ひなたさん
あおいさんたち以外にもやり取りをしている人はいる。でも、人数に関しては六人と制限するようにしている。そうした理由は実に簡単でそれ以上の数とのやり取りだと僕の手が追い付かない。
本当は二十以上の相手からメッセージが来ていたりするけど、やり取りはしていない。一応、やり取りが出来ない旨はしっかりと伝えて、相手の良縁を願うという一文を付け加えて送っている。
そしてやり取りをしている中で一番印象に残っているのはひなたさんという女性。
プロフィールの写真を見る限り、大人の女性という感じ。茶髪のロングで写真からも伝わってくるぐらいに色気というものがする。まぁ、それは僕の勘違いかもしれないけど。
なぜ、ひなたさんが印象に残っているのかと言えばそれは一分に一度ぐらいの頻度で連絡が来るのだ。
普通にお仕事をしているらしい。
そんな毎分連絡をしてこれる仕事があるのかなぁと少し疑問に思ってしまうけど。でも、ひなたさんが言うには『だってユウといつでも繋がっていたいから仕事なんてどうでもいいの』らしい。いや、仕事はどうでもよくないよと思ってそうメッセージを送っても『大丈夫よ。ユウが心配するようなことは何もないわ。それに私はこれでも偉い方だから』。
そんな風に言われてしまったら僕はもう何も言えなかった。
あおいさんや岬さん、カエデさんも頻繁に連絡を送ってくれているけど、ひなたさんはその比ではないのだ。なので、一番印象に残っている。
それは今日も同じこと。
スマホの画面を見るとひなたさんからの通知がすごい数溜まっていた。お風呂に入っていたり、料理を作っていたりとスマホを確認できないと本当にスマホが壊れるんじゃないかといらない心配をしてしまうぐらいに溜まる。
出会い系アプリのひなたさんとのメッセージ欄を開くと――――
10分前『ユウって今日何色の服を着てるの?私は恥ずかしいんだけど、部屋着みたいな服装なのよ』
9分前『今日の夜に通話を掛けても良いかしら。ユウの声を聞きたいの』
8分前『最近、カレーが美味しく出来たのよ。だからユウと会う時には絶対に美味しいカレーを食べさせてあげるわ。その時はあ~んとかもしてみたいわね』
7分前『ヘッドホンって音漏れがするから電車とかでは注意して欲しいのよね。前にに電車に乗った時、隣の人の聞いている音楽がずっと漏れてて安らげなかったのよ』
6分前『このアプリって詐欺が多いから手を出してなかったんだけど、ユウという素敵な男性に出会えたわけだからあの時アプリをインストールした私を褒めてあげたい』
5分前『ユウのいない人生なんて考えられないぐらいにユウのこと好きよ。何よりも』
4分前『誰かを好きになるっていうのがこんなに幸せな気持ちになれるなんてユウに出会えなかったら知れなかったのよね。今まで仕事だけが生き甲斐みたいに生きてきたけど、今は仕事よりも自分よりも大切な相手に出会えたわ、ユウ』
3分前『ユウのためだったら私はどんなことでも出来るからやって欲しいことがあったら遠慮なく言って。それがどんな無理難題だとしてもユウのためだと思えば、どんなことにも手を染められるわ』
2分前『ユウのことを考え過ぎて私の体はユウを求めてる。今日もユウの夢を見たのよ。ユウと一緒にホテルに入って一つになる夢。なんて素敵な夢だったの。あれがいつか現実になればいいなと私は思ってるの』
1分前『ユウのことを心の底から愛してるわ。私とユウならどんな困難も乗り越えていける。愛している。愛している。愛している。愛している。愛している。ユウのことを愛しているわ♡』
僕はもう慣れてしまった。
最初の頃はさすがに少し引いてしまったけど、それもずっと続けば自然と慣れて来る。
ひなたさんとは通話の回数なども一番だと思う。通話はメッセージに比べてかなりの費用が掛かるのでこんな頻繁にしていていいのかと心配になる。それでもほぼ毎日通話をしてくる。
ひなたさんのメッセージに対する返信はいつも通りに『僕もひなたさんと会える日を楽しみにしていますね』と送っておいた。
なるべく僕は一つ一つに返信したいけど、ひなたさんに関しては頻度がすごいのでさすがに一つ一つに返信をしてはいられない。ひなたさんもそれを分かってくれているのか、別に不満を言われるようなことはない。もしかしたら、我慢してくれているのかもしれないですけど。
その後もひなたさんは頻繁にメッセージを送ってくる。




