不屈の九人
この話は、大枠だけで表現しています。
破壊される街→破壊する者→複雑な島→ホームラン→修行パート→ホームラン競争→大団円
野球回ですが3万字なのでお暇なときにどうぞ。
おいらの街にはなにもない。
なにもないというのは比喩でも心象風景でもなく、日々破壊されていくからだ。
こうなってしまう前は、山々は夕日に明るく潮風を運び、田畑も実りをもたらしていた。
港に船が停泊すれば島民はこぞって出かけ、楽しみの少ない島での市場の思い出は何にもかえがたいものだ。
それなのに、ある日、おいらの街に鉄巨人が来た。
港に大型船が来たと思うと、軍服を着た連中は鉄巨人を組み立て、起動させた。
無骨なくせに流線形が多くて、空力抵抗を考えているのかというデザインの鉄巨人は、生きているように街を破壊した。
おいらの住んでいた二階建てアパートと同じくらいの大きさはあるだろうという鉄巨人に、島の人々は全くなすすべなく、家屋、駅舎、乗り物、庁舎なんか、ことごとく平等に破壊されていった。
鉄巨人は魔道を使用するらしい。
弾丸の装填を行うことなく、巨人の手のひらからエネルギーボールを発生させて、それらを遠慮することなく街に放った。
街のみんなは鉄巨人と戦いながら、エネルギーボールの投てきを阻止しようと戦った。
鉄巨人自体が殴る蹴る攻撃をするよりも、エネルギーボールのほうが甚大な被害をもたらしたからだ。
鉄巨人はそのエネルギーボールの投げる場所を宣言した。
エネルギーボールがどのような物体かは解らなかったけど、反射弾を撃ち込めばそれを跳ね返すことができた。
エネルギーボールの芯を狙って当れば、相殺することができたらしい。
だけど、相殺が成立したのは、ただ1度きり。庁舎の屋上に設置された砲塔が正しく火を噴いた時だけだった。
その次からのエネルギーボール投てきには、反射弾も全く当たる気配なく。島民は、破壊されていく街を眺めるだけしかできなかった。むしろ、反射弾による被害が増したらしい。
鉄巨人をもたらした国は、おいらたちの隣国らしい。
海峡の中に飛び地のようにポツンと、大陸のそばに置かれているこの島は、海峡をはさんで海の向こうの島国が領有している。
母国の元首も鉄巨人の来訪を強烈に抗議はするのだけど、具体的にそれを撤退させるまでは至っていない。
おいらたち島の住民は、ただ鉄巨人が街を破壊する姿を、なすすべなく、ただ眺めていたんだ。
◇◇◇
私は、故郷を取り返さねばならない。
祖父たちの血によって奪われた大地である。今住んでいる住人の血がいくら流れようと、自業自得というものだ。
奴らの建てた建物はすべて取り壊し、奴らの痕跡をすべて消す。それが我らの使命である。
鉄巨人9号は私たちの望郷の想いを具現化した魔道具だ。
9号から放たれるエネルギーボールは三打必滅の魔法効果を持っている。
一撃では人しか壊せない。二撃では武器までしか壊せない。
三打必滅で建物ごと消滅させるのが鉄巨人の能力である。
島の住人はエネルギーボールをほとんど反射できないし、鉄巨人に対抗できる戦力も持ち合わせていないようだ。
一日に放てるエネルギーボールは100球までと制限されている。つまり一日に壊せる建物は33棟程度。
この島には9万人ほどの住民がいて、さらに商業施設、工業施設、公共インフラなどが整備されている。
集合住宅などもいくつかある。建っている建物は7千棟だ。
およそ250日ほどで、わたしの9号1機でこの島の建物をすべて壊滅させることができる。
住民たちにはあらかじめ破壊するエリアを公開し、避難を要請している。
われわれは、流血が目的でなく、土地の奪還、失地回復が目的だからである。
さっさと逃げれば命は助かる。逃げたくなければ死ぬがいい。お前たちに抗うすべはないはずだ。
私は素直に作戦を遂行したりはしない。
A地域を破壊すると宣言しているが、どの棟から破壊するか、指定はしない。
ある日は大通りに面した建物ばかりを狙い、ある日は路地を中心に破壊し、ある日は住所の番号の若い順に狙うなど、「工夫」をしてやっている。
それにより、住民たちは右往左往しながら建物を守ろうと躍起になる。
住民たちが守っているところには攻撃してやらない。あくまで指定エリア内から外れることはないが、予想は覆してやるのが「マナー」なのだ。
「エネルギーボールを3発」
「1打で指定、2打で開震、3打で必滅」
「1打で指定、2打で開震、3打で必滅」
「1打で指定、2打で開震、3打で必滅」
遠巻きに、この地の破壊を眺めている住民たちに同情はしない。祖父を殺しておいて虫の良い話だ。
この島がさら地になるまで、指をくわえて見ていろ。
◇◇◇
カウフマン市長は、カーク、ユーコフ、カナリアの三名と、小高い山の上の孤児院から鉄巨人の破壊を眺めていた。
鉄巨人が上陸してすでに3か月。すでに全体の3分の1近い建物が鉄巨人によって消滅させられている。
若き筋肉質のカウフマン市長は言う。
「わたしたちの街、オロゲート市は、70年前の条約締結時点で、国際法上オロガルタのものです。
地理的にはペイセン国のそばにあり、ペイセンに帰属した方が良いのではという意見もありましたが、オロガルタの貴族が領有していた時代が長く、住民もオロガルタ寄りでした。
しかし、120年前の大戦のときに第三国である帝国が占領し、戦争終結とともにペイセンに売却されたのです。
そこから50年で、ペイセン人がたくさん入植してきましてね、言語も少しづつ変わっていったのです。
ペイセン国は技術の発展が進んでおり、この島を近代化しました。
そして70年前ですね。オロゲートの当時の市長はペイセン人だったのですが、オロガルタ人と入植ペイセン人との間で紛争が大きくなりそうだったので、紛争解決のためにオロガルタから軍が派遣されました。
ええ、この時点では、ペイセン国にオロガルタが侵攻したかっこうになっています。
島内の紛争を未然に防ぐと、オロゲート市民はオロガルタに帰属すべきか、ペイセンに帰属すべきか、住民投票を行ったのです。
住民投票の結果、オロゲートはオロガルタに帰属することに決まり、そこからペイセン人入植者は追い出され、オロゲートはオロガルタに帰属することになりました」
カークが質問する。
「複雑な関係なのですね。では、この騒ぎは、追い出されたペイセン人がオロゲートを取り返そうとしているのですね?」
「はい。そのはずです」
「はず、というのは?」
「ペイセンからは、軍事作戦を行うという連絡が無かったのです。ペイセン自体は、軍を出していないというのです」
「では、過去に領有していた帝国が?」
「すでに帝国は解体されているので、実体は無いはずなのです。また帝国の後継国には海軍が無いので船を出せるはずがないのです」
よくわからないなとカークは思った。
「うーん、住民投票の前の紛争について、もう少し教えてください」
市長は答えてくれる。
「ペイセン人はオロゲート人から土地を奪うと、ひどく迫害しました。
オロゲートにはオロガルタとは違う独自の方言がありましたが、オロゲートのイントネーションは矯正され、ペイセンは文化を破壊しはじめました。
当時学生だった戦士ルゴールは、収容施設で母を殺されたことに憤慨し、ペイセン人の施設幹部であるマーティアスと決闘を行い、殺害します。
この決闘はルゴールのだまし討ちであったとも噂されましたが、ルゴールは英雄として祭り上げられ、オロガルタの兵とともにペイセン入植者を理由なく逮捕し、ペイセンへ強制送還させました」
「なるほど、オロガルタの英雄なのですね」
「しかし、ペイセン人入植者とオロゲート人との間にも子供は産まれていますし、その子らもオロゲート人とは認めずにペイセンへ送られました」
「苛烈ですね、厳しすぎる」
「オロガルタとペイセンの間に立つこのオロゲートは、このように常に戦禍の中にあります。
しかし、条約締結後にはようやく手に入れた平和でした。
なんとしてでも平和は守っていきたいと思っていた中での鉄巨人です。なんとかこの島を平和にしたいのです。
カークさん、なんとかして、鉄巨人を追い返す方法を見つけてはもらえないでしょうか」
カウフマン市長がそう言うので、カークは返事に詰まる。
「とても難しい案件です。おそらく私たちに紛争解決はできないでしょう。
領土紛争、そういったものに加担するのは我々にとっては出来ないことのひとつです。
私たちが手伝ったことによって一旦は解決を見せたとしても、私たちが旅立ったあと、異世界の脅威が無くなった瞬間に再び、今度はより計画的に、壊滅的な打撃を与えられることになることが想定されますので」
カウフマン氏は、悲痛な面持ちで訴える。
「しかし、こうして本当にただ破壊を眺めているというのは、市民の精神も持たないのです。特に子供達にとっても。
毎日新しい孤児がこの施設にやってきます。彼らは親を失ったわけではありませんが、親たちが生活の基盤を失ってしまったので、この施設に預けるほか選択肢が無くなった者たちです。
領土紛争に端を発すると私も考えていますが、鉄巨人がどこに所属するか、いまだにわかっていません。
鉄巨人の問題だけでも解決していただけないでしょうか」
「わかりました、できる限りのことをしたいと思います」
「よろしくお願いいたします」
────依頼されても難しいことはある。今回のように、住民の感情が悪い場合は特に難しい。
カークはこの時、できるだけ関わらず、静かに次の特殊潮汐を待とうと考えていた。
◇◇◇
作戦会議である。
「どう思う?」いつものようにカークが問いかける。
「鉄巨人を倒してしまえばいいのでは?」ユーコフは言う。
「確かに、所属が不明である以上それが最も正しいことのような気もするが、オロガルタ軍が防衛に来ないというのも気になる。ただのならず者というわけでもないのだ」
「うーん」
カナリアが言う。
「私はよくわかんなかった、この島は暗くてつらい感じだから早く別の世界に行きたいかな」
「それもそうだ。なんでこんな風になってるんだろうかな」
「英雄ルゴールが悪いと思う。だまし討ちはひどいわね」
「それは僕も思った。その決闘が正々堂々としていたらこんな風になってないんじゃないか?」ユーコフも答える。
たしかに、真実がどうかは知らないが、遺恨の残る戦闘は市民感情に与える影響が大きそうだ。
カークが言う。
「登場勢力が多いね。オロガルタ人と、ペイセン人と、帝国軍と、それらのハーフの子孫たち」
「確かに多い」ユーコフが答える。
「多すぎるので、もう少し先を読んで集約したいと思う」
「先って?」
「俺は現在の世論を知りたい。鉄巨人の勢力も不明なままだからね、現在の状況から何かわかるかも。
たぶん、鉄巨人は住民投票をもう一度させたいと思っていると思う」
「そういえばそうかもね」ユーコフが言う。
「ユーコフはどうする?」
「僕は鉄巨人に接触してみたいかな、鉄巨人に直接聞いてしまえばいい」
「確かにそれも必要だな」
「カナリアはどうする?」
「私はここの孤児院にしばらく居ようと思うわ」
「そうだね、それが良いかもしれない」
カーク自身も、この問題をどう取り扱うべきか決めかねている。
「今回のことはどうなったら解決なのかな?」二人に再度問いかける。
「鉄巨人が撤退する」ユーコフが言う。
「島の平和」カナリアが言う。
カークは呼吸を整えて二人に向き合って語り掛けた。
「そうだね、失敗してもかまわない。という気持ちで行かなければこういう案件は難しいと思う。
くれぐれも、出会う人たちの意見に左右されないようにしよう。
誰かが幸せになったら誰かが必ず不幸になるという難しい状況だ。
会った人の意見に流されてひとつの方に加担したりしないようにしようぜ」
「「わかった」」
行動を起こそうとは思えないカークだったが、二人に変なところを見せたくないなという気持ちで、活動に入る。
お世話になっている孤児院を中心に、三人それぞれ別行動を行うことにした。
◇◇◇
カークはオロゲートの世論を調べてまわった。市長が協力してくれるので、多くの人に直接インタビューできた。
鉄巨人のエナジーボールが街を少しづつ消滅させていっている音が響き渡る。
驚くことに、ある程度年齢を重ねている多くの人は「あなたはオロゲート人ですか?」と聞くと怒った。
オロゲート人である。古くからこの島にいる。それは彼らにとって誇りではないのか?
不思議だったが、おそらく過去の紛争から学ぼうという姿勢がそうさせるのだろう。
共存しなければならない。
自分たちがオロゲート人としてペイセンにやられてきたことがあった。
ペイセンは、やりかえされて当然の迫害をオロゲートにしてきた。
だからといって軍隊を使ってペイセンを追い出してよかったのだろうか。
その追い出し方はとても暴力的だったし、すべての財産を渡さなかった。
そういった負い目がほとんどの住人にあった。
そのため、鉄巨人が家々を破壊していることについても、半ばあきらめているふしがみてとれた。
「家を壊すってことくらいは我々もやってきた。だからやられてもかまわないということはないが、いまにあいつらも同じように報いをうけることになる」
そういった諦め、あるいは受け入れがみてとれたのである。
ペイセン人は少なかった。ペイセン人はほんとうに70年前にほぼすべての人が追い出されたのだろうか。
そして、条約締結後にそれでもオロゲートで仕事をしたいという人は戻って来たようだが、ペイセン人への悪感情を払拭することはできなかったらしい。彼らは努力を重ねたが、オロゲート人たちの
「ペイセン人はそもそも島に少ないのでそこまで配慮しなくても良いのでは?」
という感情を乗り越えることができなかった。
ペイセンは本当に技術が進歩している。
オロガルタとペイセンは互いに力を入れている産業が異なるため一概にどう違うと言い難いが、軍事転用できそうなものはペイセンの方が多い印象があった。
オロガルタの方が「売れそう」な技術が多かったのでどちらが進んでいるとも言い難い。
帝国軍人の末裔という人もいた。
帝国軍人の末裔も、過去の大戦時「祖国に置いていかれた仲間」として、オロゲートの住民と帝国軍人と助け合って戦後を生き延びたという経験がある。
そのため、帝国軍人はオロゲートの民に「大いなる親しみ」を抱き、多くの軍人がオロゲートに永住したようだ。
その言葉をどう訳せば良いのかよくわからなかったが、とても誇り高い人々であるようだ。
ペイセンが支配していた時代は、オロゲートの民にとっては受難の時代といえるかもしれない。
英雄ルゴールがどのように施設幹部、マーティアスを殺害したか。
オロゲートの人々は英雄ルゴールを剣の達人と崇めている。
施設幹部であるマーティアスも軍人として訓練を受け、剣の名手として、ペイセンの両刃剣術印可を受けていた。
オロゲート人収容施設の屋上に呼び出されたマーティアスは、ルゴールと決闘を行い死に至る。
ルゴールの木剣は雷光よりも速く幹部の額を割ったという。
これにより、ペイセンの支配力、自治能力は不安定になり、ルゴールは英雄と呼ばれるようになる。
裁判はペイセンで行われたがルゴール不在の欠席裁判だった。
その疑問点は以下である。
・ただの収容者であるルゴールの呼び出しにマーティアスはなぜ応じたのか。
・誰も見ていないところでなぜ決闘をしたのか、一方的な撲殺ではないのか。
・ルゴールはあらかじめオロガルタの軍隊と通じていたのではないか?
しかし、ルゴールの部下の証言によって、そういった疑問も解消された。
ルゴールはマーティアスに金銭の賄賂を斡旋するという約束で呼び出したので、主要な人物以外誰も見ていない。
オロガルタの軍隊とあらかじめ繋がっているのであれば、そもそもルゴールの母の死より前に動いただろう。
そう言われれば、まあ納得せざるを得ないが、戦後この「ポピー収容所決闘事件」は疑惑として何度も語られるようになる。
カークはわからない。
現在、鉄巨人が島を蹂躙している。それによるオロガルタの救援が無い。
これらの勢力の、どの登場人物が鉄巨人を繰り出すだろうか。
◇◇◇
ユーコフは凧を飛ばして凧に乗り、島全体を俯瞰できる場所を飛んでいた。
オロゲート島は扇形の島である。
扇の要にあたる場所付近に市街地があり、ほど近い海上の小島に古城が建っている。
扇型の内側、海に面している場所は港と、砂浜。平野部と農地。
扇型の外周にあたるところは切り立った山に囲まれている。住民は山脈を便宜上「アルプス」と呼んでいた。
そのため、小さな島だが景観に優れ、観光客も非常に多かったようだ。
古城も多くてロマンもある。あの形状は防衛の古城じゃなくてただ住むためのオシャレ城だな。とユーコフは思った。
鉄巨人の破壊活動は、上空からでもよく見えた。
すでに破壊しているエリアは瓦礫のみが残されている。
どうやら、建築物にエネルギーボールを3度投げると、その形状やサイズに関わらず破壊することができるらしい。
3度、違う色のエネルギーボールを投てきしている。
おそらく、魔術の制約があるのだろう。この順でなければ破壊に失敗する。
もしかしたら、術者に反動が返ってくるのかもしれない。
さて、では鉄巨人にどう近づくのが良いのか。
1.鉄巨人の拠点と思われる沖に停泊している戦艦に潜入する。
2.鉄巨人と直接対決してねじふせた上で鎧を剥がす。
3.停泊している船の方を破壊する。
これ以上思いつかない。潜入は少し自信が無いな、僕は猫獣人だし。
それでないなら破壊ばっかりじゃないか。もう少しできることが色々あればいいのに。
カークにもっと魔法を教えてもらわないといけないな。と、ユーコフは思った。
採用した選択肢は2.鉄巨人と直接対決してねじふせた上で鎧を剥がす。これである。
いそいそと破壊活動をしている鉄巨人に、上空から近づく。
鉄巨人には仲間がいないのか?たった1体で作業を行っているようだ。
背中に注目すると、中に入り込めるような扉。ハッチって言うのかな?扉がある。
遠隔操作のゴーレム魔術かと思っていたが、中に人が乗っているのかもしれない。
人が乗っているのであれば、鎧を剥がさずとも人を引きずり出して、僕もカークみたいに「インタビュー」すればいい。
よっしゃやったるぞ!ユーコフは凧を操り、鉄巨人の背中にとりついた。
「作戦中だぞ!お前は何者だ!」
ユーコフがハッチの開け方を模索していると、鉄巨人から声がした。
しまった、こっそり開放するつもりだったのに鉄巨人にバレてしまった。
こうなっては仕方ない。鉄巨人の正面に立って問答させよう。
「僕はユーコフ!ユーコフ・ナナロだ!このユーコフ様がお前の破壊活動を止めに来てやったぜ!」
「ふ、ふはは、人間にも猫にもなれぬ猫獣人か。ちょっと魔法が使えるからって、調子に乗って人間様の行動を止めるんじゃないわよ」
中は女性、獣人じゃない。
「お前こそ、どこの組織のものだ!なぜこのような破壊をする!」
「私たちは祖国を奪還する!この島は、お前たちが我らの血を代償に奪った我らの宝だ」
「血を流させようとしているのはお前も同じだろう、それとも『わたしの戦いは聖戦だ』とでも言うのか?」
「そうよ、私は自分の人生すべてをこの戦いに犠牲にしてきた。だから私にはこの島を破壊する権利がある。人生を賭けてこの戦いに望んでいる」
「この島にいる、家を破壊された人たちに人生が無いかのような言いぐさじゃないか」
「オロゲート人に人生だって?考慮する価値もないわ。あんただって猫じゃない。猫のくせに人間づらしてんじゃないわよ!」
問答をしかけたのは僕。そしてひどいことを言っているのは向こう。
猫獣人であることを侮辱された。これだけで戦う理由になるだろう。
「取り消せねえぞ、ガチムチ鉄子ちゃん。あとはその鎧を剥がして全裸スッポンポンになったお前を、オロゲートの人たちに引き渡してやる。どうなるだろうな!」
──投てきモード修正、戦闘弾の充填に入ります。
機械音声のような声でそう言ったと思ったら、鉄巨人は肘、膝から大きく蒸気のようなものを吹き出し、両手にエネルギーボールを溜めはじめた。
エネルギーボールの充填にどれだけかかるか知らないが、素直に待ってやるほどのお人好しでは無いんだぜ。
ユーコフは異次元空間に繋がるポーチから魔剣「夢拵」を引き出した。
◇◇◇
ユーコフは、拠点である汐見小屋で、カークと、剣での戦い方を話し合った。
カークは言う。
「剣を使った戦闘が上手くなりたいと思う場合、剣を使った戦闘以外のことをよく知らなければいけない。
俺は魔術師で、剣士ではないからだ。
例えば、異世界でモンスターと戦うだろ?モンスターと戦う場合は、さほど難しいことを考える必要はない。
どこの世界であろうと、モンスターはあまり戦闘に対して工夫を凝らさないんだよ。
そこにキバがあり、爪があるなら、そのキバと爪で攻撃してくるだろうと思うし、ほとんどの場合間違ってない。
大型のドラゴンにしたってそう。ブレスを吐くことももちろんあるけど、そこにあるのは見た通りの攻撃が来る。
しかし、人間や、獣人や、魔人、魔族の人間という意味での魔人なんだけど、そういう人と戦う場合は、相手が戦闘に対していろいろと工夫してるだろうな、ということは想定していないといけないんだよ
例えば、そうだねえ、簡単なところでは落とし穴を掘っている。または、実は剣の先が弾丸のように飛んでくるとか」
「それはズルイんじゃないか」ユーコフが言う。
「そうだね、ズルい。ズルだ。剣士としての矜持があるなら、そんな戦いはすべきではない。ユーコフはそう思う?」
「そう思うよ」
「であれば、俺はユーコフと戦う時には、こっそり落とし穴を掘っておいて、知らん顔しておく。
ユーコフが死んでしまった後に、後で難癖つけられたら大声で、俺がそんな卑怯な事をするわけないだろう!と、言う」
「ずるい」ユーコフがそう言うと、
そばで聞いていたカナリアが涙目になってしまった。しまった、そんな例えにしたものだからだ。
カークは、カナリアが泣きそうな顔をしていることに困ってしまった。まずい、本気にしちゃうんだ。
「例えばだからね、俺たちが戦ったりはしない」
そう、カークは言い、カナリアも、ウンウンわかってるとうなずくのだけど、何も言わずに涙を流す。
しまったなあ、気を付けないといけない例えだった。と、カークは思う。
「剣の話はよそう、戦闘というのは残酷なもんだ。そして俺は魔法使いなので、剣士にとってずるいことも平気なんだよ」そうカークが言うと
「であれば、僕もカークのような魔法剣を使いたい」とユーコフが言う。
「それじゃ、ユーコフの剣をもう少し見せてくれないか?」
夢見る女王陛下からもらいうけたばかりのユーコフの剣「夢拵」
夢拵本体はただの柄である。柄をオリハルコンインゴットに押し込むと、剣を引き抜くことができる。
ポーチから再度取り出すと。そこには以前みたような大剣ではなく、オリハルコンでできた日本刀があった。
刃紋はなく、刀身はすべて鏡面のように磨き抜かれている。
「場所や状況によって形状が変わるのかな?」
「大剣の方がかっこいいのに。自分の意思では変えられないのかな」
ユーコフの刀をテーブルに置き、カークがテーブルにセットしている水晶玉を光らせると、占いの結果が出てきた。
「どうやら、ただの剣じゃないね。かなり強力な魔術反射の効果がついてる」
「わ、魔法剣だ、やったあ」カークの言葉にユーコフが喜んだ。
「おそらく、この剣であれば俺の異次元剣も効かないし、反射する」
「どうなるの?」
「俺の剣の方が次元の狭間に落ちる」
「へえ」
三人で浜辺に出た。
「こいつを斬ってみろ」
カークが魔術で火球を作り、ふわっと弧を描くようにユーコフに投げる。
ユーコフは火球を芯で捉えカークに撃ち返した。
「うわっ!」火球は反転し、速度を上げてカークに返ってきた。
思った以上の効果である。
「海に向かって反射してみてくれ、できる?」
「できると思うよ」ユーコフは余裕である。
カークが火球をいくつか投げるが、危なげなくユーコフは海に斬り飛ばした。
「わたしもやりたい!」
カナリアも混ざって、ユーコフに氷や電撃や風や土や異次元。様々な球体の魔法を投げたが、ゆっくりした速度であれば、ユーコフはサイズ問わず危なげもなく海に反射することができた。
魔法がかかっていない玉は反射できない。反射はできないが、ただ切ることはできた。
粘水の魔法でカナリアが砂だんごを作り、カークはユーコフに、今度は様々な速度で投げつけた。
ユーコフは何度かだんごを身体に当てられていたが、来るとわかっている玉はかなりの精度でタイミングを合わせることができるようになった。
その日、午後は一日中、そうやって魔導弾を反射する練習をした。
夕日が沈むまで。
◇◇◇
25mほど距離をとり、鉄巨人を前にユーコフが取り出した夢拵の形状は、内部が空洞の大型パイプ状の武器である。
「なぜ、このタイミングでこれが出るんだ?」
ユーコフが取り出したオリハルコンバット。
確かにオリハルコンでは鉄巨人の皮膚を切りおとすことはできないが、魔力の切れ目、鎧の継ぎ目を狙えば無力化できるだろうに。
それなのにこんな金属パイプで戦えというのか。
「戦うための武器がそれ?せめて大砲を持ってこないと、わたしにはヒビも入らないわよ!」
鉄巨人のエネルギー充填態勢がつづく。そろそろ撃てる状況になるだろう。
鉄巨人のエネルギー充填を待たずに攻撃するつもりだったが、ユーコフは待つことにした。
「来い!撃ってこい!お前のださいハンドメイドアクセサリーを粉々にしてやんよ!」
夢拵を八相にかまえ、左肩を鉄巨人に向ける。バッティングの構えである。
エネルギーがおそらく溜まったのであろう、鉄巨人のエネルギーボールには強大な魔力が凝縮されている。
鉄巨人は軽く両手を振りかぶり、投てきのスタイルにはいる。
「殺すのは嫌だったけど、猫なら死んでもいっか。殺人にカウントされないわよ、っねええ!」
サイドスローの要領で、エネルギーボールを全力で投げる。
ユーコフに向けて放たれたエネルギーボールはユーコフの眉間をかすめ、風圧で服を揺らしながら後方へ飛んで行く。
後方で爆発音が聴こえる。
「触れたら爆発するエネルギーボールなのか?」
後方を見やることなく、鉄巨人の次の動作を待った。
「私の魔法は三打必滅。一度の充填で三発の弾を投げることができるのよ。
次は当ててあげるから、どうかそこから動かないで、これは命令よ!」
「おや?自称サバサバ系かな?同性にはモテます!ってな」
「死ねって言ってんのよ!」
言葉とともに放たれた二発目のエネルギーボールも、同様にユーコフの後方で爆発した。
どんな威力かわからないが、鉄巨人を無力化するためには、3発目は必ず打ち返さねばならない。
それは鉄巨人にとっても同じである。
「危ない女だな、後ろに人がいたらどうするんだ?」
「あんたが避けるのが悪いんでしょ、あんたが避けなきゃ後ろは破壊されないわよぉ」
「怖い怖い。まあしかし、球筋は見極めた。次はしっかり当ててこうぜ!」
「言われなくてっ……も!」
時間をおかずに鉄巨人は最後のエネルギーボールを放つ。
ユーコフは、迫りくるエネルギーボールから目を離すことなく芯を捉え大きく打ち返した。
ガイーン!
オリハルコンの金属パイプとエネルギーボールの衝突音が平野に響き渡る。
ボールはライナー性で、直接アルプスの方へ突き刺さり、山の中腹で小さな爆発が見えた。
「なんっ……だと…………撃ち返した?」鉄巨人から驚嘆の声が漏れる。
「口ほどにもないな、さて、僕は次の充填を待つほど優しくないぞ、お前を脱がして市中引き回しだ!」
そうユーコフが言い、鉄巨人に迫ると、物陰から武装軍人が現れて、ユーコフに魔導銃を突きつけた。
鉄巨人が助けを呼んでいたのだろうか。
ユーコフはおとなしく両手をあげ、彼らに捕縛された。
◇◇◇
カナリアは孤児院にいた。児童養護施設とも言うのだ。
孤児院は長い坂をのぼった山の中腹にある。古城を改築して孤児院としている。
もともとこの地で男爵の地位にいた家系の方が始めた孤児院であるという。
この孤児院では以下のことを重視している。
・満腹主義──おなかいっぱい食べさせる。盗むの禁止。
・家族主義──保育士一人に子供10数人という家族を形成させる。孤独禁止。
・密室主義──こどもひとりひとりと向き合う。先生にだけは教えてね。
・手に職────私設小学校で卒業までに魔術を含めた生き抜く技術を学ばせる。ひとりで生きろ!
こういった取り組みを他の施設から取り入れ運営している。
「お城に住めるなんて素敵。お城が自分のおうちって言えるんでしょ」
カナリアは他意なくそう言ってしまったので、孤児をばかにするなと喧嘩になったことがあった。
しかし、この施設を「卒業」した者の中からは、実際にこの城で育ったことを誇りに思うものもいたようだ。
孤児院の院長ジョージ氏は
「カナリアさんもここにいる間は、一緒に学校に行ってみんなと寝泊まりしてください」
という。
カークは当然施設に入れない年齢だし、兄であるユーコフも野宿で大丈夫。と言って私を置いていった。
カークは「今回の案件は互いに敵対する場合も考えられる」と、不穏なことも言っていたのでカナリアは不安になった。
最悪の場合、これからずっとここで暮らすこともありえるだろう。
兄であるユーコフがそうはさせないかしら。きっとそうだろうけど、万が一独りぼっちになったら。
そんな風に思っていると、鳥獣人の男の子が声をかけてくれた。
「よう、お前どこからきたんだ?」
「わたしは、別の世界からきたんだよ」
「ふうん、別の世界か。その世界にもおいらみたいな鳥獣人はいる?」
「あんまり見かけないかな?でも私のお兄ちゃんは猫獣人なのよ」
「へえ、猫獣人!かっこいいなあ、おいらも猫がよかった」
「鳥もかっこいいわよ。クチバシとかシュっとしてて」
「えへへ、サンキュー」
男の子の名前はサム。ホークのサム。彼の両親は鉄巨人の来訪から職を失い離散した。
彼も施設に入って3か月程度のものである。しかしその3か月は子供達の成長に大きな影響があるようだ。
彼の母親は、鷹である夫と農薬散布の仕事を請け負って生活していたが、鉄巨人のために仕事が無くなり、オロガルタへ移住することになった。
オロガルタで安定して仕事が続けられるようならサムを呼び戻すという約束をしているらしい。
鉄巨人が来訪して、そういった境遇の子供は毎日のように施設に来るようだ。
古くから施設にいる年長の女子ミナミが、カナリアをからかってイタズラをしようとした。
「あなた、良いベルトを持っているわね、私のと交換しましょうよ」
そう言い、彼女がつけている縄の紐をとって、渡して来た。
カナリアは、ベルトが欲しいなら、と、その交換に応じた。
次の日から、その女子はカナリアをターゲットに決めたらしく、服も靴もすべて交換することになった。
「おい、カナリア、お前それでいいのか?」
「いいよ、彼女の方が大変なんだから」カナリアはみすぼらしい服になり、カナリアが着ていたレースのついた服は年上の少女が着るようになった。
「お前はすごい女だな。だけどね、今はお前のほうが年下で弱いんだ。弱いものから物を奪うのは、強奪だぜ」
「だめよ、私はすぐにこの施設から出て行くことができるんだから、私のものはあげていい」
サムには、カナリアがなぜそう言っているのか理解できなかったので、年上のいじめっ子少女ミナミに報復をすることにした。
ミナミはサムにとっても年上だったが、サムは担当の大人、支援員にカナリアのことを告げ、支援員が動く前に少女に肉体的報復を与えた。
次の日、支援員といっしょに少女は、ベルトや服を返しに来たのだが……
「それはもうあげたものよ、私のはこっち。」とカナリアは言い、支援員を困らせた。
支援員は
「みんなの服は、どんなものでも寄付してくれた人から貰った大切なものなの。子供同士で施しをしあうのはダメ」
と言う。
孤児院の院長であるジョージ氏は
「カナリアさんは人を助ける立派な心を持っている」と褒めてくれた。
サムは
「カナリアはバカだから社会に出たらすぐに丸裸にされるぞ」と言った。
起こった事実に対して人によって感じ方が違うが、それらの違いを受け止めるほどカナリアは大きくなかった。
良い事をして面倒が起きた。とカナリアは単純に認識した。
カークのいうように、あまり誰かの意見に流されるようなことはするまいと思ったのである。
そんなことがあってから、サムはいつもカナリアの面倒を見てくれた。
◇◇◇
さて、毎日鉄巨人は家を破壊する。
その音は島中に響き渡る。
「あれがわたしのお兄ちゃんよ!」
と、カナリアはサムに、空を飛ぶユーコフを指さして言った。
ユーコフは、鉄巨人と対峙し、アルプスへとエネルギーボールを撃ち返す。
その姿を、カナリアとサムは孤児院からずっと観測していた。
ユーコフの撃ち返したエネルギーボールは、孤児院から離れたところに着弾した。
カナリアとサムは孤児院を抜け出してエネルギーボール着弾地点を探検した。
やがて森にうがたれた小さな破壊痕を見つけ、
「お前の兄ちゃんすげえな」とサムは言った。
「そうよ、お兄ちゃんは最強なのよ」とカナリアは得意げに言った。
サムはその日から、孤児院の日課や学習と別に、棒を振る訓練を開始したのである。
ユーコフのように、鉄巨人の凶弾を撃ち返すために。
◇◇◇
作戦会議である。
カークは市役所詰め、カナリアは孤児院暮らし、ユーコフはなんと鉄巨人グループに監禁中。
「久しぶりだが、みんな元気?」カークが互いの居場所がわかる魔道具、発振石を使って会話を試みる。
「ちょっとまって!すぐかけなおす!」とカナリアが言う。
「大丈夫だよ、両手縛られてるけど会話はできる」と、ユーコフが言う。
「わたしこのまま孤児院暮らしかと思っちゃったじゃん。連絡があってよかった」
「僕は監禁中だよ、沖の船の中だと思う」
「二人の位置はこっちからも把握してる。助けてほしければ助けに行くけどどうだい?」
「わ、私は大丈夫」
「僕ももう少し情報が知りたいかなって感じ」
「でも、連絡してくれたってことは、カーク、なにか終着点が見えてきたってことでしょ?」ユーコフが言う。
「ああ、うーん、どうかなって感じ。そっちの情報とも照らし合わせたいな。
俺がわかってるのは、オロガルタの現在の首相が、オロゲートを経済特区にしようとしているということだ。
オロゲートは、オロガルタにとってもペイセンにとっても悪い歴史を重ねすぎたので、両国ともに未来への活気を失ってる状況らしい」
「未来への活気って?」
「どうせ俺の国は悪い国家なんだと、お互いが思ってしまうことらしい。実際に、家を壊されて半数以上の人が
『まあそれだけのことを俺たちもやってきたし』と言っているのを聞いてきた」
「それは、興味深いね」
「今、オロガルタは若い人たち向けに『自国の過去の悪行の歴史』を教育しないように改革している」
「ええ!?ひどくない?」
「うん、やられた側にとってはたまったもんじゃないね。だけど、悪行の歴史があるために国民が未来に対して希望をもてなくなるというのは、まあ、良くはないだろう。おじちゃんが悪いことしたのを、ちっちゃい子に責任をとらせるみたいな良くなさがあるじゃない?」
「やられた側はどうなるのさ」ユーコフが食い下がる。
「現時点の法に照らして対処する。悪い歴史があったと認識していても、賠償その他はすでに、70年前の条約締結時点で完了しているという」
「うーん、やられた方が納得するかな?」
「納得しないんだなこれが。だから、オロゲートはずっと暗いままなんだ」
「え、だからお互いツライ過去は忘れて新しい体勢に持って行こうよというための鉄巨人なの?」
「そうだろうなと思ってる。そうじゃなきゃ説明できない。オロゲート独立派が、経済特区派を説得してるんじゃなかろうか。でも確証が持てない。だからユーコフの調査内容を教えてもらいたいんだ」
「うーんそうか、お役に立てるかわからないな」
ユーコフが現状を話す。
「僕は今、ポーチを奪われて牢に入れられている。指輪として付けている発振石が奪われなかったのは幸いだったよ。
鉄巨人に乗っていたのは人間の女の子だった。歳は僕より少し上くらい。
鉄巨人の魔法は、エナジーボールを3回ぶつけるというものだ。三打必滅と彼女たちは呼んでいた。
僕は、鉄巨人そのものがエナジーボールを発生させていると思ってたけど、鉄巨人の周りに8人の守備が必要らしい。
1日に放てるエナジーボールはおよそ100球。
補助のメンバー8人も同時に魔力を高める必要がある。
鉄巨人を中心に8角形の魔法陣の上に立ち、魔力を高めて放つ。
彼らはそれを「不屈の九人」と呼んでいた。
銃を持つものもいたけど、それも魔力で堅い石を飛ばすタイプの銃だった。制圧能力はあるけど殺傷能力は無さそう。
自分たちを『祖国を開放する』者たちと言っていたよ。聖戦だと思っているようだった。
あ、なぜかわからないけど、「不屈の九人」の中心は18歳までの少年少女でなければできないらしい」
「ありがとう、良い情報だと思う」カークが答える。カークは頭の中で不屈の九人の魔法がこちらで再現可能か考えている。
「で、鉄巨人に乗ってた女は本当に嫌なやつでさ、めっちゃ殴られた。こっちは縛られてるのに」
「え、殴られたの?大丈夫?」カナリアが心配で声を出す。
「大丈夫だよ、あいつ、俺がエナジーボールを撃ち返したもんで、たぶんイップスになってる」
「確かに、ユーコフの撃ち返し以来、鉄巨人の破壊ペースは落ちてる」カークが言う。
「イップスってなに?」カナリアが質問する。
「精神的な要因で、自分の思い通りに身体が動かなくなることだよ、俺が撃ち返したのが悔しかったんだろう、毎晩数発殴られる」
「嫌な女なのね」
「ああ、最悪な女だ。でもね、カーク。彼女は『わたしには破壊する権利がある、祖父を殺された』と言ってたんだよね」
「うーん、やはりペイセン人か」
「そうなんだけど、それだからってそこまで言うかな?」
「まさか、ルゴールに殺されたマーティアスの孫なのでは?と思ってる?」
「その可能性があるなと。そうでもなければ説明つかない、あの破壊に対する熱量に」
「わかった。それも良い情報だ。そこから追ってみる」
「あのね、カーク」カナリアが報告する。
「私の服を他の子と交換しちゃったんだけど、それはダメなことだったかな?」
「服を交換?いいんじゃないか?」ユーコフが言う。
カークはいまひとつどういう意味かわからなかった。
カナリアはカークにサムと支援員さんとジョージ氏とその女の子の話をした。
カークは少し考えて言った。
「カナリアがそれが良いだろうと思ってやったことなんだから、良いじゃないか。心配ごとがあった?」
「みんなが別の意見を言うことがちょっと怖いなと思ったのよね」
「俺は、ユーコフと同じ。カナリアが良い事をしたと言うのは良いと思う。ここの人たちと違って俺たちはまあ、そこまで服に困ってない。安物でよければどんどんあげちゃっていい。次のカナリアのお洋服も安物になるかもしれないが。
一番大事なもの、これだけはあげてはいけないもの。それがわかってて線が引けるならなんでもあげていい。特に身体を傷つけられることははっきり拒否しろよ、とか言うのが正しいんだが、カナリアなら子供同士の暴力なら楽々やり返せるだろ。」カークが笑いながら言う。
「私だってあげたらいけないものはいっぱいある。だけどあげていいものだからあげちゃった。なんでそれが悪いと言われないといけないのかなって」
「ええっとだね、カナリアから綺麗な服をもらった女の子は、別の子にも同じように『交換しろ』と迫ってさせてる可能性がある。
もしかして、カナリアとの交換に成功したからこそ、味をしめてそこから人を脅す、嘘をついて奪う。ということに慣れてしまったかもしれない。
もしそうなら、カナリアがベルトをあげちゃったからその女の子は正しい倫理観を持てなくなってしまったかもしれない。
カナリアが将来の大泥棒を産んだという起点になるかもしれない。かもね、ばっかり言ってるけど、その理屈はわかる?」
「うん。わかる。というかだいたいわかった」
「今回この島で起きたことも、ほとんどすべてが『こうすればみんなが幸せになれる』と信じて行われた悲劇だといえる。
余計なことを誰かがしたから、誰かが不幸になるのだ!と言ってる人はいっぱいいるだろう。
だけどね、カナリア。誰かになにかをしてあげるという気持ちが失われてしまうのは良くないと思うよ、ジョージ院長さんもよくよく考えてカナリアを褒めてくれたんだと思う。
だから、まあ、カナリアが大泥棒を産んだとしても、悔やむなよ。俺たち三人でその泥棒ちゃんも懲らしめてやろうぜ」
カナリアは、そこまで聞いて言う。
「カークが正しいと思う」
カークはそれに答える。
「いや、正しいのはカナリア、お前自身の考えだよ」
「カークは、そこで、カナリアがベルトをあげなくっても正しいっていうだろ」ユーコフが言う。
「そういうことだね」カークは笑って答える。
カナリアは、最後のユーコフの言葉はよく理解できなかった。というか、矛盾を矛盾のままで解決できるほど成熟していないのである。
だけど、ちゃんと話してよかったなと思えた。
「そんで、その、サム君なんだけど」カークが話を続けた。
「もし、サム君が『不屈の九人』で鉄巨人を退けることができるとしたら、やると言うだろうか?」
◇◇◇
「やるよ!やるに決まってる!おいらがあいつを倒すんだろ!」
サムは瞳の奥の燃える想いを隠さない。
カークは、ユーコフの救出は後回しとして、孤児院で、市長と院長に説明を行った。
思春期特有の精神状態というものがある。
カークは、「不屈の九人」の魔法を作った人間は天才かもしれないと考えた。
この島を取り巻く状況は、複雑で多岐にわたる。
老人たちが起こした悪事の尻ぬぐいを子供達にさせる。それは明らかに不公平だ。
産まれた時代が悪かったと諦めろって?諦められるものか。
そうは言っても、思っても、子供達は自分の親たちを殺すことなんてできない。
子供達はそんな親たちのそれぞれの精神を受け継いで、いびつに成長させられる。
「不屈の九人」発明者は、そういう世界を壊そうとしたんだ。
子供の立場で、子供の強い思いで世界を変えさせる。
これからの世界を作るのは子供達で、子供達こそ選択の権利があるのだ。
────しかし、その結果、鉄巨人による島の破壊が行われ、多くの者を不幸にしている。
同時に、鉄巨人の「活躍」に喝采を送る者もいるのだろう。
これは大人がまた子供をコントロールできなかったための悲劇である。
子供は大人たちの想いを受けて成長し、それを自分の考えと思い込み戦いに臨むのだ。
であれば、すべての子供達に、「不屈の九人」を起動する権利を持たせればいいのだ。
互いの強い思いを胸に、ボールに向かい、相手を打ち負かす。
市長が言う。
「現在の破壊を止めさせるには最適であると思います。
カークさんの調査では、鉄巨人の存在は、オロガルタの首相とペイセンの大統領による合意があったということですが、鉄巨人がすべてを破壊して、この島を行政特区、経済特区に作り替えるという話は我らにとっては許しがたい」
ジョージ院長が言う。
「鉄巨人の少女「アリサ」がマーティアスの孫であるならば。確かに破壊してもしょうがないですが、そんな思いを利用する大人がいるのは許せないですね。子供は伸び伸びと成長しないといけません。
その伸び伸びさが、誰かに歪められた伸び伸びさだったのであれば、その誰かに対して目に物を見せてやりたいです。
しかし、不幸な歴史を勝手に積み上げたうえで、子供に『あとは、お前たちで決めろ』というのは無責任すぎませんか。異世界人でありやがて旅立つ身であるユーコフ君はともかく、サムにそういった責任を負わせることも慎重に検討してほしいです」
カークが言う。
「首相たちの思惑は、上手くいくと思いました。あと半年もかからず、この島はさら地になり、ペイセンもオロガルタも、負の歴史をすべて洗い流してくれたアリサに感謝したかもしれません。そしてアリサはただ一人で現在のオロゲートの人々の恨みを受け止める人生を歩みます」
「そいつはかわいそうだ」ジョージ院長が空を仰ぐ。
「なので、平等に、不屈の九人を公開します。
取り急ぎ、街を破壊されたオロゲートの孤児が新たに持ちますが、おそらく、疑惑の剣豪ルゴールの子孫も不屈の九人を持ちたがるでしょうし、帝国軍人とオロゲートのハーフの子らも持つべきでしょう。
誰もかれもが、このオロゲート島を平和にしよう、平和にしたい。という強い意思で不屈の九人を自らのものにしたがるでしょう
強い想いに縛られた、不屈の九人同士のわざと力のぶつかり合い。
想いが強い方が勝つ。勝ったものがすべてを得る。
それは、関係するすべての大人たちにとっても、必要な『儀式』になるかもしれません」
市長が言う。
「この地が行政特区になるのはかまわない。しかし、その方法はこの地に住んでいる人が選ぶべきだ。
その結論は子供達同士に決めさせる。それが本当に正解なのかはわかりませんが、首相を納得させるためのオロゲート憲法の草案を作るのは私の役目でしょう」
ジョージ院長が言う。
「安全への配慮を欠くことのないよう、お願いいたします、私も勝負のルール制定に加わります」
こうして不屈の九人を操る子供同士の、高度な魔法戦闘による、オロゲート争奪戦が行われることになった。
◇◇◇
「さあ、やってまいりました、夏のバカンスもクライマックスシーズンです世界中の皆さまごきげんよう。
オロゲート島の今後を占う大切な一戦が本日このオロゲート島平野部で行われます」
この世界にはテレビがないので、すべて音声放送で伝えられる。プライヤー氏は、オロゲートのラジオ局のパーソナリティらしい。
「実況はわたくしプライヤーが務めさせていただきます。
オロゲート島を一望できるこのローゼンマイヤーの古城から実況をお送りいたします。
この古城は、現在孤児院に使用されています。
本日のオブザーバーには古城の持ち主であり孤児院の院長でもあります、ジョージ院長さんにもお越しいただいております。
解説にはカークさん。
そしてもう一人のオブザーバーとしてカウフマン市長。そして先日大きな反撃弾を撃ってくださいました。
ユーコフ・ナナロ選手にも来ていただいております。よろしくお願いします」
そう言って、プライヤー氏はカークたちを見る。
「「よろしくお願いします」」「よろしくどうぞ」「ッス」
「まず、先日の大きな反撃弾、あれは素晴らしかったです。あれがあったから今回の大会が決定づけられたと言っても過言ではないでしょう。あの一撃について、ユーコフ選手一言お願いいたします」
ユーコフはちょっと得意げになっている。
「はい、あの一撃は、どこに撃つかも見えていたので問題ありませんでした」
カークが、おいちょっと落ち着いてくれと、脇腹をつつく。
「…………コホン……今日は鉄巨人さんの応援もできればと思っています」
「ユーコフ選手は鉄巨人の応援も、とおっしゃいました。カークさん、街を破壊した鉄巨人への応援は必要ですか?今回の発端とそのルールを再度みなさんにご説明いただいてよろしいでしょうか」
「はい、異世界人のカーク・ドゥマンドリです。皆さま私をこのような場所に呼んでいただきありがとうございます。
およそ4か月前、鉄巨人が街を破壊するために上陸した時、ほとんどの大人たちが
『破壊されても仕方ないことをしてきた』と考え、ほとんどの子供たちが『よくも我が町を』と怒りました。
これに対し警察は無力であったにもかかわらずオロガルタの政府が軍を派遣しなかったため、市民はみな感情をひとつにすることができず、バラバラに離散していきました。
しかし、鉄巨人にとっての誤算がここにいるユーコフです。ユーコフは鉄巨人のエネルギーボールを撃ち返すと、鉄巨人の魔法『不屈の九人』を公開しました。
これは、想いの強いたった一人のアタッカーを、8人の守備が支えるという魔法です。
エースと呼ばれる一人は、8人の助けによって強大な力を得ます。それは参打必滅の魔法です。
エースによって放たれるエネルギーボールは、物質に三度当るとあらゆる物質を消滅させます。
しかし、不屈の九人のピッチングによって放たれたボールは、不屈の九人のバッティングによって返すことができるのです。
先日撃ち返したユーコフ選手は、不屈の九人とは別の方法で反射しましたが、この街の技術でも、反射弾を撃つことで弾き返すことができました。
反射弾と、不屈の九人を組み合わせることにより、安定した反射をもたらす鏡の魔法剣、いわゆるバットを作ることができます。
鉄巨人は、孤児院の若きエースによって倒すことができるのです。
では肝心の今日のルールです。
鉄巨人は、これまで同様に島の建物を破壊します。
投てき球数はおよそ21球、7棟を破壊します。
防御側は、家を守るために防御します。
3度投げる中、1度でも撃ち返すことができたら、その建物は破壊を免れます。
3度、違う色のエネルギーボールを投てきする必要があるからです。
ユーコフ選手との戦いで使用した爆破弾は、今回使用を禁じています。もし使用したらその時点で敗北です。
孤児院チームは、鉄巨人の乗って来た船を破壊します。
投てき球数はこちらも21。しかし守るべきものはたった1隻の船です。
防御側、鉄巨人は、船を守るために防御しますが、3度連続で返せなかったらその時点で敗北。
彼らの作戦は終了です。鉄巨人が船を守り切ると、彼らは安全に逃亡することができるでしょう。
長くなりましたが、これが今回のルールです」
「ありがとうございました、では市長、双方にこの戦いを行うメリットはありますでしょうか?」
市長が答える
「はい、勝った者には選挙権のない子供や、この地に住んでいない外国人であっても、1年間のあいだ、このオロゲートでの投票権100人分をさしあげます。これは貴族と近い待遇になっています」
「なるほど、政治参加の投票権が戦闘によって勝ち取られる。これは熱が入りますね」
「はい、ぜひ血や涙を流すことなく未来をつかみ取ってもらいたいと思います」
「先攻は鉄巨人チームです、指定されているのは、孤児院チームのエース、サムの生家ですか。これは最初からクライマックスですね」
「はい。サム君には頑張ってもらいたいですね」
涙は流れるのでは?と、ユーコフは思ったが言わなかった。
◇◇◇
一か月前
船の中の独房にて、両手を縛られ、閉じ込められているユーコフに、マーティアスの孫アリサが語り掛ける。
「わたしたちの活動を支援してくれていた人から、活動にストップがかかった。あんたが何かしたんでしょ?」
「やあ、アリサ。今日は僕を殴らないのか?」
「答えなさいよ」
「知らねえよ」
「夜中にコソコソどこかと通信してたでしょう?言いなさいよ!」
アリサはユーコフを殴り、口を割らせようとする。
「お前たちの魔法『不屈の九人』は、オロゲートの人々に公開した。もうあれは秘密の技術じゃない。
弱点もわかっているし、対策も可能な能力に成り下がった」
アリサはユーコフを殴りながら言う。
「あんたのせいで!あんたのせいで!やっとここまで来たのに!殺してやる!」
ユーコフは殴られながら言う。
「お前たちは終わりだ。どこの国の組織かもわからないお前たちは、オロゲートの民にひれ伏し罪をつぐない、すべての未来を失うんだぜ」
「黙れ!黙れ黙れ!」
アリサの手が激しさを増す。
「アリサ、もうよせ」
「兄さん」
アリサの兄という男、カークと同じくらいの年齢のこの男は、若くして船長と呼ばれていた。
目つきが鋭く、何を考えているかわからないこの男は、ユーコフの頭を掴んで目を合わさせた。
「ユーコフ君、もう少し、知っていることがあるだろう?
私たちのスポンサーは、オロゲートでの公開勝負に参加せよと言ってきた。そして、ユーコフ君を開放せよとも言っている。わけがわからない」
「船長さん、僕は人間同士、勝負は平等、戦いはフェアじゃなくてはいけないと思ってるんだ。
やられる相手も同じ力を持っている方が、フェアだろ?」
「いまいましい猫獣人だな」船長が答える。
「アリサはボールを投げることは上手いだろうが、ボールを打つ方はてんでダメだ。なにしろやった事ないんだからさ。
僕を開放するんなら、打撃コーチをしてやろう。勝負を受けなきゃ船長さんたちの計画は本当の本当に終わりだ」
船長は仕方なく、アリサに命じてユーコフを開放させた。
アリサは、船長から勝負の内容を聞いて顔を青くした。
「わたし、私が負けたらどうなるの?」
「俺たちの活動は本当に終わりだ。オロゲートで捕まったら一生牢屋暮らしだ」
「そんな勝負に勝ったとしても家に帰れる?」
「貴族の待遇と市長は言っている。どこまで信用できるかわからないが、アリサが勝たなくても、船さえ無事なら再起は可能だ。エネルギーボールを撃ち返す精度をあげれば、俺たちにも未来はある」
ユーコフはポーチを返してもらったのでいつでも帰還できる状態になったが、
毎晩涙目で自分を殴りに来るアリサに、少し同情できるところを感じたので、協力しようと考えた。
「やる前から負ける心配をするようでは負けるぞ、想いの強さがこの魔法の強さなんだから」と、言ってやった。
船長はユーコフに、打撃コーチをお願いした。
その日から、ユーコフは粘水でかためた砂だんごを、船の上で鉄巨人に打ち返させる練習を重ねさせた。
不屈の九人の守備8人にも、カークが組んだ反射魔法を伝え、反射のための魔術訓練をさせた。
「一球一球に集中しろ!一度も後ろに送らない気持ちで球に臨め!」
「ハイ!」
「やる気がねえならやめちまえ!」
「やる気あります!」
ユーコフは、アリサに厳しく指導した。
縛られて、数日殴られてきた恨みを晴らしたいという気持ちもあったが、アリサが自分より年若いユーコフに殴られても素直に訓練についてくるので、必要以上に厳しくすることは控えようと思った。彼女は本当にオロゲート奪還に人生を掛けているのだろう。
沈む夕日を背に、アリサは投球練習と打撃練習を延々と続けたのである。
◇◇◇
サムは、鉄巨人を恨んでいる、わけではない。
両親は鉄巨人のせいで、自分を置いてオロガルタに行ってしまった。
しかし、両親がいないのは寂しいが、孤児院での生活は悪くない。
今までいた学校よりもたくさんの時間学べるし、質はどうあれ食事も出る。
協力しあえる仲間ができたし、なにより、最近施設で暮らすようになったカナリアがかわいい。
みんなが鉄巨人を怖がって、鉄巨人になすすべなく家を壊されている中、ユーコフさんは一人で立ち向かってエネルギーボールを撃ち返した。
かっこいい。最高にかっこいい。あんな風においらも英雄になるんだ。
と、思って毎日遅くなるまで棒を振っていたが、これが本当に英雄への道なのか疑問だった。
カークは、市長と院長との会合の際に、鳥獣人であるサムに会っている。
「やあサム。練習は順調かい?」
「はいカークさん」
その会合の後、カークはサムに不屈の九人発動条件を伝えていた。
「不屈の九人は、エースである一人の人物に対して八人が編成を変えながら魔力を送る強力な魔術だ。
俺はカナリアを助けてくれた君のことが気に入っているし、きっときみはこの孤児院から他の仲間を探すことができると思う。
カナリアはきっとチームメンバーになってくれるだろう。
だけど、その他のメンバーはサム、きみ自身で探してきてほしい。そして、エースに相応しいピッチング、バッティングを極限まで訓練してほしいんだ」
サムは、その条件に対して不安になった。
仲間はいるが、それほど強い仲間かどうかわからない。
しかも、そんな急造チームでいいのだろうか。
「さっさと答えられないのか?自信がないのか?」
カークは軽く圧をかけてみる。やると言ってくれさえすればカークとしては誰でもいいと言えば誰でもいいのだが、視力がとても良い猛禽タイプの鳥獣人である素材は捨てがたい。
意外と慎重なタイプなのか。
「サム君。ちょっとグランドに出てみよう」カークはそう言い、サムをグランドに出した。
「この棒を持ってそこに立って。僕が砂球を投げるから、軽く打ってみて」
ユーコフにやったように、砂玉を打たせてみる。
20球ほど打たせてみたが、サムの打撃は、常に芯を捉えている。そして見送りが全くなかった。
やはり目が良いのかもしれない。
「サム君やっぱり君はエースになれると思う。しかし、確かに突然エースをやれと言ってもダメかもな。
だがおそらく、結局君は選ばれる。君はエースの器だ。覚悟をいまから決めておきたまえ」
決心がゆるいサムのために、カークは、ジョージ院長に頼んで、全校生徒の前で不屈の九人の説明をし、選抜チームのための全校テストを行った。
打撃テスト、投球テスト、魔力開放テストの三種目である。
どのテストでもずば抜けて強い成績を残したのがやはりサムだった。
少し、サムは自信がついただろうか。
「おいらがやらなきゃ、この島を救えないんだな」サムがそう言うのを聞く。
カークは、鉄巨人ほど速い球が投げられないので、鉄巨人の投球を再現できる射出機を作ってやった。
マシンから放たれる剛速球を見せ、ユーコフはこれを2回見ただけで完全に撃ち返したと言ってみる。
何度か振らせてみたが、どうやらバットに当たらない。うーん、鼻は折ってやったが、返せなきゃ困るなあ。
エースを支える8人は、魔力の開放が上手いメンバーが選ばれる。
魔法に慣れているカナリアが最年少で選ばれ、その他選ばれているのは上級生たち。ほとんど、サムよりも年上だ。その中に、サムといつもつるんでいるサムの親友の男の子と、どうやらカナリアをいじめていた少女も入っているようだ。
カークはみんなの前で、サムの力になってほしい。と言うが、どうすれば良いかわからないので教育のプロに相談することにした。
ジョージ院長は、過度なプレッシャーをかけるのはダメな指導者と言う。
カナリアの支援員さん、ミイサさんは、成長過程を無視した指導をしたらダメと言う。
確かになあ。と、カークは思うし、そうしたいのだが、誰か監督を変わってくれないかと思った。
選抜されたメンバー9人全員それぞれに面談した。
それぞれ個性的な面々である。自分こそがエースであると考えているものがそこそこいたので、互いに競わせることにした。
このうち獣人はサム含め3名。熊獣人と象獣人。どちらも大型だ。
象獣人の少女パオは魔力支援に徹する予定だが、熊獣人のグロットはとても好戦的である。
残りの6名はカナリア含め人間である。
カナリアと服を交換した少女はミナミ。カナリアとはじめは目を合わせないようにしていたようだが、カナリアがコーチである俺の娘と思い込んでいる。
また、カナリアの魔力量がメンバーの誰よりも強いことがわかったようで、これはカナリアさんからいただいたものなのだ。と、ベルトや服を自慢するようになった。
これが良いことなのかどうか、俺にはわからんが、素直に従ってくれるならなんでもいいとカークは考えた。
残り4名のうち一人は女性。彼女は支援員さんと仲が良く、将来は自分も支援員として一生この孤児院で働きたいと考えている少女である。名前はカスミ。正直そういうタイプが選抜に選ばれるとは思わなかったが、恋人といっしょに必ず鉄巨人に勝とうと約束しているらしい。
その彼氏はハスマ。カスミとともに、来年は施設を出なければいけない年齢とのこと。ふたりが最年長なのである。
その二人は、育ててくれた施設に恩返しをしたい。そして、この街を守りたい。だから鉄巨人を退けたい。
立派だ。ハスマ君にエースをやってほしいくらいでもある。
しかし、サムほどに打率が良くない。長年このゲームをやっているならまだしも、ピッチングもバッティングも最近始めたばかりなのだからしょうがない。
残りは二人。そのうち一人はサムの親友イルマ。サムとの友情は施設に入る以前からのものである。
お調子者でムードメーカーで先走るタイプのサムに対して、親友イルマはかなり思慮深いようである。
しかしサムと気が合い、カナリアをいじめたミナミへの報復については積極的に鉄拳を加えたという。
最後の一人はオリヴァー。年齢はハスマのひとつ下。
打つにも投げるにも魔力開放にも、なかなかの成績である。帝国軍人の末裔らしい。
今回の戦いのために、彼の意気込みを聞いてみた。
「私たちは平和のために戦える。このゲームを考案してくださったカークさんに感謝しています」
とのこと。
ゲームではない、そしてまだ平和になってないと言ったのだが、ここまでくればルールのあるゲームだ。と彼は言った。
そういう考え方もよいかもしれない。
サム、グロット、ハスマ、オリヴァー、イルマがエース候補として訓練をする。基本的にはサムがエース。
カナリア、パオ、カスミ、ミナミが確定支援員。
毎日エース選抜をかけて練習をさせた。サムは、別の人に敗れたら降ろされる。
しかし、サムが負けることは一度もなかった。
投球もみな、そこそこ良くなってきた。しかし鉄巨人ほどのスピードが出せるまでには成長できなかった。
その後、何週間かの練習の中で、カナリアは楽しい学園生活を送ったようだ。
「おいらが勝ったらカナリアはおいらの恋人になってくれないか」とサムに言われたらしい。
サムのやる気のために、カナリアは、オッケーするべきか悩んで、カークに相談に来た。
「そうなんだ。ミナミには相談した?」と、カークは聞いてみた。
「したけど、怒ってた。そんなことで島の未来を左右したらいけないって」
「じゃあ、答えは保留にしときなよ」
「うん」
その後、ミナミはずいぶんべったりとサムとイルマの身の回りの世話をしてやっていた。
「私がお姉さんだし面倒みるのは変じゃないでしょ?」と言っていたが、サムがミナミとくっついてくれたらいいとカークは思った。
この三人はいつも一緒にいるようになった。なぜだろうか。カークにはわからない。
9人はとても団結してくれた。誰が欠けてもこのチームワークは得られないだろう。
彼らはそんな青春を見せてくれた。しかし、戦う相手は無慈悲な報復者、鉄巨人。第一試合の守るべき「ホーム」はサムの生家である。
◇◇◇
このゲームに審判はいない。基本的には戦争なのである。
そんな戦争に、思春期の子供にしかエースができない「不屈の九人」を持ち出すのは残酷な話なのだ。
約束の時間になり、鉄巨人は広場にあらわれる。鉄巨人のまわりに、もはやフォーメーションを隠すことなく配置されている8人の守備がいる。
実況のアナウンサー、プライヤー氏がマイクに向かって言う。
「第一試合となりますサムの生家は集合住宅です。アパートの一室が彼の家となっています。
孤児院チームと、鉄巨人が互いに話をしていますが、さあ時間になりました」
ウーーーーーーーー!
島中にサイレンが響き渡る。
「この孤児院特設スタンドからは、鉄巨人の魔力充填の様子をよく観察することができます。カークさん、よくこの情報だけで魔法を分解できましたね」
「ええ、鉄巨人そのものに魔力充填の仕掛けがあると当初考えていたのですが、ユーコフ選手に詳細を調べてもらいましたので、再現ができました」
「さあ、魔力の充填が終わったのでしょう、鉄巨人が投球モーションに入りました。第一球投げました!ストライク!」
カークが言う。
「サム君は動けなかったみたいですね。彼にとっては初めての本番です、緊張するのは仕方ないかもしれません」
ユーコフが答える。
「投球から全く体が動いていません、本番に強くなければ結局は居ないことと同じです」
「さすがはユーコフ選手、ユーコフ選手なら打ってましたか?」
「はい、集合住宅を狙うのはわかっているのです。そしてアリサ、マーティアスの娘アリサ選手は不合理を嫌います。合理的に考え、相手の投げられたくないところ、守るであろう場所意外を狙います。
サム選手は無意識に自分の部屋を守ろうとしました。
アリサ選手はそこから最も遠い部屋を狙うかと予想します。
そのどちらかを選択させておいて、門扉、入口エントランスを狙う。これはアリサ選手の作戦でしょう」
「なるほどありがとうございます」
「おっと、第二球、これもストライク!サム選手の顔色が曇って来たように感じられますね」
「同じ、入口エントランスでしたね、サムの部屋がどこか、意外と鉄巨人軍は情報は持っていないかもしれません、サム選手自身の自爆かもしれません」
「さあ運命の第三球!ストライク!あっけなくサムのアパートが消滅します!」
「まずいですね、サム選手にとっては非常にまずい状況といえるでしょう」
◇◇◇
サムは思う。
おいらは、これまで本当の意味で戦っていたのだろうか。
鉄巨人の放つボールには、本当に鉄巨人の「想い」が乗っていたように感じた。
打てるものなら打ってみろ、というのではない、打ったらお前を殺す!という殺気のようなものさえ感じられた。
これは、ゲームじゃない。戦争なんだ。おいらはこのまま負けるんだ。
チームメンバーは口々に、気持ちで負けるな!お前がエースなんだろう!と鼓舞するのだが、サムは、力なくうなずくばかりである。
オリヴァーが言う。
「お前に投げられないなら、次の投球は俺が投げる。俺はサムと違って家はとっくに壊されてる。家を壊されるショックはでかいんだぜ、きついのはわかる。俺も同じだった。だから俺にまかせろ」
サムは少し考えて言う
「おいらも、オリヴァー先輩と同じ土俵に、やっと立ったってことでしょ。あいつを許さない。やらせてください」
「当たり前だ。エースはお前なんだから」オリヴァーは笑顔で背中を叩いた。
◇◇◇
「つづいて、孤児院チームの攻撃です。ピッチャーはやはり鳥獣人のサム君」
「まだ少し硬さはみられますが大丈夫でしょうか」
「孤児院チームの魔力充填です。非常にスムーズですね、鉄巨人チームよりも強い魔力かもしれません。サム君のエネルギーボールは、鉄巨人の戦艦に照準が向けられていることでしょう」
「想いの強さが勝利を導いてくれるでしょうか、サム君には多大なプレッシャーがかかっています」
「サム君ふりかぶって第一球!投げました、これは大きく逸れました。鉄巨人はその場からボールを追って動きますがバットには届かない」
「よくない状況ですね」
「不屈の九人のピッチングは、一度でも外すと失敗なのです。1度の魔法で三発の魔力弾が打てますが、3度当てなければ目標を消滅させることはできません。おっとサム選手にチームメイトが駆け寄ります」
◇◇◇
カナリアは焦っていた。こんなにあわてているサムを見たのは初めてだったし、チームメイトもみなサムをどう扱えばいつもの調子を取り戻してくれるかわからなかったからだ。
大地に両手をついてうなだれているサムに親友であるイルマが声をかける。
「サム、交代するか?」サムは首を横にふる。
「なら、気合がほしいか?」サムは少し考え首を縦にふる。
みんなで、立ち上がったサムのほおに、軽く平手をいれる。最後になったミナミだけが、大きくふりかぶって渾身のビンタを打った。
「ありがとう、おいらがんばるよ」サムは涙目でそう答えた。
◇◇◇
「第二戦、オロゲート南小学校でしたが、これはサム君、良い判断でした」
「初球撃ちでしたね、彼の真価はここからかもしれません」
◇◇◇
「第二戦の裏、一球目、サム選手の球は鉄巨人の戦艦ど真ん中に当りますが、第二球、これは死の球となりました」
「鉄巨人に直接当てては魔法の効果は得られません。しかし、球はまっすぐ飛ぶようになっていますね」
◇◇◇
「第三戦、ターゲットは魚市場の事務所ビルです。この場所は、オロゲートのみなさんにとっては、非常になじみのある大切な場所だとされます」
「ここでは、鉄巨人が3球目に暴投を見せました。先ほどの鉄巨人への直撃が効いているのでしょうか?」
「事務所ビルの破壊はまぬがれております、しかしサム選手はチャンスを2球見送っております、今回バットを振っておりません」
「ちゃんとボールが見えていると信じたいですね」
◇◇◇
「第三戦の裏、サム選手の投球は少しづつまとまってきたようですが、2球目で鉄巨人は撃ち返します」
「今大会はじめての鉄巨人のバッティング成果ですね、彼女の方も厳しそうです」
◇◇◇
「第四戦。ターゲットは再び民家です。どなたの家かというのは情報がありませんが、これもサム選手初球打ち。みごとな防御を見せました」
◇◇◇
「第四戦の裏、鉄巨人もサムの投球を初球打ち。これは鉄巨人も自分のペースを取り戻したのかもしれません」
◇◇◇
はあっ、はあっ
鉄巨人の中は熱気が抜けず、過酷な環境にあった。
アリサは、死の覚悟を持ってこの戦いに臨んでいる、弱音を吐いたことなど一度もない。
だから、この戦いも、勝利をつかんでみせる。
そう思っていたところに、ストップがかかった。
どうやら、敵の陣営から、水分を補給して休養をとるように指示が来たらしい。
水分など不要だ、今は調子が出ている。このまま続けると言ったが、兄が休めと言ってきた。
ここで休むとリズムが崩れる。そう思うが、少し休むことにした。
◇◇◇
第五戦の裏、あっけなく勝負はついた。
休憩がアリサのリズムを崩したのだろう。
サムは逆に、休憩をはさんで何か調子を取り戻す出来事があったのかもしれない。
サムの球はまっすぐに戦艦に向かい、三度外すことなく、ついに戦艦を消滅させた。
◇◇◇
実況のプライヤー氏の声が響き渡る。
「あー!三度目の球が当たりました試合終了!今日!我が島に新しい英雄が誕生しました!
孤児院チームは、チームメイト全員駆け寄って両手をあげて喜んでいます」
「すばらしい戦いでした、どちらが勝ってもおかしくない、白熱した戦いでしたね」そうカークが解説する。
島に響き渡るサイレンの音が、試合終了を伝える。
「市長、いかがでしたでしょうか」
「いやあ、大変な試合でした。しかし、感動もありました。再度ルールを細かく規定して毎年でも開催したいですね」
「院長、いかがですか?」
「最高でした。わが孤児院からこんなに素晴らしいチームが出るとは。市長が許してくださるなら、孤児院内でもっとたくさんのチームを作って、子供達同士でリーグ戦を行わせたいくらいです」
「ユーコフ選手いかがですか?」
「アリサ選手はバッティングの練習不足ですね。来年があるなら一から鍛えなおしです」
「カークさんもありがとうございました」
「ありがとうございました。勝利チームのエース、サム君のヒーローインタビューも聴きたいですね」
「ああ、そうですよね」その時、別のラインから声が聴こえた。
「放送席放送席!」
「おっと、これは現場アナウンサーのユカちゃーん」
ユカちゃんと呼ばれた女性の明るい声がする。
「ハーイ、サム選手からお話を伺えます、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」サムの声も聴こえる。
「サム選手、勝利おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「勝利の味はいかがですか」
「きつかったです」
「一番良かったプレーはどこですか?」
「それは、最後のピッチングですね、だんだん、球が走って行く感覚が掴めてきたようでした、おいらは打つ方ばっかり一生懸命やってたけど、投げる方が好きかもしれないって」
「なるほど、一番きつかったのはどこですか?」
「それはやっぱり、住んでた家が無くなったところがきつかったかな、正直もう投げ出そうと思ったんだけど、チームメイトのみんなに勇気をもらって、元気をもらって、最後まで戦うことができたのはチームメイトのおかげです」
「最後にみなさんに伝えたい事はありますか?」
「応援ありがとうございました、本当にありがとうございました」
遠くから、サムが孤児院に向かって大きく手を振っているのが見えた。
◇◇◇
市長は言う。
「鉄巨人軍のメンバーは、みなオロゲートの刑務所に入ってもらいます。だけど、これから行政特区になるんだ。
首相と大統領が、アリサ選手ひとりに憎しみを集めてこの島をさら地にしようとした。可能な限り情状酌量してほしいと思う。
今回の孤児院チームは、鉄巨人軍にとっても、島に平和をもたらした英雄であると思ってもらえるように配慮したい。
すぐにでも住民投票をして、オロガルタとペイセンの行政特区として、オロゲートは新しい運用を始めたい。不屈の九人をもたらしてくれた彼らにも、将来的にはこの島に住んでもらいたい」
孤児院の院長は言う。
「これからも、孤児院から人が減る世の中になるように尽力します。できれば孤児院が廃業されて、不屈の九人の選手を育てる仕事だけができれば幸せなんですが」
カークが言う。
「市長が来年も大会を開くと言っておられたので、すでに大会への問い合わせは多数来ているようですよ。
院長先生は、両方やられたらいいのですよ」
大人たちは、うまくまとめるらしい。
◇◇◇
ユーコフは牢獄の中のアリサに面会して言う。
「結果は残念だったけど、4回の裏、あのバッティングは最高だった。アリサさんと一緒に戦っている気持ちで見ていました。ありがとうございました」
ユーコフは敵でありコーチであるが、アリサより年下でもある。最後は敬意を払いたいとユーコフは思っている。
「こちらこそ、ありがとうございました」アリサは、そんな風に丁寧に話をするユーコフに寂しさを感じた。
互いに黙っていたが、堪えられなくなったアリサが言う。
「あの、コーチ、握手してください」
「うん、これからもがんばってね」
殴ってごめんね、お前のせいで、今までありがとう、そんな想いがアリサをめぐったが、言葉にすることはできず、アリサは別れを悟ってわんわんと泣いた。ユーコフもまた、ずっとこの人と居られたらどんなに良いかと思ったが、それを口に出すことはしなかった。
堅い握手を交わしたが、やがてユーコフは面会時間いっぱいになり手を離す。
二人は二度と会う事はないのである。
◇◇◇
カークたちは、孤児院チームの祝賀会に参加していた。ぶどうのジュースがふるまわれた。
あれだけ苦戦した鉄巨人に対して、楽勝だった。などと言っている。しょうがないやつらだ。
子供達だけの勝利の時間に水を差すのは良くないかな。
これから、サムは投票権を人より持っているので、サムが選挙でどの候補者に投票するかに注目が行くだろう。
たくさんの大人にしばらく囲まれることになる。
「ユーコフ、カナリア、そろそろ帰ろう」
「そろそろ特殊潮汐の時間かしら」
「夢のような世界だったね」
住人の誰にも見られないように、俺たちは汐見小屋に帰った。
この世界から持ち帰るものは、なにもなかった。
たくさんの思い出、「大いなる親しみ」をもらった。
おしまい。
お読みいただきありがとうございました。
金門島、ジャージー島、巌流島、石井十次、FF5の鉄巨人と、イーグルサム、タッチ、その他の詰め合わせです。
甲子園、優勝おめでとうございます。
いつかこれをもとに長い小説をと思っていたが、そんなことはやらないかもしれませんね。
象獣人の彼女やクマ獣人ボーイにもエピソードをつけてあげたい欲求がありましたが長すぎた。
休憩時間に何があってサムが覚醒したかは、考えていません。ご想像におまかせします。