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黒猫は甘い吐息に包まれたい  作者: くどりん
ノーマルシリーズ
7/11

吐息その7『甜飴といきの独白』

 私は人付き合いというものがよく分からない。

 虚勢ではないが、かつて友人と呼べる存在はいたが、どこか一枚のガラス板を隔てたような距離感を覚えており、本音で語り合うといったことはなかったと記憶している。

 なので、親しい友人がどういった距離感、付き合い方なのかということは想像を働かせるしかないわけで……彼女、ねぴんとの接し方は本当に手探り状態だった。

 交流を持つようになった当初は、彼女の反応を窺いながら、恐る恐るといった様相だった。

 ーー固飴(かたい)さんとか言われたっけ……

 リスナーにだが。

 今となっては懐かしく、笑い話として話せる内容だが、当時の私からすれば生きた心地がしなかったのだ。

 失礼なことをしたらどうしよう。

 今の返し、間違ってなかったかな。

 頭の中でアレコレと考えては、ぎこちない態度をとってしまっていたはずだ。

 たが、ねぴんはそんな私に呆れることなく、常に気を配ってくれて、会話に詰まれば新しい話題を振ってくれたり、こちらのミスをカバーしてくれた。そして時には年下らしい顔を見せて、いたずらっ子のようにからかってきたりとーーそんなやり取りを続けていくうちに、私の固さは和やらぎ、打ち解けることが出来たのだ。

 彼女には配信者としてだけでなく、人としてのあり方を学ばせてもらえたのだ。

 接する機会が増え、共有の時を重ねていく中で、私が引っ越しを考えていることを伝えると、

「じゃあさ、ルームシェアしない?」

 などと、あっけらかんに言うものだから、面食らったものだ。

 それから話はトントン拍子に進んでいき、気に入った物件に居を移した時には2人して大はしゃぎしたのを思い出す。

 それからの日々は、今までの人生の中で1番輝きに満ちていた。そう断言出来る。

 配信ではーー自分で言うのは面映いものがあるがーー偉業とも言える二冠達成を果たし、夢への一歩を進めることが出来た。

 プライベートでは親しくなれたねぴとの日々で充実していた。楽しいことを分かち合い、辛いことがあれば励まし合うーーそんな日々が空虚だった胸の内を満たしていってくれたのだ。

 だから、こうなることは時間の問題だったのだろう。

 今まで自分にそういった気があった訳ではないが、気が付けば彼女の言動一つ一つに心を揺れ動かされてしまうようになってしまっていた。

 ーーねぴはどう思ってるんだろ……

 自分以外と接する時も、すぐ打ち解けて仲良くなっているようなイメージがある。だから、過剰に見えるスキンシップも彼女にとっては特別気にするようなものではないのかもしれない。

 けど、もしも私に向ける感情が友情以上のものであれば、どれだけ幸福であろうか。

 そうではないのかと思い上がってしまいそうになるし、咄嗟の弾みで決定打となる質問を投げ掛けてしまいそうなる。

 だが、後一歩の所で、私はこの気持ちに蓋をしてしまう。

 ーー私の勘違いだったら……

 ねぴに友情以上の気持ちなどなく、勝手に勘違いして想いの丈をぶつけてしまったらと思うと、血の気が引いていく。

 彼女に拒絶されるのが怖い。

 今までの関係すら失われるのが、怖い。

「怖いよ……」

 思わず零れ落ちた言葉と共に、雫が頬を濡らしていく。

 彼女頼みにするのは卑怯かもしれない。

 でも、どうかお願いします。

 私から想いを伝えるのは、もしもが過ってしまい怖くて出来ない。

 だけど、貴女から求めてくれるのならばーー成功率は100%なのだと、保証出来るのだから……

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