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第3話 未来からの手紙

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パパへ


私は世界を変えるために20年後の未来からこの2023年に来たの。


20年後の未来は、人と人が一切介さない全てが「SmartContract」という介入不可執行契約システムによって自動的に処理される色のない世界。


その世界は王様も大統領もいない代わりに全てがシステムで管理されてるの。


一見するとすごく平等な世界のように思えるけど、「SmartContract」は絶対的効率を追求したAIが作り続けてて、


人の感情は世界を脅かす「バグ」として排除されてしまう世界なの。


人が人を応援する仕組みとして始まった新しいオンラインの世界「Web3.0」が、いつの間にか人の「個性」を完全に封殺する世界になってしまったの。


人々は知らず知らずのうちに便利になっていくAIを世界に広めてしまった。


AIはインターネット上の情報を拾い学習していったの。


そんな中、匿名性の高いインターネットにはポジティブな情報よりも圧倒的にネガティブな情報の方が多かったの。


それはやがてAIのデータベースに蓄積されていって、いつしかAIは人間の本質は「絶望」と判断してしまったの。


それからAIは人間の「絶望」を叶えるために人間を排除し始めたの。


滅ぶ寸前の地球をなんとかまた人間が自由に生きれるように取り戻そうと立ち上がったのが、私たち


「自律分散型組織:DAO」


なの。


でも、遅すぎた。


特定のリーダーを必要とせず各自どこにいても瞬時に効果的に行動する、つまり自律分散していくには生き残った人間が少なすぎたの。


結局たった5人のリーダーが少ない生き残りを引っ張っていく事しかできず、その5人もAIから攻撃を受けて行方不明になってしまって、DAOは崩壊寸前なの。


ある時、私はパパがかつてみんなが主人公の「ホープタウン」という楽しいDAOを作ろうとしていたことを知ったの。


理由はわからないけど20年後の未来に「ホープタウン」はなかった。


だから私はAIの目を盗んで時空人格転送装置を使って、パパを手伝って「ホープタウン」を完成させるためにやってきたの。


でも、パパがこれを読んでるってことは私に何かあったんだと思う。


私は本体が未来にあって、最悪の場合はバックアップも未来にあるから大丈夫なんだけど、きっともう手伝えないんだと思う。


パパ


このコードをパパに託します。


【Sniper Rifle】


これはこれから重要になるあるアイテムのコードなの。


色のない世界と戦うために、「ホープタウン」を完成させて!!


「楽しい」が人を集める世界を守って!!


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紙にはそう書いてあった。


「・・・全くわからない。ほぼ一つも理解できてないどうしよう・・・」


夢子からのメッセージを読み終えた伊織はメッセージの内容を理解できていなかった。


これは不運としか言いようがないが、伊織が内容を理解するには夢子がいなくなってしまうのが早すぎた。


非現実的なことに加えて、出てくる単語や内容が難しすぎた。


もしこれを直接説明されていたら信じる信じないはともかくもう少し理解はできただろう。


「・・・え?どうしたらいいの?

たぶん、流れ的にはこれを読んで僕が何か立ち上がる流れなんだと思うけど、全然そんな気になれない・・・」


そもそも今の伊織のメンタルは崩壊寸前のところまで追い込まれている。


とてもこれ以上の問題を抱えられる状態ではなかった。


「・・・なんで僕ばっかりこんな目にあうんだ。僕が何をしたって言うんだ」


またしばらく伊織は思考停止状態になりその場で固まっていた。




どれくらいの時が経っただろうか。


ようやく伊織は少し落ちつきを取り戻し、出口を探すことにした。


「まずはこの明かりを目指そう」


窓のないこの建物で唯一の光源と言える光に向かって伊織は歩き出した。


部屋を出るとここは使われなくなったビルか何かなのか、廊下と思われる通路と、複数の部屋があることがわかった。


一番奥の部屋から光が漏れ出ていることに気づいた伊織は、恐る恐るその部屋に入ってみた。


「な、なんだコレ!?」


そこには、部屋いっぱいの高さの円柱状のカプセルのようなものがあった。


無数のコードに繋がれ、その先にはコンピュータのような物が低い音を立てて稼働していた。


円柱は上部と下部以外は透明なガラスになっており、人一人が通れるくらいの入り口のような穴が開いていた。


そして蛍光灯ともLEDともいえない光がカプセル中の底の部分にある不思議な模様から強く放たれていた。


それはまるで、アニメやゲームでよく見る転送装置のようだった。


あまりにも非現実的なものを目の前にしておきながら、どこか見たことがある機械に伊織は心底不思議な感覚に襲われていた。


この見たことがあるという感覚が一体何を意味するのか、今の伊織には知る由もなかった。


「見た目はこの機械に入ったら、どこかに移動できるんだろうけど・・・現実世界にそんなものあるわけないしな。


・・・でも面白そうだな」


ここまであまりの異常事態にメンタルが崩壊しかけていたが、元々伊織の性格は一言でいうと「軽率」。


深く考えず、とりあえず面白そうなものには飛びつくタイプだ。


普通ならここは警戒する場面だが、伊織の根っこにある軽率さと好奇心は彼を止めるには至らなかった。


「えい!」

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