとても楽しみです!」


まだ面と向かって会う勇気はないものの、いつかは会いたいという気持ちは僕にもある。









それから少し話していくと…2時間以上も話していた。




電話が切れてから思ったけど、この通話は女性側にかなりの金銭が発生するはずだ。





でも、あおいさんはそんな素振りを一つも見せずに僕と話してくれていた。本当はもっと早く切りたいとか思っていたのかも。


「申し訳ないことをしちゃったかな」




後で謝ろう。






それにしても誰かと通話をするなんてこれが初めてだ。もっと緊張すると思ったけど、考えていたよりも緊張せず、素の状態で話せていた。


それもこれも、あおいさんのお陰。僕の緊張を和らげようとしてくれたり、話題が切れないようにしてくれたりと色んなことをしてくれた。だから僕もこんなに通話を楽しめたんだ。


本当に出会い系で巡り合ったのがあおいさんたちのような方でよかったと思った。


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