「明日もし"世界が終わる"としたら君は最後に何を望む?」
6:00
今日もまた苦痛なスマホのアラームが鳴る。
「朝だ」
朝とはとても不思議なものだ。
夜に見た顔とは全くもって違う。考え方もだ。
まるで別人になったかのように。
そして朝は寝ぼけているせいか変なことが起こりやすい。
例を挙げるとしたら今、
「明日もし"世界が終わる”としたら君は最後に何を望む?」
その言葉が脳内に残り、離れない。
なんだこれ。なんでこんなことを聞かれてんだ?
誰が聞いてんだ?
まるで、しつこくてウザい先輩みたいに、その問いが頭に何度も響いてくる。
「明日もし世界が終わる?」
そんなんサイコーすぎんだろ。
脳裏に殺してやりたいやつを殺すだとか盗みを犯す。そんな事が浮かんだ、
だが、言葉が出なかった。
まるで首を絞められるかのように、そして言葉を発しようとすると具体的にはあげられないどこかの体の部位が苦しんだ。そしてその反動か息を吸うかのようにいきなり言葉が出た。
「どーでもよ...笑」
そんな思考にふけりながら、いつもと変わらない質素な朝食を喰い、学校に欠席連絡をいれる
そのはずだった_
「……は?」
おかしい。気がつくと俺はベッドの上で横たわっていた。そして咄嗟に時計に目線を向けると16:10だ。6:00に目が覚めて、アラームを止めたはずなのに。
「4時かよ…」
時計を見て、瞬時に理解する。今見ていたもの、あのウザイ先輩みたいなやつ、全て夢だったのだ。
午後の4時起きとか、もうそれ、目覚ましの罠にかかったか、地球絶対悪意ありで一瞬早く回っただろ
ため息が漏れた。
部屋の中では未だにアラームが鳴り続けている。
もうなんか何もかも面倒くさすぎる。
画面に表示された日付を見ても、何も特別なことはない。誕生日でもないのに、テレビのBコマでは「おめでとう!」とか、なんか意味不明に盛り上がってるし。いや、祝われる理由もないし。祝う対象すらいないし。
そして目線をBコマではなくニュース画面に向ける
「またアグリーのニュースかよ、最近のニュースは同じもんばっかでつまんねぇなぁ」
ニュースでは感染者が増えているだの、街中に変わり果てた人たちが現れただの、暴動が起こり続けているだの、死者がこの1ヶ月で千人もいるだの、まるで映画みたいだ。けれど俺はその光景を一瞬だけ見て、すぐにチャンネルを変えた。どうでもいい。こんなの、バカバカしい。
その瞬間、ドアの開く音がした。母親が知らない男と一緒に帰ってきた。母親は俺に一瞥もくれず、男と笑いながら話している。俺はテレビの音量を上げて、なるべく視界に入らないようにしていた。
「お前、また学校行ってねぇの?」
その声がふいに耳に入った。振り向くと、母親が冷たい目で言う。
「邪魔、出ていけ、今すぐに。」
その言葉に、俺は何も返さなかった。
しょうがないのだから。この家の主はこの女のもの。
俺は住ませていただけてるだけで感謝をしなければいけないから。
そうして俺はその男は誰なのか、昨日の男はどうしたのか、それすらも考えずに一目散に家を出た。
音があまりでないようそーっとドアを閉めようとすると見たくもないものが目に映ってしまう。
「学校に来るな」「クソブスデブ」「こんな酒飲むやつに税金を使ってるなんて甚だしい」
――それらの言葉は、俺の心に深く刺さった。
俺、薄暮 普14歳が学校に行けなくなった理由は至ってシンプルだ
まぁ最初は俺も学校が大好きでたまらなかったよ?
自分で言うのもあれなんだけど、友達も多い方だったし勉強もそこそこできる方。運動神経も良かったし、先生もいい人で、たまにいじられてみんなで大爆笑。そんなクラス。それは唯一居てもいい場所だと思えたから大好きだった
けどある日そんな幸せ色いっぱいのパレッドがぐちゃぐちゃにされた。
きっかけは多分所謂一軍女子に告白されてからだ。
家がこぉーんなんだから「中学二年生の付き合う」っていうのとか「人を好きになる?」ってのが俺には少々理解の及ばぬ領域で、俺はその告白を断った。
そしてその次の日。あの日は確か大雨だったよ。
人1人の涙を隠蔽するには良すぎるくらいに。
みんなから「サイテー」って言われた。
「なんで振るんだよ」って「思わせぶりしすぎ」とかそんな言葉が少し聞こえ始めたのが合図にみんな、全員が俺の悪口を言っているように聞こえた。
そしてしばらくするとみんな俺の声が聞こえなくなった。
俺だけプリントが回ってこなくなった。
物が無くなった。
よく画鋲で怪我をするようになった。
放課後女子達に人気のないところに呼ばれるようになった。
心だけじゃない体もたっくさん傷ついた。
しまいには無理やり酒を飲まされ、それをSNSにアップされた。
あっという間に拡散されて、炎上していった。
そして停学処分になった。
俺はその期間が終わってももう一度あの場に戻ることは出来なかった。
「ちっ…、俺だってやりたくてやったわけじゃねーし」
嫌な思い出ばかり思い出し舌打ちをしてしまう。
あまり遠くまで行く気力もなかったからひとまず家の目の前にある公園に避難することにした。
そしてとりあえずベンチに座ることにした。
しばらくベンチに座り込んでいると、まだ何も考えていないのにただ涙がこぼれるのを感じた。
「あれ…?俺、今なんで泣いてんだ?」
空を見上げると、曇り空が広がっていた。心の中では、何かが大きく崩れていくような感覚に襲われる。何かが足りない。何かが壊れた。
再び、あの問いが頭に浮かぶ。
「明日もし世界が終わるとしたら、君は最後に何を望む?」
考える暇もなく、俺はつぶやいた_