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黒猫は甘い吐息に包まれたい  作者: くどりん
EXシリーズ
10/11

吐息EXその1『ある配信の裏側で』

※吐息EXは二人が付き合っている時空でお送りいたします。

「ねぇ、とい……流石にさっきのは危なかったんじゃない?」


「え~、そうかな?」


 こちらの膝上に座っているねぴんが困ったような声音で、だけどその表情はいたずらっ子のように歪ませながら振り返ってくる。

 それに対して、こちらも含み笑いを浮かべながら返事する。


「あんなにイチャついてたら、同棲してるって気付かれるかもだよ~」


 ねぴんがクスクス笑いながら言うものだから、彼女としてもバレても構わないと思っているのだろう。

 確かに、リスナー達は二人がイチャついているのを当然の光景として喜んでいる節がある。

 今日だって語尾指定のギフトで、随分いじられたものだ。


「でもさ……語尾指定のギフトが切れた瞬間に『よし!』とか『終わった!』とか言ってたよねぇ」


 ねぴんの瞳からハイライトが消えたように感じるが、それこそ配信中だったからと公私を分けようとした結果なので、納得してもらいたいのだが……


「どうしたら良い?」


 理解と納得は別物だろう。

 だから、彼女に機嫌をなおしてもらえるよう、出来る事はないかとお伺いを立てる。


「…………いっぱい言って」


「何を?」


 そう問い返すと、ねぴんの視線が鋭くなってくる。

 言わなくても分かるだろう、とでも言いたげな態度につい悪戯したくなるが、これ以上彼女のへそを曲げてしまうと後が大変だ。

 もちろん、彼女が求めているものは分かっているから、耳元に口を近付けて――


「大好きだよ、ねぴ」


「――――っ!」


 鼓膜に、そして脳に響かせるような低音を意識して、ねぴんに囁いてみせる。

 彼女の細い肩が震え、表情が蕩けていくのが見える。

 可愛い反応に、こちらもスイッチが入り、次々に言葉が滑り出てくる。



「ねぴが一番だよ?」

「ねぴしか見えない」

「ねぴがいてくれるから、私は頑張れるんだよ」



「ねぴ、愛してるよ」


「――――――――」


 顔を真っ赤にして、口を金魚のようにパクパクしている姿に笑いが込み上げてくる。


 ――流石にやり過ぎたかな……?


 許容量を越えてしまった彼女を解放しようとして、軽い身体を持ち上げ、こちらの膝を引き抜こうとした。

 だが、身を翻したねぴんにより、それは叶わなかった。

 それどころか、全身を委ねるようにこちらに体重を掛けられ――そして、押し倒される。

 幸い、ソファがクッションとなり、痛みはなかったが、


「どうしたの……?」


 倒れた表紙にこちらの胸に顔を埋めていたねぴんが、視線を寄越してくる。


「…………もっと」


 口元がまだ埋まっていたのでくぐもった声が聞こえてくる。

 彼女の吐息と口の動きがくすぐったいが、それ以上に彼女の上気した視線に目を奪うれてしまい、それどころではなかった。


「もっと言ってくれなきゃ――もっと、といの愛を伝えてくれなきゃ、やだ」


「……じゃあ」


 仕方ないなぁと思いながらも、そう言ってくれることを期待していた自分がいることも確かだから、願ったり叶ったりであった。


「こっちにおいで」


「ん」


 ねぴが身体の位置をずらして顔を近付けてくる。


 まだ陽も明るいが、こんな日もたまにはいいだろう――

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